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2020年現在のシーンにおける“V系っぽい歌詞”を構成するものは? 己龍、BugLugからヒプマイ 四十物十四までを分析

リアルサウンド

20/3/13(金) 12:00

 楽曲においてメロディだけでなく歌詞も重要な要素だ。それだけでは意味を持たない音に言葉をのせることで、この曲が失恋ソングなのか、はたまた社会問題を提議した曲なのかを、リスナーに認識させることができる。また、歌詞は何をテーマにしても良いからこそ、アーティストの個性が出る。さまざまなアーティストがいる中でも、ヴィジュアル系バンドの歌詞は独特だと言われる。“V系っぽい歌詞”といえば「闇に溺れる」「漆黒に染まる」「薔薇が舞う」といったいわゆる中二病のテンプレ的なイメージを持たれており、時にインターネット上では“V系の歌詞あるある“として話題になる。これらのワードが“V系っぽい”と判断されるのは、実際にX JAPANやMALICE MIZER、LUNA SEAなど著名なバンドの歌詞に使われていたワードであることはもちろん、非日常的かつ陰のあるイメージがバンドの世界観に似ているからだろう。

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 しかし、これらのワードをチョイスするのは、主に90年代に活躍したバンドのイメージが強い。では、2020年現在のヴィジュアル系シーンの中核にいるバンドの歌詞はどうなのか。今回は、2020年4月に開催予定の大型フェス『V FES.JAPAN』に出演するバンドの中から、DIAURA、己龍、BugLugをシーンの代表格として考えてみたい。

 古くからヴィジュアル系がもつダークなイメージを継承しながら現代のシーンを牽引するDIAURAの歌詞は、シーンの外から見ても完全に“V系っぽい”と言えるだろう。昨年秋にリリースされた「FINALE」を例にあげると、〈茨の道に傷付く明日が来ようとも〉〈死期を告げる鐘を鳴らす 血まみれのこの腕で〉といったように、ダークな世界観を彷彿とさせるようなワードが散りばめられている。

 しかし、“和製ホラー”をコンセプトに活動する己龍の「花鳥風月」は、優雅なタイトルとは裏腹に〈頭蓋の奥が少し焼け爛れた様で〉という惨たらしい言葉から始まり、〈捩じ切れる程首を捻る〉〈首を括る人と其れを見て嗤う人〉と、艶やかでありながらおぞましいバンドの世界観をたっぷりと魅せた歌詞になっている。難解な言葉遣いは、V系っぽさというよりもバンドのコンセプトを追求した結果だろう。

 さらに、カラフルでやんちゃなイメージのBugLugの「しこたま」は、〈脳内日記はバグってる!〉〈世渡りの術は超ハード〉と、ポエムっぽさゼロの飾らない心の叫びが共感を呼ぶ歌詞だ。陰鬱なイメージとはかけ離れた、気持ち良いくらいの明るさが感じられる。このことから、現代のヴィジュアル系シーンにおいても、引き続き歌詞はバンドの世界観を表現する重要なツールであることがわかる。しかし、音楽性、外見、活動スタンスなど、バンドの世界観を含むすべての要素でカオス化が進んでいる現代のヴィジュアル系シーンでは、“V系っぽい”という画一的な従来のパブリックイメージとは若干異なってきていると言っていいだろう。

 また、今女性ファンを中心に大きなムーブメントを起こしている音楽原作キャラクターラッププロジェクト・ヒプノシスマイクの四十物十四(あいものじゅうし)の楽曲にも触れておきたい。「月光陰-Moonlight Shadow-」と題された彼のソロ曲は、まさに世界観を作り込んだヴィジュアル系バンド・Leetspeak monstersが制作を担当した。ラップ曲のため歌詞は一節一節が短いものの、〈夜な夜な見る黒い夢の中〉〈雲の奥に幻想の島見出す〉〈墓場背に向け銀色の薔薇片手に〉といったように、ダークな世界観を連想させるワードが散りばめられており、普段ヴィジュアル系の音楽を聴かない層のリスナーにも“V系っぽい”と評価されている。

 個人的にこの楽曲の歌詞には、ワードチョイス以外にもう一つ新たなV系らしさを感じさせる魅力があると思う。それは、歌い手のバックボーンが反映されている部分だ。四十物十四は、学生時代に過酷ないじめにあっていた過去を持つヴィジュアル系ミュージシャンだ。その背景を知った上で聴くと、リスナーは歌詞を通して彼の生きざまに触れることができる。〈狂った人生の歯車〉から生まれた〈底なし沼のような地獄〉を乗り越え、〈宵待月の名を背負い 孤独でも歩くと決め今に至るのさ〉と前を向く彼が、〈スポットライト浴び輝きを増す マイク掴めば誰だって誰かのヒーロー〉と、音楽で誰かを救える希望を見出す……といった具合に。いじめや虐待といったハードな過去を、パーソナルインタビューなどで告白しているヴィジュアル系アーティストは少なくないし、それをテーマにした歌詞も多い。実体験を通して生まれた言葉には説得力があり、同じように生きづらさを感じているリスナーに刺さる魅力がある。ワードチョイスだけでなく、アーティストの生きざままで赤裸々に反映された歌詞であることも、本作品がもつ“V系らしい魅力”の一つであると言いたい。

 バンドといえばサウンドに注目が集まりがちであるが、歌詞はバンドの世界観、思想、生きざまなどをリスナーへ具体的な言葉で伝えることができる、どこまでも自由なツールである。(南明歩)

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