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この世界の(さらにいくつもの)片隅に

19/12/16(月)

(C)2019こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

初めて原作を読んだとき、“心が泣くってこういう感覚なんだ”と気づかされ、初めて映画を観たとき、感情のコントロールができないくらい涙がとめどなく流れたのでした。原作も愛していたし、前作の映画も完成度が高く、納得していたけれど、心のどこかで、こうの史代さんの原作にあった“大人の恋愛パート”も観てみたいとは正直思っておりました。そして新たに追加された物語により、見事なまでにひとりの少女が、体だけでなく“心”も大人になるまでの成長物語として完成したんです。しかもそのパートだけを追加したものではなく、感情の流れや心の変化を丁寧に表現し、幼い主人公すずの妄想は、画面いっぱいに広がり、アニメーションだから描ける想像力が動きだすさまは“美しい”のひと言。 戦争という大人たちによる戦いに巻き込まれ、大切な人を失い、体を失い、心を失い、生きることを諦めてしまいそうになる人々。それでもなんとか立ち上がって、前を見て、ただひたすらに毎日を大切に生きていこうとする人間たち。 のんさんの透き通った声で、すずという少女に命が吹き込まれ、無知で鈍臭い少女が、純粋な優しさで人々を包み込んでいくのだから、いくら悲しい物語でも、優しいタッチと愛すべきキャラクターのお陰で、いつまでも見守っていたいと思えるのかもしれない。 しかも、日々のささやかな幸せと、愛することの切なさと美しさ、そして何より救いがある物語なのが、たまらなく良かった! 戦争の悲惨さ、戦うことの愚かさ、人への優しさ、愛することの喜び、希望を忘れないこと、どれもが押しつけがましくなくスーッと心に入っていく語り口、片渕須直監督の人柄が滲み出ている気が。これは未来を担う子供たちに見せたい映画です。

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