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ミニシアターは宝箱、入江悠×福田沙紀「シュシュシュの娘」全国24館で初披露

ナタリー

「シュシュシュの娘」プレミア試写会の様子。左から井浦新、根矢涼香、福田沙紀、入江悠。

「シュシュシュの娘」のプレミア試写会が8月11日に東京・ユーロスペースで行われ、キャストの福田沙紀、井浦新、根矢涼香、監督を務めた入江悠が登壇。舞台挨拶は、プレミアが行われた全国23館のミニシアターに生中継された。

本作は入江が「SRサイタマノラッパー」と同じく、故郷・深谷をもじった架空の田舎街“福谷”を舞台に撮り上げた自主制作映画。主人公は寝たきりの祖父と暮らす、ちくわ好きな25歳・鴉丸未宇だ。祖父の信条が原因となり、未宇は勤務先の市役所で孤立していた。唯一寄り添ってくれた先輩・間野幸次は理不尽な文書改ざんを命じられ自殺。死にゆく祖父から家族の秘密を教えられた未宇は、排外主義を強め、間野を死に追いやった市政に立ち向かっていく。福田が未宇、井浦が間野、根矢が未宇の親友・丹治紗枝子を演じた。

上映後の舞台挨拶では、宣伝で伏せられている「家族の秘密」が福田の口から初めて明かされた。本記事では入江の「触れていただかないほうがありがたい」という発言を考慮し、その部分は伏せてレポートする。福田は「『シュシュシュ』とはなんだ?と。勘がいい方は気付かれていたかもしれませんが」と笑いつつ、全国の観客に向けて「こうやって映画を届けられるのは当たり前なことではないと思います。心から感謝してますし、もっとたくさんの人に観ていただきたいです」と呼びかける。ある設定を隠している理由を問われた入江は「ミニシアターって宝箱のようなもの。劇場を出たときに観た人の意識がちょっと変わっていてほしい。よくわからずミニシアターに入ったらびっくりした、みたいな場所であってほしかった」と明かす。

オーディションの時期が事務所から独立したタイミングと重なり、まず応募のため仕事用のメールアドレスを作ることから始めたという福田。「これまでの道のりを振り返りながら、これから俳優としてやっていけるのかと考える時間が多かった。そのときオーディションの情報をたまたま目にして、すがる思いで応募しました。返事が来るとは思ってなかったので、最初に監督から連絡が来たとき、手が震えて泣きました」と当時を振り返る。入江は福田に決めた理由を「1つは眼力。後半は目だけ映るシーンが多いので。もう1つはダンス。劇中のダンスも全部ご自身で振付を考えてくれています」と明かした。

映画の世界を志したきっかけが、茨城に住む高校生だった頃に「SRサイタマノラッパー」を鑑賞したことだったという根矢。「すごく落ち込んでいるときも、助けてくれるのは映画。コロナ禍で映画人がミニシアターを救うために動き出したとき、私もどんな形でもいいから、この波に乗ろうと思ってオーディションに応募しました。制作の始まりから終わり、そして観客に届いていく過程も楽しめるのは自主映画だからこそ。お客さんとの距離が近いから、作り手も熱量をもらえる。この映画に関われたことがうれしくてしょうがないです」と思いの丈を述べた。

コロナ禍での臨時休館や販売座席の縮小、観客の減少でミニシアターが窮地に陥っていることも、入江が本作を作る動機になった。その根底には、入江が製作発表会見で語った「コロナ禍で苦境に陥った全国のミニシアターをもう一度巡りたい。満席の映画館を作り、映画館の熱をもう一度取り戻したい」という思いがある。入江の行動に勇気をもらったという井浦は「ミニシアターのために何かしたい、何ができるんだろうと考えてました。入江監督が『こんなときだからこそ自主映画を作る』と。そこに僕もガブッと噛み付いて『俳優じゃなくてもいいので参加させてほしい』とメッセージを送っていました」と振り返った。

地元・広島にある横川シネマから中継で出席した司秋浩役の吉岡睦雄は「こちら広島中継所、とても盛り上がっております! 吉岡コールが響き渡っております!」と挨拶。「親族、クラスメイト、昔の彼女も何人か来てます。本当に大きなスクリーンで自分が出た映画を観てもらえたことに感動してます。どうもありがとうございました!」と呼びかけた。ほかにもキャスト陣では埼玉・深谷シネマから金谷真由美、京都・出町座から安田ユウ、兵庫・元町映画館から児玉拓郎が中継で顔を見せた。

「シュシュシュの娘」は8月21日よりユーロスペースほかで順次公開。イベントは茨城・あまや座、神奈川のシネマ・ジャック&ベティ、富山・ほとり座、長野の千石劇場と上田映劇、愛知・シネマスコーレ、京都・京都みなみ会館、大阪の第七藝術劇場とシネ・ヌーヴォ、兵庫・豊岡劇場、広島・シネマ尾道、愛媛・シネマルナティック、大分の別府ブルーバード劇場とシネマ5、佐賀のTHEATER ENYAとシアターシエマ、熊本・Denkikan、宮崎・宮崎キネマ館、鹿児島・ガーデンズシネマにも中継された。

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