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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『宮本から君へ』

リアルサウンド

19/9/27(金) 20:00

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、テレビドラマ放送後に宮本の熱血営業マンぶりに感化され、営業無双している大和田が『宮本から君へ』をプッシュします。

【動画】『宮本から君へ』の主題歌入り90秒予告

■『宮本から君へ』

 文具メーカー「マルキタ」の社員・宮本浩は、営業スマイルひとつできず、自分が社会で生きていく意味を思い悩み、何に対しても全力でぶつかる、超絶不器用な人間だ。ドラマでは新人社員として先輩・神保(松山ケンイチ)の元で仕事に奮闘する姿が描かれ、その神保の仕事仲間として紹介されたグループの中の一人が中野靖子(蒼井優)だった。2人だけのシーンはそれほどなく、恋を予感させるような描写もなかった宮本と靖子だったが、夜道に自転車2人乗りで颯爽と走り出していくシーンだけがとても印象に残っている。そして公開された映画で描かれているのが、恋人同士になった宮本と靖子が、「愛の試練」を乗り越えていく話だ。

 ドラマでは、本作のために宮本を演じる池松壮亮が坊主にするという、体を張った役作りも見せていたが、映画でも池松が宮本に懸ける思いは尋常じゃなかった。本作では、たびたび前歯がない宮本が登場する。それはとある決闘で負った痛手なのだが、池松自身、実際に歯を抜こうとしたのである。『君が君で君だ』という作品時に、実際に髪の毛を食べるシーンで人毛を食べていたことを本人から聞いていたので、映画をみている最中に、まさか……(試写直後に、宣伝担当者にすぐ聞いた)とは思ったが、やはり全身で俳優として生きている池松の姿に尊敬した。実際には、原作者の新井英樹氏に止められたそうだ。

 そして、ドラマでは宮本が一目惚れして追いかけるヒロイン・甲田美沙子(華村あすか)の存在に隠れ、登場シーンも少なかった靖子を演じた蒼井が、本作で壮絶な恋愛映画のヒロインを全うする。靖子が、宮本の前で引き出す感情は全力で、蒼井が喜怒哀楽が振り切れた表情を見せる。幸せいっぱいの微笑みから、ある事件がきっかけて失われてしまった笑顔と引き換えに、靖子の悲しみと怒りと呆れの感情が混ざり、慟哭する。

 宮本にとって、第一印象は自立していてしっかり者の女性だった靖子。しかし彼女は、遊び人の元恋人・風間裕二(井浦新)の存在が断ち切れず心に棲みついていたり、ある事件で深く深く傷つく、とても弱い存在だった。そして、それと同時に蒼井の言葉の端々や佇まいから感じたのが、ボロボロになった宮本を前にした時、受けた傷を抱えて、乗り越えていこうという靖子の強さだった。

 山ちゃんとの結婚会見でにこっと微笑んでいた花嫁とは思えない、感情をこれほどまでにむき出しにした蒼井優をみて、これからもより女優として生き続ける覚悟のようなものを勝手に感じた。役者たちの中で、タイプは違くても、芝居に対しての向き合い方にどこか同じ空気を感じる池松と蒼井。鑑賞後には本作のエネルギーを全身に受け、どっと疲れを感じるかもしれないが、「宮本浩」という人物を通じて2人が向き合ったものを、ぜひ確かめてみてほしい。

(リアルサウンド編集部)

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