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猫との暮らしから学ぶ、自分らしい生き方 角田光代翻訳『らしく生きよと猫は言う』レビュー

リアルサウンド

20/6/1(月) 8:00

 去年愛猫を亡くしたのと、このご時世で何となくナイーブになっていたようで、言葉のひとつひとつが響いて、仕方なかったです。気が付かないうちに身体に力が入り、無理して口角を上げていたので、ほろほろとゆるむ感覚がありました。

 きっと誰かにこんな言葉をかけてもらいたい、そんなタイミングだったのかもしれません。おかげさまで涙活ができまして、読了後すっきりした気分になりました。

参考:島で暮らす猫たちの仲睦まじい姿にきゅん! 後藤由紀子の『キス猫 −すりすり、ぎゅっ、と。−』レビュー

■今こそ響く言葉の数々

 今、そんな人が実は多いのではないでしょうか。私のように少しばかり気を張って力んでいる人がいましたら、是非この本をお勧めします。こちらで絵を描かれているジェイミーさんも近所の猫を愛でていて、その近所のブルックシート言う名の猫を見習っていろいろ学んでいるそうです。何にもしないでいることに満足でき、じゅうぶん満ち足りて優雅にずっと座っていられるよう願っているそう。

 そして翻訳担当された角田光代さんの「はじめに」に続きます。角田さんは猫から「真剣さ」を学んでいるそう。はたして私は愛猫たまから何を学んだのかなーとしばし考えました。

 猫の個性、百匹いれば百の個性があります。角田家の猫は「さわやかでなくじっとりしているそう」たまりません。『Part.1強い私になろう』の“強い”の解釈に深くうなづきました。

“大きな声で自己を主張したり意志を貫いたり、他人を受け入れたり、他人に譲ったりできる余裕のある人だと思っていた。それもまちがいではない。けれど自分のことを、過小も過大もなく真に知って、自分自身を引き受けるということも、ひとつの強さなのだなと猫を見ていて思うようになった。自分を否定したり変えようとしたりするよりも今の自分を肯定できる、そんな私のほうが強いはずだと思うようになった。”

 そんな風に考えたことなかったので自分に向き合ってみようと思いました。その後、イラスト付きでひとことづつコメントが続きます。

“まず、自分を好きになること。”

 このひとつ目の言葉でじわっと涙が出ました。はたして私は自分で自分のこと好きでいるかな、どうかなと立ち止まる時期なのかもしれません。

“不安なんて、それほどこわくないから、うつむいているのはよくないよ。
臆病すぎるのはどうかと思うでも心配性でよかったってときもあるから。”

 と続きます。

 『Part.2のんびりやればいいよ』。忙しい大人には絶対にならないと思っていた角田さんもまんまと忙しい大人になりましたが、そのくらしに猫が入ることにより緩和されたようです。特に朝は目覚めると足元にいた猫がぴったり添い寝をするものだから、またうとうとしてしまうとのこと、なんともうらやましい話です。

 『Part.3身だしなみは整えて』。毛づくろいからの身だしなみは、

“お洒落でいることを心がける。
今このときを生きること。”

 ここ数年そう思って生きているところがあります。いつ何があっても大丈夫なように会いたい人に会い、伝えたい気持ちは伝えるように、いつかいつか、と思って手遅れになることも多いので、今のうちに楽しもうと思って生きています。

 『Part.4しなやかに生きよう』。人づきあいが苦手ではなく世間話(最大公約数的な会話)が苦手なことがわかったそう。雑談はいい。本題だけ話したいしその人の本当の言葉だけでと本音が垣間見られるページです。その点、猫は、

“ユーモアや悪ふざけがあったり雑談がまじっていたりすることもあるが、世間話的な、だれにでも通じる会話の導入が皆無だ。そのことに安心するし、こんなつきあいを人ともできたらいいのにと思ってる。”

 とあります。

■受け入れ・許すことの必要性・正直さ・勇気、共に生きる責任・意味

 『Part.5一緒に暮らそう』。「なぜ、わが家の猫は私たちを好きなの?」について。それは私もずっと感じていたことだったので面白いなーと思いながら読みました。やっぱりそう思いますよねーですよねーと言いたい気持ちです。

“だけどあなたを嫌ってるやつには、いちだんとやさしくすること。
それでもあなたをたいせつにしてくれない人なんて、無視しなさい。
あなたらしくいればあなたにぴったりの人がきっとあらわれるんだから。”

 『おわりに』。受け入れ・許すことの必要性・正直さ・勇気、共に生きる責任・意味などたくさんのことを猫から学んだそう。読み終え、「らしく生きる」について考えてみました。取材などでも「後藤さんらしさ」と問われると固まってしまう私。「らしさ」っていったい何だろうとまた改めて考えながら、この原稿を書いています。通勤時に会える猫3匹の顔でも思い浮かべもう一度考えてみようと思います。

■後藤由紀子(ごとう ゆきこ)
1968年静岡県生まれ。静岡県沼津市の雑貨店「hal(ハル)」店主。庭師の夫、長男と長女の4人家族。センスの良い暮らしぶりが雑誌などで人気。著書に『50歳からのおしゃれを探して』『おとな時間を重ねる 毎日が楽しくなる50のヒント』『毎日続くお母さん仕事』『日々のものさし100』など、暮らしまわりにまつわる著書多数。

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