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YUKI、YOASOBI、iri……女性シンガーが切り開くJ-POPの可能性 新譜5作をレビュー

リアルサウンド

21/3/23(火) 12:00

 『トロイメライ』以来、2年半ぶりのシングル『Baby, it’s you / My lovely ghost』をリリースするYUKI、アニメ『BEASTARS』のタイアップ曲2曲を収めたCDシングル『怪物 / 優しい彗星』を発売するYOASOBIなどを紹介。女性シンガーが切り開くJ-POPの新たな可能性をぜひ、体感してほしい。

 昨年は20年ぶりに復活したChara+YUKIでの活動、銀杏BOYZの「恋は永遠 feat.YUKI」などで奔放なコラボレーションを展開したYUKIから、ニューシングル『Baby, it’s you / My lovely ghost』が到着。「Baby, it’s you」は、日本、韓国による作曲陣、久保田真悟(Jazzin’ park)、今井了介が編曲を手がけたミディアムチューン。アコギの響き、シンセのカラフルな音色、気持ち良く飛び跳ねるビートを組み合わせたトラック、そして、ヒップホップを思わせる“韻”とともに、殻を破り未来に進んでいく意思を反映したリリックが美しく響き合っている。「My lovely ghost」は気鋭のクリエイターとともに創り上げたポップナンバー。80‘sのシティポップと00年代後半のネオソウルを融合させながら、新しいJ-POPのスタイルを提示している。2022年にソロデビュー20周年を迎えるYUKI。ジャンルを超えたコラボと、常に斬新なポップネスを放ち続ける彼女のセンスは、今も豊かな進化を続けている。

YUKI『Baby, it’s you』ティザームービー

 デビュー曲「夜に駆ける」の驚異的ヒットにより瞬く間に音楽シーンの中心に到達。『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の出演、初のCD作品『THE BOOK』のリリースと、活動の幅を大きく広げ続けているYOASOBIの新作は、TVアニメ『BEASTARS』のタイアップ曲2曲を収めたCDシングル『怪物 / 優しい彗星』だ。アニメのOPテーマに起用された「怪物」は、不穏な雰囲気を感じさせるAメロ、華やかな解放感をたたえたサビの旋律のコントラストが印象的なナンバー。社会の裏と表、正しさと間違いに翻弄されながらも、〈君には笑ってほしいから〉〈僕が僕でいられるように〉と願いにも似た感情を描き出した歌詞は、『BEASTARS』の根本的なテーマと現実世界を見事につなげている。「優しい彗星」はアニメのEDテーマ。クラシカルなピアノ、心地よい起伏と壊れそうな儚さを内包した旋律のなかで綴られるのは、自分を救ってくれた“あなた”との出会いと別れ。感情豊かなギターソロも、楽曲の世界観をさらに際立たせている。

YOASOBI「怪物」Official Music Video (YOASOBI – Monster)

 リアルな経験に裏打ちされたメッセージ色のある歌詞、現行のオルタナR&B、ネオソウル、ヒップホップの流れをくむトラック、そして、豊かな中低音が印象的なボーカルにより、確固たる存在感を放っているiri。ストリーミングを中心に話題を集めた4thアルバム『Sparkle』以来(2020年3月)となる新作EP『はじまりの日』には、この1年間に彼女が感じたこと、未来に向けた思いがたっぷりと込められている。大事な人と会えない日々のなかで、〈なにもいらない/当たり前のように/ここにいて〉という思いを抱え、別れと出会いの季節を過ごすーータイトル曲「はじまりの日」は、2021年の春、もっとも強く人々の心を揺らす曲の一つになるだろう。サウンドプロデュースは、TAAR、 三浦淳悟(ペトロールズ)。オーガニックな高揚感を称すべき音像も素晴らしい。

iri 「はじまりの日」 Teaser

 “まわりの人を巻き込みながら活動していく”をコンセプトに活動してきたSHE IS SUMMER(“ふぇのたす”のVo、“みこ(MICO)”のソロジェクト)が約5年の活動を経て、遂に完結! プロジェクトを締めくくるのは、1年4カ月ぶりのオリジナルアルバム『DOOR』だ。彼女のライブメンバーでもあるMOP of HEAD・Georgeの作曲、編曲によるブルージー&エレクトロなリード曲「HOLY HOUSE」には、池田智子(ex Shiggy Jr.)、 日向ハル(フィロソフィーのダンス)が参加。さらに華やかで儚いポップチューン「JELLY FISH」では80KIDZ、先鋭的なトラックメイクと愛らしいラップが溶け合う「sloppy girl」では、ふぇのたすの元メンバー・ヤマモトショウとのコラボが実現。同世代のクリエイターを中心に有機的な共作を繰り返し、00年代後半の良質ポップスを創出してきたSHE IS SUMMERの集大成と呼ぶに相応しい作品だ。

SHE IS SUMMER / HOLY HOUSE

 オーガニックな音楽性、スモーキーかつキュートな歌声で注目を集めている大阪出身のシンガーソングライター、Miyuuの2ndアルバム『LA LA RAINBOW』。昨年7月から7カ月で配信ライブ『Miyuu Monthly Online Live~Over The Rainbow』を開催した彼女。虹の七色をテーマにしたこの企画はそのまま、本作の基本的なコンセプトに。“きついことがあっても、自分の進みたい場所を目指そう”という思いを刻んだ「indigo night」、“先が見えない時代だからこそ、悔いのない生き方を”とメッセージする「purple」など、彼女のリアルな感情が色とりどりのサウンドとともに描かれている。プロデュースは、Michael Kaneko。生楽器の響きを活かし、現代的なポップスのエッセンスを反映したサウンドメイクによって、彼女のボーカルの魅力を引き出すことに成功している。

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■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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