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二階堂ふみ演じる音は本当に“強欲”なのか 『エール』が突きつける女性の苦悩

リアルサウンド

20/6/4(木) 12:00

 鉄男(中村蒼)の上京、環(柴咲コウ)が歌った「船頭可愛いや」の大ヒットと日々トピックが移り変わっていく『エール』(NHK総合)第10週「響きあう夢」。第49話では、音(二階堂ふみ)の妊娠に裕一(窪田正孝)が大喜びする。

参考:柴咲コウが『エール』で放つ圧倒的な“カリスマ性” 『おんな城主 直虎』の経験が生かされた形に

 驚きと喜びの大声を上げ、父親になることを自覚する裕一。話題は自然と音が通学する音楽学校へ。妊婦が通学し、ましてや舞台に出ることは通常では考えられない。しかし、音の思いは、やっと主演を掴み取った記念講演「椿姫」だけには出演し、その経験を経て歌手の道を開くという、母親になることと、歌手の夢の両立だった。

 演出を担当する黒崎(千葉哲也)を含め、「椿姫」キャストの印象は複雑。もちろん、新しい命の誕生はめでたいことだが、歌唱技術も舞台経験も音より上回る千鶴子(小南満佑子)という存在がいながらのこの結果だからだ。選考会での人の心を揺さぶる気迫が主演に選ばれた音の魅力ではあるが、カフェーでの臨時雇い(男女の機微を実戦で学ぼうとしたとは言え)をはじめに、周りからの不信感は少なからず募っていたことだろう。

 そんな学校のみんなの代弁者となったのが千鶴子。彼女は子供の頃から音楽のために全てを犠牲にしてきた。「音楽も家庭も友達も恋愛も、何でも欲しがって手を伸ばす」そう言って千鶴子は「あなたみたいな強欲な人に私は負けるわけにはいかない」と主演争いの際に告げていたが、再び強欲であると、そしてキャスト陣の戸惑いを音に伝える。

 いくら鈍感な音でも周りの反応の変化は痛いほど理解していた。生まれ来る赤ちゃんのために早速でんでん太鼓などおもちゃを嬉しそうに手作りする裕一、知らせを聞きつけ顔を見にきた吟(松井玲奈)にまで「いちいちうるさい!」と怒鳴り散らしてしまうほど、音は心が不安定になっていた。そんな揺れ動く音に決定的な一言を放つのが環だ。

 音が歌手になるきっかけとなった憧れの人であり、最近では「船頭可愛いや」をきっかけに段々と打ち解けてきた2人。

「プロってね。たとえ、子供が死にそうになっていても、舞台に立つ人間のことを言うの。あなた、当然その覚悟はあるのよね?」

 環の言葉にやっと強欲の真意を理解したのか、音は一点を見つめ、ぐうの音も出ない。主演という立場にいながら、尊敬する環にわざわざ言わせてしまった情けなさもあるだろう。音はつわりが酷くなり、稽古を休むことになる。体調を心配する裕一。「1日“ぐらい”」「お母さんなんだから」。そんな一言に音は苛立ち、「裕一さん代わりに産んでよ」と強烈な一言を口走ってしまう。

 『エール』ではこれまで音の生き方の背景に女性蔑視を巡る問題が描かれてきたが、現在浮き彫りになっているのは彼女の少し傲慢過ぎるその性格。ほとんど練習に参加できなかった2週間で、講演の状況もさらに変わっていることだろう。夢の途中にいる音が下す決断、心境の変化とは。(渡辺彰浩)

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