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『ストレンジャー・シングス』『13の理由』の喫煙・自殺シーン規制に賛否 Netflixはどう変わるか

リアルサウンド

19/7/23(火) 8:00

 今、アメリカでは、動画配信サービス大手のNetflixが製作した2大看板番組、『13の理由』、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』がもたらした社会的な問題、その問題への同社の対応に注目が集まっている。

 先日、Netflixが、ある調査を受けてオリジナル作品の喫煙シーンを削減すると発表したことが明らかになった。この突然の決断の背景には、禁煙を奨励する米非営利公共保険機関、Truth Initiative(トゥルース・イニシエイティブ)が調査した報告書が関連していた。同報告書には、15歳から24歳の若い視聴者の多いNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』での煙草に関する問題のシーンが、明確な数字で記されていたのだ。

 もともと同番組は、多くの喫煙者が自由に煙草を吸っていた80年代を舞台にしている。報告書ではシーズン2からは喫煙者の映像だけでなく、煙草の吸い殻のある灰皿や、店の煙草のセクションなど、煙草に関するシーンがより増え、喫煙シーンが第1シーズンよりも44%も増加していると指摘した。その上、Netflixが喫煙描写が最も多いプラットフォームの一つであることも明らかにしている。事実、Netflix作品における喫煙描写は、全ての放送局や配信サイトで描かれた全1209の煙草を扱ったシーン(これは喫煙シーンだけでなく、灰皿にある煙草、店頭に並べられた煙草の箱のシーンなども含む)のうち、約70%以上に相当する866シーンが該当していたのだ。

 そんな調査結果を受け、Netflixは歴史的、あるいは事実上の正確性を要求されるシーンを除き、レーティングがPG13指定や14歳以下の年齢制限がある作品では、喫煙および電子タバコを使用する描写を全て削除することを発表。さらに、大人向けの作品に関しても、クリエイティブ上の判断やキャラクターの表現に不可欠な場合を除き、煙草・電子タバコを吸うシーンを減らしていく意向も発表したのだ。そして、今年の後半期には、喫煙情報は、年齢に応じたレーティングの一部として表示することも明らかしている。

 このNetflixの決断に対して、表現の自由を奪っているという批判や、現在、ニューヨークの煙草の最低価格が13ドル(1430円=1ドル110円換算)に設定されているため、ティーンエイジャーが簡単に何箱も買えるような値段ではないなどのコメントが残され、必ずしもNetflixの決断を支持している意見だけではないようだ。だが今回のNetflixの決断は、未成年の喫煙の明確な抑止力にはなりそうだ。

 続いては、高校生のイジメ、レイプ、自殺、性などを扱い世界中で大きな反響を呼び、2017年では最もツイートの多かったNetflixのドラマ『13の理由』。同番組の第1シーズンでは、女優キャサリン・ラングフォード演じる主人公ハンナ・ベイカーが、かみそりで手首を切り、バスタブで血だらけになる3分間にも及ぶ自殺が描写されていた。だが配信から2年経った今、Netflixiはこのシーンに対して、自殺の様子を映さずに、ハンナの母親が娘の衝撃的な自殺を発見するシーンに再編集を施した。

 2年前に、この第1シーズンの自殺シーンを配信してからは、自殺防止を目指す機関や活動家、あるいは繊細な子供を持つ親から多くの非難を受けただけでなく、脆弱な若者の自殺を助長するなどの懸念する声などもあげられていた。

 もっとも同番組では、冒頭でイジメに遭ったときや、あるいはイジメられている人を見たときに、出演者がどう対応すべきか、その重要性をずっと語ってきていた。事実、「この『13の理由』のおかげで、うつ病や自殺という人々が触れにくい題材でも語り合えるようになり、助けを求めることができた」と、多くの若者から反響を受けたこともNetflixは発表していた。同番組の脚本家の一人、ニック・シェフは自身の自殺との葛藤も明かし、多くの人々からの共感も得ており、Netflixは、番組内ではイジメに関しての対処法を常に明確に示してきた。

 ところが、この第1シーズンの自殺シーンへの批判を受け入れ、編集という形で対処するまでには、2年という月日を要することとなった。今回、その突然の対応について、同番組のクリエイターのブライアン・ヨーキーは「今夏配信予定のシーズン3の準備をするにあたり、このドラマについて議論されている内容についても気を配った」と語り、さらに彼は「全米自殺防止財団の主席医務官クリスティーン・ムーティエや多くの団体から懸念する声を聞き、Netflixと同意のもとに編集した」と報告した。

 さらに赤裸々な自殺シーンが含まれていた第1シーズンの配信後、ティーンの自殺が増えたとの報告もあった。事実、National Institute of Mental Healthによると、同番組が配信された2017年3月31日の翌月、4月には10歳~17歳のティーンエイジャーによる自殺率が一挙に28.9%も増加し、これは過去5年間で最も急激に増加した月になったそうだ。もっともアメリカでは、スマホが普及してからは、常にティーンエイジャーの自殺率が増えているため、同番組だけがティーンエイジャーの自殺に繋がるとは限らない。

 加えて、TVや映画のワンシーンの方が、両親や家族がもたらす日々の生活の愛情よりも影響力が大きく、そのワンシーンによってティーンエイジャーたちを自殺に追い込むことがあるのだろうか? と疑念を抱く世間の声もある。さらに、TV、映画、音楽などの作品の影響を、ティーンエイジャーの自殺の原因と結びつける親や自殺防止機関に問題があるのではないか? と問いただす意見もあがっている。

 だが、今回のNetflixの喫煙シーンのカットと自殺シーンの編集は、表現の自由という言葉を借りて、臆することなく描写してきたアメリカのエンターテインメント業界に、一石を投じる形にはなったようだ。(文=細木信宏)

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