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猿之助の五役早替り『蜘蛛の絲宿直噺』ほか見どころ満載 歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』開幕

ぴあ

20/11/1(日) 7:00

『吉例顔見世大歌舞伎』

例年11月、歌舞伎座では古式に従って正面入り口の屋根の上に、鳳凰の座紋を象った幕をめぐらした櫓が掲げられる。梵天を二本立て、櫓の上に鑓(やり)を五本並べるのが定法だ。江戸時代は官許を得た興行権を持つ座元という印だったという。

その櫓を上げた歌舞伎座で、今年も顔見世興行の幕が開く。また今月から歌舞伎座の桟敷席が一部復活する。客席が従来の雰囲気をまた一歩取り戻す1か月となりそうだ。

今月も完全入れ替え制の四部制。第一部は『蜘蛛の絲宿直噺』だ。源頼光の土蜘蛛退治を題材に、早替りの趣向を取り入れた華麗な変化舞踊だ。

病に伏せる源頼光を、家臣の坂田金時と碓井貞光、その女房たちが宿直をする。どこからか現れたのは女童熨斗美。その後も小姓、番新、太鼓持が次々現れて頼光の寝所に忍び込もうとする。そこへ傾城薄雲太夫が訪れて......。

市川猿之助が五役を早替りでつとめ、千筋の糸を繰り出す迫力あるクライマックスまで息をもつかせぬ面白さだ。中村隼人の頼光、中村福之助の貞光、市川笑三郎が金時女房八重菊、市川笑也が貞光女房桐の谷、市川猿弥が坂田金時をつとめる。

第二部は松羽目物の名作でおかしみもたっぷりの『身替座禅』。
恐妻家で浮気性の山蔭右京は愛人の花子と何とか会いたいと思っているが、奥方玉の井の監視が怖くて会いに行くことができないでいる。右京は一晩座禅をするため邸内の持仏堂にこもると言って玉の井の許しを得る。家来の太郎冠者を身替わりに座禅衾をかぶらせて、自分は花子との逢瀬に出かけるのだが、玉の井にそのことがばれてしまい......。

常磐津と長唄の掛け合いの舞踊劇。衾をかぶっているのが太郎冠者と入れ替わった玉の井とは露知らず、逢瀬の様子を踊り分けて見せるのが見どころ。
右京に尾上菊五郎、太郎冠者に河原崎権十郎、尾上右近の侍女千枝、中村米吉の侍女小枝、市川左團次の玉の井。

第三部は義太夫狂言の傑作『一條大蔵譚』。
かつて源義朝の妻だった常盤御前。義朝亡き後、敵の平清盛の側室となり、その後は阿呆と評判の公家一條大蔵卿へ下げ渡される。源氏方の吉岡鬼次郎夫婦は常磐の本意を探ろうとするが、常磐は楊弓に興じているだけ。鬼次郎が問いただそうとすると常磐は本心を明かす。そこへ阿呆と言われた大蔵卿が威厳を持って現れる。

作り阿呆の大蔵卿が颯爽と本性を現す演じ分けは見所十分。衣裳のぶっ返りも歌舞伎らしい演出だ。
松本白鸚の大蔵長成、中村芝翫の吉岡鬼次郎、中村壱太郎の女房お京、松本錦吾の八剣勘解由、市川高麗蔵の女房鳴瀬、中村魁春の常盤御前。

第四部は歌舞伎の義太夫狂言、三大名作の一つ『義経千本桜』四段目の切にあたる通称「四の切」。

吉野の川連法眼館にかくまわれている義経の下へ家臣の佐藤忠信がやってくる。そこへもう一人の忠信が到着したと告げられ、不審に思った義経は忠信の詮議を命じる。伏見稲荷で別れた静御前の共をしていた忠信は、実は狐の子。義経から静へと下された初音の鼓の皮に用いられたのは、狐忠信の両親のものだった。忠信の姿に変えて静を護りながら付き添ってきた忠信。義経は心打たれて......。

本物の忠信と狐忠信の演じ分けや狐詞という独特の台詞回し、早替りや神出鬼没な出もあり見所がたくさん。

中村獅童の佐藤忠信/佐藤忠信実は源九郎狐、市川染五郎の源義経、市川團子の駿河次郎、澤村國矢の亀井六郎、中村莟玉が静御前。本日より11月26日(木)まで

文:五十川晶子

歌舞伎座『吉例顔見世大歌舞伎』
2020年11月1日(日)~2020年11月26日(木)
会場:歌舞伎座(東京)

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