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嵐 大野智、『怪物くん』『魔王』などで見せる非凡な演技力 ひとクセあるキャラたちが並ぶ主演作品を考察

リアルサウンド

20/8/18(火) 6:00

 「うるさぁぁぁぁい!」ーーあの怪物智くんが帰って来る! 嵐のリーダー大野智が主演し、2010年に放送された連続ドラマ『怪物くん』(日本テレビ系)が8月22日から土日帯で再放送されることが決定した(関東ローカル・各放送終了後にTVer、日テレTADA、Huluでも配信)。情報が公開されるとSNSでは再放送を歓迎するコメントが溢れた。藤子不二雄Aの傑作の実写化となる同ドラマは、大野の振り切った演技で大きな話題となった。今回は再放送を機に、大野の演じたひとクセあるキャラを振り返り、彼の非凡な演技力について考察したい。

不言実行な役作りで挑む

 俳優・大野智の演技力を多くの人が知るきっかけとなったのが連続ドラマ初出演・初主演で挑んだ2008年『魔王』(TBS系)だ。大野は復讐の鬼となった天才弁護士・成瀬領を演じた。撮影前に「全部が難しい。復讐するとか人を憎むっていう気持ちがわからない。そういう経験がないから共感できない」と思い悩んだという大野だったが、いざドラマが始まると、そこに存在していたのは復讐のために生きると決め、怒り、切なさ、哀愁を全身に纏った成瀬領そのものだった。この作品をきっかけに大野のファンになったという、いわゆる“魔王堕ち”と呼ばれる人たちを生み、大野の出演する歴代作品の中でも、一番好きな作品として『魔王』を挙げるファンも多い。

 クセのあるキャラの代表格の1つとして外せないのが、2008年の『歌のおにいさん』(テレビ朝日系)の矢野健太役だろう。子ども番組の歌のお兄さんには似つかわしくない仏頂面で歌を歌っていた主人公が、子どもたちとの交流を通じ、次第に心情が変化していく様を、コミカルなニュアンスを含め、丁寧に演じた姿が印象的であった。同作ではソロで主題歌「曇りのち、快晴」も披露しており、このドラマを思い浮かべるたび、大野がイキイキと歌った同曲を懐かしく思い出す人も多いのではないだろうか。

 また掴みどころのないクールな役柄を演じた月9初主演作『鍵のかかった部屋』(フジテレビ系)の榎本径役も忘れ難い。人物としても謎が多く、密室という言葉に異常な興味を持つセキュリティーオタクの榎本が、次々と密室で起こる難事件を解決していくドラマだ。専門用語が多い長セリフを眉ひとつ動かさず、流々と話す姿からは普段のおっとりとした大野の姿は微塵も感じられない。感情を抑え、時折見せる微妙な表情や視線の泳がせ方など、繊細な演技で作品の世界観をより奥行きのあるものとし、原作ファンからも高い評価を得た。

ストイックな役作りを一切表に出さない美学

 初のラブコメ作品に挑戦した『世界一難しい恋』(日本テレビ系)で演じた鮫島零治も、実に愛すべきキャラクターである。天才的な経理手腕を持つ冷徹なホテルチェーン経営者の島は恋愛に奥手で、波留演じるヒロイン柴山美咲と出会い、彼女のために奮闘する姿に胸キュンした人も多いはず。時に子供っぽく、我儘な性格である鮫島の姿にはどこか『怪物くん』での姿を彷彿とさせる。こと美咲に関することとなると、平常心を失い、一喜一憂し、あたふたする鮫島社長を、大野は実にキュートに、かつ魅力的な存在として演じて見せた。ドラマの公式SNSには鮫島社長の恋を応援するコメントが多数寄せられ、SNS上には撮影が行われたロケ地を訪れる“セカムズ聖地巡り”の写真をアップするファンも多く、最終話の放送後も大いに盛り上がりを見せた。

 “セカムズ”のクランクアップ後、すぐにクランクインしたのが映画『忍びの国』だ。大野が演じたのは伊賀最強の忍者 無門。激しい殺陣やワイヤーアクションを交えた戦国エンターテイメントの超大作は、映画『怪物くん』以来6年ぶりに挑んだ単独主演作品だ。特筆すべきは激しいアクションに加え、大野の役者としての天賦の才能を多くの人が感じることができた、哀しみと怒りの芝居である。子どもの頃に買われ、人を人とも思わぬ“虎狼の族”となった無門が、石原さとみ演じるお国と出会い、人の心を持って初めて味わう切なさや、愛しさ、そして怒りが入り混じった感情が、スクリーンから迸り出る見事な芝居に感動したことは忘れられない。

 大野は役作りについて問われると「苦労しました」「努力しました」と言うより、役によっては「何も考えてない」と答えることがある。これは大野が現場に立つ時、すでに役作りは完成しており、何も考えずとも“役”として存在しているからに過ぎない。俳優としての大野は、演じる役柄を高い考察力で徹底的に分析し、自分のものとするために見えない努力を重ね、期待以上の結果を出す。それが俳優 大野の美学ではないだろうか。ストイックな姿勢で芝居と向き合う姿と、常日頃の物静かな飄々とした大野とのギャップから、その演技力を“得体が知れない”と評されることも多い。

 今回再放送が決定した『怪物くん』も、大野の本気モード全開の演技で、大人から子供まで大いに楽しむことができる名作だ。大きな耳とおなじみの赤青帽子、黄色いセーターに半ズボン。ドラマに嵐の大野の姿はなく、間違いなくおこりんぼうでわがままで恥ずかしがり屋で実は優しい心を併せ持つ「怪物くん」だ。コミカルとシリアスを演じ分け、特殊メイクも違和感なく馴染む圧倒的な演技力、激しい殺陣も厭わぬ運動神経、特殊メイクでさらに愛らしさを増すビジュアル。俳優の中で、これほど完璧に怪物くんを演じられるのは大野ただ一人ではないかと思う。

 愛すべき怪物ランドのプリンスが愉快痛快な物語を仲間と共に繰り広げる『怪物くん』ワールドに、あっという間に引き込まれていく楽しさを今一度体験できることを楽しみに放送を待ちたい。加えて、その他の大野主演作品の再放送にも期待したい。

■北村由起
ライター・エディター。出版社勤務、情報誌編集長を経てフリーに。情報誌、webマガジン、ムック等を中心に執筆。ジャニーズウオッチャー。@yukkisetouchi

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