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関連グッズが続々登場! 特撮・アメコミファンから愛される“東映版スパイダーマン”を解説

リアルサウンド

20/4/5(日) 12:00

 東映版スパイダーマンの関連グッズが、株式会社BANDAI SPIRITSと株式会社バンダイから5月より発売されます。フィギュア、Tシャツにアパレルグッズ、カプセルトイ……と豊富なラインナップが。グッズの情報が発表された3月23日には、インターネット・ミームとして「スパイダーマッ」が話題にもなった東映版スパイダーマン。果たして彼は何者なのでしょうか?

参考:【写真】レオパルドンもフィギュアに!

 “東映版スパイダーマン”とは1978年から1979年にかけて、日本の東映がマーベルからスパイダーマンの権利を借りて作った特撮ドラマシリーズ『スパイダーマン』のことです。原作コミックの設定を大きく変え、スパイダー星人から力を授かった若者・山城拓也が、モンスター教授率いる悪のエイリアン軍団と戦うというストーリー。関東での放送局は東京12チャンネル(現・テレビ東京)でした。

 日本のアメコミファンの間でも有名な作品ですが、特撮ファンにとっても重要なドラマシリーズです。というのも、前半は仮面ライダーの流れを組むスパイダーマンVS怪人・戦闘員の戦いなのですが、クライマックスでは敵の怪人が巨大化。そうなったらスパイダーマンは、スパイダーマシンGP-7という車と空中戦艦・マーベラーを呼び寄せます。さらにマーベラーは巨大ロボット・レオパルドンに変形! スパイダーマシンGP-7を使ってレオパルドンに乗り込み、これを操縦、巨大な敵を粉砕するのです! つまり後のスーパー戦隊もののパターンである“等身大ヒーローファイト+変形巨大ロボットバトル”というフォーマットを初めて特撮ドラマに持ち込んだ画期的な作品でした。

 いったい、この作品はどうして生まれたのか? 実はマーベルは1977年に日本(東宝)のゴジラをアメコミ化。その中にはNYに来たゴジラをアベンジャーズが迎え撃つというすごいエピソードもあります。また1970年代後半から日本の超合金やジャンボマシンダーなどのロボットアニメのおもちゃが、SHOGUN WARRIORSというブランドで売られていました。したがって日本のヒーローモノコンテンツについてマーベルも注目していたのでしょう。こうしてマーベルと東映が提携し、お互いのキャラを自由に使っていいという約束を取り交わしたのです。

 当時の東映は『仮面ライダーストロンガー』をもって、いったん『仮面ライダー』シリーズが終了。だから新たな特撮ヒーローの可能性を模索していた時期と考えられます。そこでアメコミキャラ×東映ヒーローモノを作るというチャレンジをしたのではないでしょうか? 結果、東映はスパイダーマンを選び、特撮ヒーロードラマ『スパイダーマン』が生まれるわけです。なおこの時期人気を博していた異色の東映ヒーローモノに『快傑ズバット』という作品がありますが、東映版『スパイダーマン』は、このズバットと同じ“東京12チャンネルの水曜日19時半枠”で放送されています。

 東映はスパイダーマン以外にもマーベルのキャラを使ったコンテンツを作っており、スーパー戦隊モノ『電子戦隊デンジマン』の敵・へドリアン女王は、ヘラという悪女をベースにしています。このヘラは映画『マイティ・ソー:バトルロイヤル』でケイト・ブランシェットが演じていたキャラです。またマーベルには『ドラキュラの墓』(後にこのコミック・シリーズから生まれたヒーローが、あのブレイド)というホラーがあるのですが、それをTV用のアニメ映画『闇の帝王 吸血鬼ドラキュラ』として映像化しています。

 一方マーベルは、東映アニメの『コンバトラーV』『惑星ロボ:ダンガードA』のロボットを借りて、これに『勇者ライディーン』(東北新社)を加えてアメコミ版『SHOGUN WARRIORS』を出版します。

 東映版『スパイダーマン』は視聴率も良く、おもちゃも売れたらしいので日本人で知っている人は多い。(逆に言うと2002年にサム・ライミの『スパイダーマン』が公開されるまでスパイダーマンを日本のヒーローと思っていた人もいたらしい)けれどアメリカのファンの間で、この東映版スパイダーマンはほとんど知られていなかったようです。

 放送当時はネットとかないし、またこの作品がアメリカのメジャーなTV局で放送されることはなかった。これは日本人のアーティストでマーベルのコミックにも参加している方が言っていたのですが、マーベル本社でも、東映版スパイダーマンを知っている人は少なかったらしく、その映像や写真をネットで検索して見せたら、皆驚いたそうです。

 しかし、2009年に本国のマーベルの公式サイトでこの東映版『スパイダーマン』が無料で配信され知名度は高まりました。この配信版にはちゃんと英語字幕がついており、例えば、主題歌の「♪ひとすじに ひとすじに 無敵の男 スパイダーマン」(作詞:八手三郎)の部分は「♪WITH ONLY ONE GOAL, WITH ONLY ONE GOAL, THE INVINCIBLE MAN SPIDERMAN!」と訳されていました。スパイダーマンは本来、「SPIDER-MAN」と綴りますが、この歌では日本語の歌い方にあわせて「SPIDERMAN」となっています。

 映画『レディ・プレイヤー1』の原作で、2011年に全米で出版されたSF小説『ゲームウォーズ』の中にもレオパルドンが登場(映画版には出てこない)。またマーベルが発表した、マルチバース(多元宇宙)に点在するスパイダーマンたちが集まる『スパイダーバース』というコミック・シリーズの中では、東映版スパイダーマンとレオパルドンが<アース-51778>という世界のスパイダーマンとして活躍。本コミックを元にした、アカデミー賞受賞のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』ではチラっとレオパルドンらしき絵が映り、2022年4月8日公開の続編映画では、メインキャラの一つとしてフィーチャーされる予定。昨年のサンディエゴ・コミコン2019では会場限定でスパイダーマシンGP-7のミニカーが売られたりと、東映版スパイダーマンはアメリカのファンの間でも知られ、愛される存在になりつつあります。

 東映版は“スパイダーマンが巨大ロボに乗り巨大怪獣と戦う”という大胆なアレンジゆえネタにされたりもするのですが、非常にエンターテインメント性の高いヒーロードラマになっています。特にスパイダーマンのアクションは「COOL!」の一言。ほぼ同時期にアメリカでも実写ドラマが作られていましたが(日本ではパイロット版が劇場公開)、スパイダーマンのポーズやスタントは東映版の勝ちだと思います。

 スパイダーマンという大事なヒーローを預かったわけですから、日本の子どもたちにもちゃんとかっこいいと思われる存在、愛される存在にしたいという当時の東映のスタッフの方の努力と工夫に敬意を表します。スパイダーマンの生みの親の一人でありスタン・リー氏もインタビュー映像でアクションが素晴らしい!と絶賛していました。またスタン・リー氏自身は日本の巨大ロボットアニメも好きだったようで(彼は前述のマーベル版ゴジラに、レッド・ローニンという巨大ロボを登場させています)、レオパルドンについても評価していたようです。

 東映×マーベルの座組で、この作品がうまくいった理由は、やはりスパイダーマンという素材を選んだからでしょう。例えばキャプテン・アメリカやマイティ・ソー、ハルクではうまく日本版を作れなかったのではないかと。考えてみれば、このドラマに先立つ8年ほど前に、池上遼一版スパイダーマンが日本のコミックス誌に連載されています。そう、スパイダーマンとは非常に日本版が作りやすい=日本人に受け入れられやすいのです。

 それはなぜか? ここで僕が思い出すのが、故・手塚治虫先生とスタン・リーの対談記事です。手塚先生は、アメコミヒーローの中でスパイダーマンが日本人に一番ウケると断言しているのです。その理由は、華奢だからです。スパイダーマンは決して筋肉隆々のアメリカのたくましいマッチョではない。あの線の細さ・小柄さが日本人の共感を呼ぶだろうと。これはかなり的を得てますよね。くわえて、ケヴィン・スミスという有名なアメコミクリエーターがこういうことを言っています。スパイダーマンはマスクで顔を全部隠している。だからどんな人種の子でもあのマスクの下に自分の顔があると共感することができるのだと。日本人が自分を投影しやすい体型とフルマスク。だからスパイダーマンは日本のヒーローにもなりえたのでしょうか?

 繰り返しになりますが、2022年4月8日公開予定のアニメ映画『スパイダーマン:スパイダーバース』続編では、東映スパイダーマンとレオパルドンが登場。劇場での再会も楽しみですが、最近の実写版でスパイダーマンを演じているトム・ホランドは実写版『スパイダーマン:スパイダーバース』を作りたいとも言っている。実写版東映スパイダーマンとレオパルドンもぜひ実現してほしいですね。 (文=杉山すぴ豊)

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