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立川直樹のエンタテインメント探偵

SUGIZO×Song×僧侶×薙刀! 前例のないコラボレーションで今年も“創造”の醍醐味を味わえた『きょうといちえ』

毎月連載

第35回

第5回『きょうといちえ』(TAKAMI HOLDINGS)

毎年いくつものイベントのプロデュースやディレクションをしているが、TAKAMI HOLDINGSの高見重光氏が京都で生まれた企業として、新たな京都の魅力を発信すべく、開催している『きょうといちえ』はとてもやりがいのあるイベントだ。将軍塚・青龍殿の大舞台と本堂を使って立体的に組み立てるプロジェクト。パフォーマンスの出演者は当日までシークレットにし、お客さんにサプライズを味わってもらおうと考え、1回目はTOKUのバンドで倖田來未がジャズを歌う(トニー・ベネットとレディ・ガガを想像してもらえばいい)コラボレーションを思いつき、2回目はDRUM TAOの選抜メンバーによるTAO 5と片岡愛之助、トランペットの近藤等則と3人のオペラ歌手というコラボレーションにトライしたが、5回目を迎えた今年はLUNA SEAとX JAPANのギタリストとして一般には知られるSUGIZOと比叡山延暦寺僧侶10名の声明のコラボレーションが狙いをはるかに超えるマジカルな化学反応を起こしたのである。

ブルガリアン・ヴォイスなどに通じるところもある声明とSUGIZOのアンビエントなギターのサウンドが融け合って生まれた言葉では形容し難い音宇宙。韓国人女性ヴァイオリニストのSongとSUGIZOが一体となって奏でた強力なビートをバックにした大阪体育大学の学生7名による薙刀パフォーマンスも満員の観客の度肝を抜き、熱い拍手が鳴りやまなかったが、前例のないおもしろいものを作り出すというのは“創造”の醍醐味だと思う。

第5回『きょうといちえ』(TAKAMI HOLDINGS)

小林武史プロデュースのオペラ『四次元の賢治 -完結編-』、何必館・京都現代美術館『時代の証言者 マルク・リブー MARC RIBOUD 展』など

Reborn-Art Festival 2019 - final session in Tokyo - オペラ『四次元の賢治 -完結編-』

前例のない規模で石巻を中心に展開している『Reborn-Art Festival』(2019年は8月3日~9月29日まで開催)の、今年のfinal session in TOKYOとして1回だけ東京公演が実現した小林武史プロデュースのオペラ『四次元の賢治 -完結編-』も「お見事!」と拍手を送りたくなる演し物になっていた。小林武史の音楽と中沢新一の脚本によって作られた不思議な魅力を持った作品を歌い、演じたのは満島真之介とSalyu、水曜日のカンパネラのコムアイ、ヤマグチヒロコ。爆笑問題の太田光やMr.Childrenの櫻井和寿などの人気者が声の出演で参加というのも中々のアイデアだが、機会があれば再演して多くの人に観てもらいたいクリエイティブなプロジェクトだった。

Reborn-Art Festival 2019 - final session in Tokyo - オペラ『四次元の賢治 -完結編-』(photo by SAKI YAGI)

その前日の9月29日に大阪の中津にあるライヴ・ハウス、Vi-codeで観た鉄秀の舞描ライブペイント『Iuar』もまた言葉ではうまく説明できないものだった。“舞い+描く=舞描家”として活動を続けている鉄秀がヴァイオリンのイガキアキコとドラムのワタンベという2人のマルチ・プレイヤーの奏でる音をサウンドトラックのようにしてステージで見せてくれた“生まれては変化し壊れ再生する物語”。それは見事な「絵と音の物語」になっていたが、大阪まで出かけた甲斐は十分にあった。Vi-codeの周りのディープな景色も最高に楽しめた。

あと、関西ではそこに行かなければ観ることができない展覧会もいくつか観ることができた。何必館・京都現代美術館で10月27日まで開催されているフランスの写真家マルク・リブーは、写真家集団“マグナム”の創始者、アンリ・カルティエ=ブレッソンやロバート・キャパ等の同志であり、50年代のアフリカ独立運動、60年代のベトナム戦争など激動の時代に立ち会い、西側の写真家として初めて中国の撮影にも成功したフォトジャーナリスト、リブーの撮った毛沢東やホー・チ・ミンなどの写真のインパクトは時代を超えて写真というメディアの根源的なパワーを感じさせてくれるものだったし、京都dddギャラリーで10月23日まで開催されているフランスで最も精力的に活動しているグラフィック・デザイン・スタジオのひとつであるトヴァランスの代表的な作品の数々を観ることができる『システムを遊び場に』も“クリエイティブ”とは何かというものを考えさせてくれる充実した内容の展覧会だった。

美術館「えき」KYOTOで開催されていた『ショーン・タンの世界展 どこでもないどこかへ』も“クリエイティブ”のおもしろさを堪能できたし、東京に戻ってきてから東京都写真美術館で観た3つの展覧会もクリエイティブな刺激にあふれていた。これは次回の水先案内で紹介するつもりだ。

作品紹介

『第5回 きょうといちえ』

日時:2019年9月18日~19日
会場:将軍塚・青龍殿(京都府)

Reborn-Art Festival 2019 - final session in Tokyo - オペラ『四次元の賢治 -完結編-』

日程:2019年9月30日
会場:YAMANO HALL

『-Iuar- 月の雫で描き奏でる物語。』

日時:2019年9月29日
会場:中津Vi-code(大阪府)

『時代の証言者 マルク・リブー MARC RIBOUD展』

会期:2019年9月3日~10月27日
会場:何必館・京都現代美術館

『ドヴァランス-システムを遊び場に』

会期:2019年8月28日~10月23日
会場:京都dddギャラリー

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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