Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

くじら「ねむるまち」Spotifyバイラルチャート急上昇 新世代ボカロPの詞曲に共通する“諦念”のムード

リアルサウンド

20/1/21(火) 7:00

参考:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest

 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を基に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(1月16日公開:1月9日~1月15日集計分)のTOP10は以下の通り。

1位:YOASOBI「夜に駆ける」
2位:森七菜「カエルノウタ」
3位:落合渉「君が隣にいることいつか当たり前になってさ」
4位:King Gnu「Teenager Forever」
5位:LiSA「紅蓮華」
6位:After The Rain「1・2・3」
7位:藤井 風「もうええわ」
8位:703号室「偽物勇者」
9位:くじら「ねむるまち」
10位:Vaundy「東京フラッシュ」

 前週に引き続きYOASOBI「夜に駆ける」が1位をキープするなか、映画『ラストレター』効果もあり森七菜「カエルノウタ」が2位に急浮上。落合渉「君が隣にいることいつか当たり前になってさ」やTikTokの影響も考えられる703号室「偽物勇者」も気になるところだが、今回は9位のくじら「ねむるまち」にフォーカスを当てたい。

 くじらは、2019年4月1日に「アルカホリック・ランデヴー」を動画サイトに初めて投稿し、活動をスタート。自身は元々「『みっくみくにしてやんよ』とか『メルト』の時代から最先端の『絶え間なく藍色』『トラフィック・ジャム』までずっとボカロを聴き続けている根っからのボカロオタク」だったそう(参考:pixivFANBOX)。

 これまで投稿してきた楽曲は「アルカホリック・ランデヴー」「狂えない僕らは」「Dance in tha milk」「幽霊少女」「ねむるまち」「金木犀」の6曲。ストレートなボーカロイドロックの「幽霊少女」以外のいずれにも共通しているのは、ジャジーなコード進行とキャッチーなシンセリフが織りなすムーディーな“夜”らしさ。歌はボーカロイド(flower)にただ歌わせるだけでなく、ピッチアップさせたり、ボーカルシンセ的に使ってみたり、「金木犀」ではトークボックス的な役割を果たしたりと、楽曲にメロディ楽器として大きく作用しているし、その良い意味での不自然さが、未来であって過去のような、虚実ないまぜになる不思議な夜の景色を彷彿とさせる。

アルカホリック・ランデヴー / Flower
狂えない僕らは / Flower
Dance in the milk / Flower
幽霊少女 / Flower
金木犀 feat.Ado (Official Video)

 そして今回チャートインした「ねむるまち」は、上記に挙げた要素を全部盛りしつつ、flowerの歌唱バージョンとは別に、yamaをゲストボーカルに迎えたバージョンも配信中。YouTubeには後者のバージョンでOfficial Videoがアップされており、300万回再生を突破しており、そちらには恐らくLo-fi Hip Hop文脈で関連動画からたどり着いたであろう、海外のリスナーから多くのコメントが寄せられている。

ねむるまち feat.yama (Official Video)

 今回のチャートインは、YouTubeの回転によるリスナー・フォロワーの上昇と、年末年始から立て続けに投稿されている「歌ってみた動画」のような二次創作が大きいと推察される。先述したYouTubeのレコメンドにせよ、二次創作にせよ、クリエイターが良い楽曲をポストすれば、それに追随してSNSとそのユーザーが楽曲を押し上げていく、というのは、ある意味で健全な動きといえるだろう。

 最後に、先週のYOASOBIや、その記事で言及したヨルシカやずっと真夜中でいいのに。、花譜などを支える、2010年代の動画投稿サイトシーンを出自とし、2020年代前半で本格的にオーバーグラウンドしてくるであろう世代のクリエイターたちーーn-buna、カンザキイオリ、Ayase、ぬゆり、そして今回ピックアップしたくじらなどには、共通するものを感じる。

 アップにもミドルにもバラードにも存在する、ある種の現実逃避的なチルさとシンプルな凶暴性、言い換えれば諦念的な感覚とそれを表現する手段としての言葉とサウンド。それはいち動画投稿サイトでの流行というよりは、明確に時代・世代のムードを映した鏡のようだ。

くじら

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む