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草間彌生∞INFINITY

19/11/22(金)

学生時代から草間作品に惹かれていたというヘザー・レンズ監督は、草間のニューヨーク時代(1950年代末〜70年代初頭)の斬新で衝撃的な作品や提案が、当時のアメリカ人アーティストに与えた影響や、アメリカの美術界への貢献に対する過小評価に気づいたという。そのため本作ではニューヨーク時代の草間の活動や制作意図が、当時を語る草間の言葉とともにくっきりと浮かび上がる。 ベトナム戦争に揺れる1960〜70年代アメリカの若者文化を背景に、草間は社会の変革と人々の意識覚醒を目指す「エンヴァイロメンタル彫刻家」として、作品制作やゲリラ的パフォーマンスを精力的に展開していった。ソフトスカルプチュアや同一写真の反復と立体作品によるインスタレーション、鏡を使ったミラー・ルームなどの実験的な作品は、オルデンバーグやウォーホル、サマラスなどに大きな影響を与える。さらに、50年も前に「ホモセクシャル・ハプニング&ファッション・ショー」を実践。LGTBを含めた性の解放の主張という、現在を予言するような先駆性にも驚かされる。 アメリカの視聴者を前提としているゆえだと思うが、反戦や反体制を主張する当時の若者文化や、身体によるパフォーマンスという新しい表現手法の登場など、文化的背景への言及がもう少し欲しいところ。そうでないと、時代の熱気から養分を得て自らの世界を確立した、草間のスケールの大きさが伝わらず、特に日本では、極めて特殊で例外的な存在としか受け止められかねないからだ。草間彌生という稀有の創造者をより深く理解するためには、彼女の生涯や作品の概略を押さえてから観ることをお薦めしたい。

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