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LEO今井、人間椅子やZAZEN BOYSら楽曲で表現した新境地 ヘヴィーな音像を追求した理由を読む

リアルサウンド

19/7/30(火) 16:00

 前野健太、呂布カルマ、人間椅子、ZAZEN BOYS、eastern youthという濃密すぎるゲストを招き、自主企画ツーマンライブ『大都会ツアー』を8月30日から全国5都市で開催するLEO今井が、ツーマンツアーだけでは飽き足らず、対バン相手の楽曲をカバーした新作EP『6 Japanese Covers』をリリースした。

参考:人間椅子 和嶋慎治×メイプル超合金 安藤なつ、念願の邂逅 音楽・バイク・高円寺を語り合う

 ZAZEN BOYS「ポテトサラダ」、eastern youth「夏の日の午後」などを強靭なメタリックサウンドでカバーした本作は、METAFIVEにおける印象とは一味違う音像を提示すると同時に、デビュー当初は“先鋭的なエレクトロサウンド”というイメージもあったが、約8年間ライブを中心に活動を続けてきた自身のバンドLEO IMAI (LEO今井、岡村夏彦、シゲクニ、白根賢一)では、メタル、グランジ、カントリーなど、彼自身の体のなかにある音楽を融合させたハイブリッドなサウンドを体現。ZAZEN BOYSの向井秀徳が同アルバムについて「LEO今井が病的なほどヘヴィーなカバーをブチかました!」とコメントしているように、昨年発表した5枚目のソロアルバム『VLP』の延長線上にありつつ、さらにヘヴィーさを増した現在のLEO今井の音像を体感できる作品となっている。

 1981年に東京で生まれ、幼少期をロンドンで過ごしたLEO今井は、オックスフォード大学大学院在学中に音楽活動をするために来日し、2006年にアルバム『CITY FOLK』を発表。翌年、シングル『Blue Technique』でメジャーデビューを果たした。エレクトロ、テクノ、オルタナティブロックなどを融合した無国籍な音楽性、文学性の高い歌詞の世界はすぐに音楽ファンの耳にとまり、洋楽・邦楽の枠組みを超えた独創的なアーティストとして評価を獲得。その後、向井秀徳(ZAZEN BOYS)とのユニットKIMONOS、高橋幸宏、TOWA TEI、小山田圭吾、砂原良徳、ゴンドウトモヒコともにMETAFIVEを結成するなど、活動の幅を広げてきたことは周知の通りだ。

 2011年頃から現在のバンドメンバー、岡村夏彦(Gt)、シゲクニ(Ba)、白根賢一(Dr)ととともにライブ活動を行い、ロックとエレクトロのハイブリッドを志向したアルバム『Made From Nothing』(2013年)、自身のバンドでスタジオレコーディングし、90年代のオルタナ、メタル、カントリーなどを想起させるロックサウンドにアプローチした『VLP』(2018年)と作品を重ねるたびにロック濃度を高めてきたLEO今井。もともと彼のルーツはPearl Jam、Pantera、Helmetなど、オルタナ、ヘビーロック、ハードコアが中心。最新作となるEP『6 Japanese Covers』は、彼の根底にある音楽がもっとも強く表出した作品と言えるだろう。

 EP『6 Japanese Covers』制作の直接的なきっかけは、昨年9月、Shibuya O-EASTで人間椅子のライブを観たことだったという。オーセンティックなヘビーメタルサウンドに“和の猟奇”を融合させ、独自の音楽世界を体現し続ける人間椅子のステージを初めて目の当たりにし、感銘を受けたLEOは“ぜひ対バンしてみたい”と思い立ち、時を置かずしてオファー。さらに自主企画ツーマン『大都会』をツアーにすることを考え、以前から対バンを切望していたeastern youth、ZAZEN BOYS、過去の『大都会』に出演しことがある前野健太、呂布カルマも加わり、5都市のツアーが決定。そして、ツアーの打ち合わせをしているなかででてきたのが、“参加してくれるバンドの楽曲をカバーする”というアイデアだったのだという。

 当初はツアーの物販CDとして考えていたそうだが、最終的に対バンする5組の楽曲と未来の対バン相手としてペトロールズの楽曲を加えた6曲を収録するに至った『6 Japanese Covers』。1曲目はもちろん(?)この企画の発端となった人間椅子の「どだればち」のカバーだ。ライブを観たとき、ギターのリフと“あらどした”という合いの手に度肝を抜かれたというLEO。ディストーションギターによるリフとギターソロ、重厚なリズムアレンジ、歪みまくったボーカルがひとつになったLEO IMAIバージョンからは、原曲とヘビーメタルへの愛がダイレクトに伝わってくる。

 2曲目は、LEOが高校生の頃から愛聴していたというeastern youth「夏の日の午後」。名盤『旅路ニ季節ガ燃エ落チル』(1998年)に収録された楽曲だ。原曲は疾走感のあるパンクチューンだが、LEO今井のカバーはBPMをグッと落とし、王道ヘビーメタル直系のアレンジを施している。軸になるのはやはり、切れ味するどいリフ、ずっしりと重いグルーヴ、感情剥き出しの歌。LEO今井自身のルーツと直結しているだけではなく、eastern youthの音楽に内包されているメタルの要素を抽出しているところが興味深い。

 ZAZEN BOYS「ポテトサラダ」のカバーも本作の聴きどころだ。このトラックに対してLEO今井は「後期NYHCを思わせる、グルーヴィーなヘッドバンギングに相応しい再アレンジになりました」とコメントしている。NYHCとは、ニューヨークハードコアのこと。Bad Brainsを中心に80年代後半に発生したNYHCは、スラッシュメタル、ヒップホップ、レゲエと融合しながら発展、90年代後半まで刺激的なムーブメントを作り出していた。変拍子を交えたアレンジ、金属的な響きを持ったサウンドメイクを取り入れた「ポテトサラダ」のカバーには、その当時のシーンの雰囲気が色濃く反映されているのだ。

 80年代ポストパンク的な鋭利なサウンドと陰鬱なラップを共存させた「ヤングたかじん」(呂布カルマ)。ピアノと歌で静かに始まり、暗い情念を燃やしながら後半に向かって爆発していく「ファックミー」(前野健太)、ディープな音の渦に沈み込んでいくようなアレンジが印象的な「雨」(ペトロールズ)、さらにボーナストラックとして「Fandom (Remix For A Film) 」(映画『プリズン13』主題歌)、自身の過去のオリジナル曲「Venom」「Karaoke」を現在のLEO IMAIバンドのサウンドにアップデートしたライブ音源を収録したEP『6 Japanese Covers』。メタル、オルタナを軸に濃密にして鋭利なグルーヴを描き出すサウンド、そして、ハードエッジな音像とともに響く、ダークでアグレッシブな情念をたっぷりと込めたボーカルは、これまでのLEO今井のイメージを刷新するともに、彼の奥深い音楽性をさらに幅広い層のリスナーに伝えることになりそうだ。

 直近2作のソロ作品とライブ活動のなかで培ってきたバンド“LEO IMAI”のアレンジとパフォーマンスにより、彼自身が尊敬するアーティストの楽曲を見事に現在の自分色に染め上げたLEO今井。 本作を引っ提げて行われる自主企画ツーマンツアー『大都会』にもぜひ注目してほしい。彼自身がリスペクトしてやまない対バン相手と繰り広げられる今回のツアーは、LEO今井のキャリアにとっても大きな意味を持つことになるだろう。(森朋之)

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