世の中には知らない方がいいことがある。 長編デビューとなった前作『スイス・アーミー・マン』といい、ダニエル・シャイナート監督はこういうのがお好みらしい。しかも今作ではシャイナート監督自らが本作渦中の“ディック・ロング”役で俳優デビューまで飾ってしまった。 本作はアメリカの⽚⽥舎の⼩さな町で実際に起きた“とある殺⼈事件”を基に描いたミステリー。タイトルで死んだと語られている「ディック・ロング」の隠語から始まり、トンデモない事件の死因を追ううちに観客の心には不謹慎な笑いが湧き出てくるだろう。 たしかに世の中には知らない方がいいことがある。でも知らなくていいと思うのは当事者ということが殆んど。外野なんて無責任で、いつだって差し出がましく「真実を」と急き立てる。これは万国共通、人間が持つ性なのかもしれない。