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オンライン飲み会、ゲーム課金中毒、プロゲーマー……『こち亀』の未来予見エピソード4選

リアルサウンド

20/12/19(土) 10:00

 秋本治原作の大人気漫画、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』。1976年から2016年まで『週刊少年ジャンプ』に連載され、最も発行部数が多い単一漫画シリーズとしてギネスブックにも載る名作だ。

 長期間連載された「こち亀」のなかには、作品中に登場した当時奇想天外とされたアイデアが、時を越えて現実のものになることが多々あった。代表的なものを検証してみたい。

オンライン飲み会

 新型コロナウイルスの感染拡大とインターネットの普及によって「オンライン」でのコミュニケーションが主流になりつつある昨今だが、このアイデアは1988年に「こち亀」ですでに予見されていた。

 そのアイデアが披露されたのは、両津勘吉がアルバイトに訪れた会社。全国に散らばった人にクラス会を提供するため、参加者分のカメラ付きテレビを一箇所に集め、配置する。参加者にはカメラ付きのテレビが配送されており、一斉に映し出す。

 カメラ付きのテレビを双方に設置することで、遠方の相手と会話することが可能になる。ただし、一画面で全参加者分の顔を確認することは出来なかったため、両津らアルバイトがテレビの向きを動かすことで対応した。(59巻)

 現代と若干技術の違いはあるものの、発想は現在のSkypeやZOOMといった会話システム、そしてオンライン飲み会や会議とほぼ一緒。インターネットはもちろん、携帯電話もなかった80年代にこのアイデアが漫画で発信されていたとは驚きだ。

ゲーム課金システム

 現在スマートフォンのゲームなどでは、課金することで有利になるアイテムを購入し、優位に進めていくことが主流となっている。

 この形態も「こち亀」で披露されていた。本田が、購入したパソコン恋愛シミュレーションゲームを始めると、登場する女性が「電話をかけて」と懇願し、指定した番号にかけさせる。本田は電話をかけ、「声がする」と感動した。

 さらに女性がショッピングを始めると「洋服欲しいわ」「あなたのキャッシュカードの名前と会員ナンバーを教えて」と、課金要求。本田はなんの疑いもなく電話で教えてしまう。すると女性キャラのおねだりはエスカレートし、水着やコートを要求する。様子を見ていた両津は「買って買って攻撃だ。本田、現金で金とられてるぞ」と絶句。中川も「ヤバいパターンですね」と冷や汗をかく。

 極めつけに女性は150万円の車を要求。これにも「買ってあげる~」と叫ぶ本田に、両津は「誰か本田を止めろ」と焦る。そして中川が「もう買い物を止めてください」と止めた。(98巻)

 現在のスマートフォンゲームではキャッシュカードを通じて課金する形態は珍しくない。ゲームの高額課金も社会問題化したことがある。「こち亀」は家庭用ゲーム機が主流だった1996年に高額課金の危険性を指摘していたのだ。

プロゲーマー

 今や「eスポーツ」に代表されるような、プロゲーマーの存在は広く認知されているが、ファミリーコンピューター発売年度の1983年、「こち亀」はすでにゲーマーの誕生を予言していた。

 当時のゲームセンターに置かれていたゲーム機を手に入れた両津は、中川に「わしはTVゲームのプロになるんだ」と宣言。「プロになってどうするんですか」と、聞かれると、「今やコンピューターエレクトロニクスの時代なんだぞ。時代に乗り遅れるぞ。21世紀は全てがコンピューターだ。だから先を読んでTVゲームのプロになる」と説明する。

 困惑する中川は「そこがよくわからない」と話す。すると両津は「将棋とか囲碁とかボーリングなど、元は娯楽で今じゃプロもいるだろう!」と一喝した。(29巻)

 両津の「21世紀は全てがコンピューター」という予言はほぼ的中。そしてプロゲーマーが実際に生まれていることもご存知の通りだ。両津の未来を読む力は、まさに慧眼といえるだろう。

マイナンバー

 市区町村から住民に指定される12桁の番号、マイナンバー。社会保険や税などの情報を効率的に管理するため、2016年から利用が開始されたものである。

 賛否両論のマイナンバーだが、両津はこの原型ともいえる構想を1998年に語っていたのだ。両津は「住民票なんて紙も必要ない」と指摘し、「データで送りゃいいんです。免許証のナンバーをIDにしてパスワードを決めて」と話す。現時点でマイナンバーは免許証のナンバーとはリンクしていないが、政府はマイナンバーと免許証一体化を推進しているし、オンラインで住民情報を管理するアイデアは、マイナンバーと同じといえる。

 続けて両津は「オンライン処理にしないわけは人員カットが怖いからですよ」「思い切った改革が必要です」「だいたい役人の数が多すぎますよ、何十万人も」と力説する。しかし「まっ先にお前が必要ない。クビになるな」「そうよ報告書も書かないんだから」「地方公務員も多いですからね」と大原部長、麗子、中川に指摘されてしまう。

 痛いところを付かれて焦る両津は「やっぱしオンラインは止めましょう。窓口を10箇所くらいにして、書類を20枚くらい書かして、ハンコを5種類以上押させたほうが良いですね」と、オンライン管理案を取り下げる。この「オチ」も、現代が抱える役所の問題点を見事に指摘している。

豊かな発想が作品の魅力

 発表当時「突拍子もない」と感じさせた両津の発想が、実は的確であり現実になっている。取り上げたもの以外にも、そのようなケースはかなり多い。

 そんな豊かな発想は「こち亀」の魅力の1つ。時間に余裕ができる年末年始に改めて読み返してみるのも面白いだろう。

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