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マカロニえんぴつ『hope』がチャート健闘 ユーモアとオマージュ溢れるポップセンス光る1枚に

リアルサウンド

20/4/11(土) 10:00

参考:2020年4月13日付週間シングルランキング(2020年3月30日~2020年4月5日)(https://www.oricon.co.jp/rank/ja/w/2020-04-13/

 4月13日付のオリコン週間アルバムランキングで首位を獲得したのは、MAN WITH A MISSIONの10周年を記念したB面&カバー集『MAN WITH A “B-SIDES & COVERS” MISSION』で、推定売上枚数は19,926枚。次いでSHARE LOCK HOMES『FRONTIER』が12,523枚で2位につけ、岡村靖幸『操』が12,523枚で3位。ほか、初登場のリリースをピックアップすると、マカロニえんぴつ『hope』が11,141枚で4位、逢田梨香子『Curtain raise』が8,481枚で6位につけている。

(関連:マカロニえんぴつ『hope』がチャート健闘 ユーモアとオマージュ溢れるポップセンス光る1枚に

 本題に入る前にひとつ。全体として推定売上枚数がとても少ない。元々大きなファンベースを抱えたアーティストやアイドルでない限り、数万枚程度の売上でトップ3入りすることは昨今珍しいことではない。めぐり合わせによっては3万枚から4万枚で首位というのも見慣れたものだ。しかし、首位のアルバムまでも2万枚を切っているのにはちょっと驚く。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う消費の冷え込みの可能性も頭をよぎる。

 もっとも、週間シングルランキングでは首位のSEVENTEENが約33万枚を売り上げているし、アルバムデイリーランキング(4月7日付)ではJUJU『YOUR STORY』が初日で22,812枚の売上で首位、続いて東京事変『ニュース』が18,777枚で2位にランクインしている。各アーティストごとの過去作との比較なども必要になってくるだろうが、次週は今週ほど低調さが目立つことはおそらくないだろう。今週の低調が“たまたま”である蓋然性は十分考えられる。

 以上の点を注意した上でなお、不安点は残る。最近はライブやイベントの中止や延期、“無観客配信”への移行などが相次いで話題となっているが、CDのようなフィジカルメディアも影響を受けるだろう。レコード会社からはリリース延期の報もしばしば聞かれ、東京では大手小売店の営業休止も発表されていることを鑑みれば、なかば自明と言えよう。

 いきなりしんどい話題になったが、閑話休題。今回ピックアップするのはマカロニえんぴつ『hope』だ。

 マカロニえんぴつは2012年に結成、今年で活動9年目になる。テレビ番組への出演やCM・ドラマタイアップなどメディア露出も増え、人気をいっそう拡大している若手バンドだ。現在のメンバーは、はっとり(Vo/Gt)を中心に、高野賢也(Ba/Cho)、田辺由明(Gt/Cho)、長谷川大喜(Key/Cho)の4人。

 『hope』は、フルアルバムとしては2017年の『CHOSYOKU』に続く2作目だ。アレンジのアイデアがより多彩になっている。いまやロックバンドのアレンジでは定番となった、BPM速めの“4つ打ち”がほとんど聴かれない(これまでの作品では結構出てくる)。チープなリズムボックスと一緒に際限なく演奏が加速していく「この度の恥は掻き捨て」であったり、シアトリカルなボーカルと次から次へジャンルが変わっていく急展開が印象的な「Mr.ウォーター」であったり、かなりユニークでユーモラスなアレンジが飛び出てくる。

 このユーモアといたるところに埋め込まれたオマージュの具合には、ユニコーンを思い起こした。というか、「この度の恥は掻き捨て」なんか、モロに「人生は上々だ」だよなあ。と思ったら、はっとりが奥田民生との対談で「 『人生は上々だ』みたいな雰囲気の曲もあって。この曲はキーがどんどん上がっていくから、自分たちはテンポを上げてみようと」と明言していた。(参考:https://natalie.mu/music/pp/macaronienpitsu03/page/3

 2019年のミニアルバム『season』にも収録された人気曲「ヤングアダルト」は、曲調やひとつひとつのフレーズにいろんな名曲の面影が潜んでいながらも、今鳴るべきポップソングとして組み上がっている類まれなバランスの一曲だと思う。

 「ブルーベリー・ナイツ」も既発のミニアルバムからの楽曲(2019年の『LiKE』収録)のキラーチューンだが、冒頭のピアノから細かいオルガンのフレーズ、間奏のキーボードソロなど、鍵盤の活躍に耳が惹き込まれる。それだけに限らず、バンドのパート各々の細かいフレーズ作りとアンサンブルが心地よく、柄にもなく聴き込んでしまった(といって、最大の理由は、ピアノのフレーズがクラムボン「シカゴ」じゃん! という身も蓋もないものではあるが)。

 どこか琴線に触れる近過去からのオマージュとバンド全体の活きの良さがケミストリーを起こしている本作。ディスコグラフィを改めて遡ってみても、やっぱりここに戻ってきてしまう。そのくらい思いがけずハマってしまったのだった。(imdkm)

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