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志尊淳、“清廉なアウトロー”に 『HiGH&LOW THE WORST』で見出した新機軸

リアルサウンド

19/10/24(木) 6:00

 愛嬌たっぷりの笑顔を振りまくあの志尊淳が、最強の不良少年に扮している。それも仲間思いで義に厚い、ただのワルではない。あの清らかなルックスを活かした、言うなれば、“清廉なアウトロー”である。

【写真】志尊淳演じるサッチーこと佐智雄

 志尊がそんな姿を見せているのは、もちろん公開中の『HiGH&LOW THE WORST』にてのこと。これは、大人気映画『HiGH&LOW』(2016~)シリーズの第6作目にしてスピンオフ作品であり、高橋ヒロシによる人気漫画『クローズ』『WORST』とのコラボレーションを果たした作品だ。志尊自身、これが念願かなっての「不良映画」出演だったようで、「いつか作品に出たいとマネジャーさんにも伝えていて、実際『クローズ』(映画版)のオーディションにも応募しましたが毎回書類でダメ。『そのルックスじゃ無理だよ』って。芝居すら見てもらえない悔しい思いもあって『絶対いつか、オファーが来る俳優になってやる』という自分を鼓舞する気持ちはありました。お話を頂いた時はうれしい気持ちとやっとできる夢のような思い、プラス達成感ありましたね」と語っている。(参考:スポーツ報知|https://hochi.news/articles/20190913-OHT1T50121.html)。

 今や見かけぬ日はないほどの活躍ぶりを見せる志尊は、「オファーが来る俳優」となったわけだが、“幹部以外が全員スキンヘッドの最強の不良集団”・鳳仙学園の番長(アタマ)役が彼で本当に大丈夫なのか、正直なところ不安がなかったわけではない。彼が演じる上田佐智雄は、“ワル”たちを統べる存在であるし、『HiGH&LOW』シリーズ初期から登場し続け、本作でも中核をなす山田裕貴をはじめ、この手の作品、この手の役どころで名を上げてきた同世代の俳優たちも数多く顔を揃えているのだ。

 しかし実際にフタを開けてみると、その不安は杞憂に終わるどころか、余裕で覆されることとなった。志尊といえば、お茶の間の人気者となった『半分、青い。』(2018/NHK総合)をはじめ、可愛いらしい印象が一つの強みとなっている俳優だが、『探偵はBARにいる3』(2017)や、方向性は違えど『トドメの接吻』(2018/日本テレビ系)などで危険なキャラクターを演じているし、今年公開された『フォルトゥナの瞳』でも硬派な役どころを担っている。

 そもそも彼は、キャリア初期にはミュージカルで技を磨き、特撮シリーズ『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014~2015/テレビ朝日系)でアクションを経験している。つまり、身体を上手く使うことができる俳優なのである。そして、いくらいかめしい表情をしてみせたところで、彼の持つ愛らしさはどうにも押し隠しようがないが、これは今作ではポジティブな方向にはたらいているだろう。荒くれ者たちがしのぎを削り合い、群雄割拠の様相を呈する鬼邪高校とは違い、佐智雄を頂点とした統一された組織力を持っているのが鳳仙学園だ。不良集団のアタマでありながら、心根が優しく、人望の厚い存在としての説得力に、絶妙に作用しているように思えるのである。

 “怒声”でありながらよく通る「声」、肉体自慢の俳優たちのなかでも見劣りしないしなやかな「身体」。志尊がスクリーンに映り込めば、自ずと意識が彼の方へと向かってしまう。『HiGH&LOW THE WORST』で演じたアタマ・上田佐智雄というキャラクターは、志尊淳が俳優として見出すこととなった新機軸だと言えるだろう。現在はNODA・MAPの舞台『Q:A Night At The Kabuki』にも出演中だ。鬼才・野田秀樹のもと、演劇界の第一線を走り続ける俳優たちとの共闘経験後の彼の姿が、今からすでに楽しみである。

(折田侑駿)

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