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犬山紙子が語る、コロナ時代における夫婦円満の秘訣「弱音や愚痴を吐く練習をやっておくと、支え合える夫婦になる」

リアルサウンド

20/5/26(火) 13:00

 新型コロナウイルスの感染拡大が長引き、緊急事態宣言は解除されたものの、依然として外出自粛や在宅ワークを続けている方は多いだろう。家にこもる生活でストレスが溜まった結果、顔を合わせる時間が増えた夫婦の関係が悪化し、「コロナ離婚」なる言葉も生まれている。コロナウイルスは人々の健康や経済活動だけではなく、夫婦仲にも大きな影響をもたらした。ウィズコロナ/アフターコロナの世界で夫婦円満に過ごすためには、どんな意識の変化が必要なのか。

参考:パートナーとの関係に一般化できる“トリセツ”などない

 3月26日にコラムニスト/TVコメンテーターの犬山紙子が新刊『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある 』(扶桑社)を発売。『週刊SPA!』(扶桑社)での連載「他人円満」であらゆる問題を乗り越えた夫婦を取材し、そこで得た教訓をまとめたものだ。犬山氏に、コロナ時代における夫婦問題解決のヒントを聞いた。(石井かすみ)

■知識の格差が価値観の違いにつながる

——本書のテーマは、育児・家事、夫婦げんか、不妊治療、セックスレス、不倫などあらゆる夫婦問題の対処法が書かれていました。私も結婚して1年半なので興味深く読みました。読者からの反響はいかがですか?

犬山:発売が3月末の外出自粛が始まったころだったので、夫婦で顔を合わせる機会が増えたからこの本をいい夫婦生活のきっかけにしたいという声を多くいただきました。また、夫婦がテーマでしたが「すべての人間関係に使える」と言ってくれる方もいて、うれしいです。

——「知識の格差が価値観の違いにつながる」という言葉が印象的でした。夫婦関係において価値観の違いは致命的ですよね。これを避けるためには、知識の格差を生まないことが大切なんだと感じました。この本もぜひパートナーに読んでもらいたいと思ったのですが、押し付けにならないように慎重に提案したいです。どんな方法で読んでもらうのがいいでしょうか?

犬山:まるっと1冊渡すのはハードルが高いので、例えば、トピックスごとにまとめているので、ピンときたものをスクショしてLINEで送るのはどうですか? 反応が良かったら、こんなのもあるよと広げていくのはどうでしょうか。

——画像にして送ると気軽に読んでもらえそうでいいですね。

犬山:もし私たち夫婦(※1)をご存知だったら「あの二人もいろいろ問題抱えているみたいよ」と使ってもらってもいいので。取材した中で有名なご夫婦だと、(※2)宮崎さんと金子さん夫婦をフックにしてみるのもアリですね。

※1 犬山さんの夫は「あらかじめ決められた恋人たちへ」のベーシストでマンガ家の劔樹人さん

※2 国会議員の育児休暇と浮気で騒がれた宮崎謙介さんと金子恵美さん夫婦

——宮崎さん金子さん夫婦のインタビューはとても面白かったです。浮気でゴタゴタしているイメージがあったのですが、実はもともとの信頼関係が厚くて戦友のような関係で、本人たちは浮気のことはさほど気にしていなかった。やはり本人に聞いてみないと夫婦関係の実態はわからないですね。

犬山:浮気をされた側の自尊心がどこまで傷つけられたかって、本人にしかわからないものです。あのお二人は、世間から強烈なバッシングを受けて、夫婦が団結したのが大きかったのかな。今は我々にもコロナという戦うべき相手がいる。お互い敵同士ではなく、夫婦は味方同士だってことが確認できる機会とも言えますよね。

——本の中で、夫婦関係に亀裂を生まないためには「お互いの支援者になる」ことを誓い合うことから始めるべき、とありました。ですが実際に夫と話していて、意見が対立してしまうとなかなか難しいです。

犬山:その話し合い方は細かく本に書いてあるので是非。例えば、話し合いの先の目的を考えて、通りやすい伝え方はどうか、だったり。大きい問題があったときに、夫婦が支援者同士であるのか、対立しているのかで、問題の乗り越え方も違ってくるんですよね。結婚ってただの制度ではあるのですが、この人と長いこと一緒にいたいと思ったから結婚する。外で理不尽な目にあったりひどいことがあっても、自分の支援者が一人でもいてその人に話を聞いてもらえる。自分の大切な人がそう言っているなら大丈夫だって思える。一緒にいたい理由ってこういうことだと思います。不満とか愚痴は絶対あると思うんですよ。それは押し込めないで、お互い冷静に、問題を乗り越えるための問題定義っていうやり方でやっていけると、同じ苛立ちでも解決の仕方が変わってくると思います。

■愛する仕事ができないのが想像以上にきつい、夫のつらさ

——私は最近、夫とコロナのことや政府の対応などシリアスな話題が多いです。犬山さんご夫婦はこの時期、どんなトピックを話していますか?

犬山:我が家でも、さっきも安倍さんの会見を見たり、給付金のあり方とかを話しています。うちの夫の場合はバンドマンなので、コロナの影響が直撃しているんですよね。彼や彼の周りの人の仕事がなくなってしまった話などもよくします。

 夫は自分の愛するベースの仕事がなくなっていて、その苦しみを妻としてもひしひしと感じています。自分のしたい仕事ができないというのは、やはりきついみたいで。夫が溜め込みすぎないようにヒアリングをしています。

 私自身もコロナで困っている人たちにアンケートを取って、経産省の副大臣に届けに行ったりしたんですが、そのことも夫と話し合っていますね。

——まさに支援者の関係ですね。お子さんにはどんな風に説明していますか?

犬山:うちの娘は3歳なんですが、「お外に出かけたい」「おばあちゃんに会いたい」って言い出したんですよね。その言葉に私も泣きそうになったんですけど、まずは寄り添って「そうだね、わかるよ」と声をかけました。そのあとに理由の説明です。本当はウイルスと細菌は全然違うものなんですけど、娘でもわかるバイキンという言葉を使いました。「お外はバイキンがたくさんいるんだよね。バイキンがお口とかお目目に入ると、病気になってしまうかもしれないんだ」と。これだけだと不安にさせてしまうので、「今たくさんの大人たちがお薬作るためにがんばっているよ。お薬ができるまで、お母さんとお父さんと家で楽しく過ごそう!」と説明しました。その子どもがどれぐらい理解できるのかに合わせて説明することが大切なので、月齢にもよって違ってきますが。

——なるほど、最後に希望があることを説明するのが大切なんですね。

犬山:月齢に合わせて褒めたりしつけたりしようという子育て法の「ポジティブディシュプリン」を習いに行ったんです。その手法も取り入れました。私は児童虐待をなくすための活動をしているんですね。今年の4月1日から体罰禁止法(親による体罰禁止を盛り込んだ改正児童福祉法と改正児童福祉法)が施行されましたが、私たち正しい知識をつけることも児童虐待防止につながる行動だと思っています。

■カウンセリングでわかった怒りの原因「甘えたいから怒っていた」

——犬山さんは結婚3年目から4年目までカウンセリングを受けたそうですね。ご自身の怒りっぽい性格に、夫が疲れきって傷ついてしまうことを避けるためとありました。怒りの根本を探ったら、実は甘えたいから怒っていたことに気づいたというのが興味深かったです。カウンセリングのいい点を改めて教えてください。

犬山:カウンセリングのいい点は二つあって。一つ目は守秘義務を持っている方に話せること。友達にも言えない悩みもたくさんあると思うんです。カウンセラーの方は否定せず傾聴してくれるんですよね。そうすると自分がどうしたいか分かる。もう一つは、第三者の視点が入ること。夫婦の問題を考えるときに一気に視野が広がります。俯瞰で問題を捉えることができるのはいいことだと思います。そしてカウンセラーや臨床心理士の方などはその道のプロなので、一般の人に相談に行ったり占いに行ってみたりするよりも、科学的な根拠に基づいてアドバイスがもらえます。

——どんなきっかけでカウンセリングを受けようと思ったのですか?

犬山:きっかけは本当に軽い気持ちだったんですけど、海外ドラマを見ているとカップルも夫婦もカウンセリングに行くじゃないですか。日本にもあるのかな~と思っていて。児童虐待防止の活動で、メンタルケアの必要性に気づいたのもありますね。

——どんな風にカウンセラーを探されましたか?

犬山:私の場合の選ぶポイントは、臨床心理士の資格を持っていて、カウンセラー歴が長くて経験豊富なこと。非科学的なことを言っていないかなどもチェックしてみました。最初はインターネットで家から近いところを探しましたね。あとは、友人の口コミなどに頼るのもいいかもしれません。ただ、カウンセラーさんにも合う合わないの問題があります。私は最初のカウンセラーさんは合わなくて変えました。変えた相手は上の条件ももちろん当てはまる、知人からの紹介ですね。

——変えてもいいんだと思うと気持ちが楽ですね。ですが日本だとまだまだカウンセリングは浸透していないですよね。カウンセリングに通う=病気だと思われてしまったり。

犬山:風邪をひいたり怪我をしたら病院に行きますよね。なぜかというとプロに診てもらうため。心が傷ついたときも同じ。私たちはメンタルケアの方法を学校で習ったわけではないので、プロに頼っていい部分だと思います。心の不調はなかなか気づきにくいですけどね。私自身、何回かメンタルを崩したからわかるようになりました。眠れなかったり、動悸が激しくなったり、声が出なくなったり。そうなる前に気軽にプロに診てもらえばよかったなと思います。そもそも心の病気が恥ずかしいと思ってしまう社会の空気も問題です。

■夫婦同時の在宅ワークのコツは、朝のスケジュール会議

——在宅ワークはいかがですか?

犬山:正直、私は性に合っていますね。もともとインドアなので。効率的だし、仕事の前後にかかっていた時間が他のことに使えたり。私は今、絶賛ヘルニア中なので、体を休めることができるのもいいですね。

——テレビのコメンテーターのお仕事も、自宅からリモート出演されていますね。

犬山:テレビ出演はやっぱりスタジオでワイワイ話している方が空気が伝わるしいいことが多いと思うんですけど、この新型コロナの時期にテレビ局がしっかり対策してリモート出演をすすめてくれたのがよかったです。テレビ局に対して信頼感が増しました。大切に思ってくれているんだなと。

——テレビ仕事の在宅ワークは、普段と比べてどう違いましたか? 打ち合わせに余計に時間がかかったりしたのでしょうか。

犬山:機材のチェックはありますが、打ち合わせ時間はこれまでどおりですかね。普段から台本はメールで送られてきますし。逆に移動時間がなくなったので、下調べや準備の時間が十分に取れたりしています。

——在宅ワークで工夫していることはありますか?

犬山:早寝早起きのリズムを崩さないこと。つい深夜までやってしまうと、私はもうアラフォーなので次の日がきついんです。12時を超えて1時間仕事をすると、翌日負担が3倍になって来てしまう。夜は子どもと一緒にしっかり寝て、朝は子どもと夫が起きる前にそっと起きて、2時間くらいでガッと仕事する。早朝の方が集中力があるので。やっぱり子どもが横にいる状態では仕事は絶対できないですね。

——夫婦同時の在宅ワーク、どうやっていますか?

犬山:朝、夫と「今日どんな感じ?」と話して、仕事のタイムスケジュールを作って子どもを見る分担を決めていますね。グーグルカレンダーでお互いのスケジュールを把握しています。片方の仕事中にいかにパートナーが子どもの気をひくかですよね。

——ご自宅の環境はどう工夫されていますか?

犬山:デスクと椅子の見直しは必須ですね。自分の椅子とデスクが、肩と首に負担を与えない高さなのかチェックが必要です。腰に負担をかけない座り方を調べたりもしました。あとは、スマホを裏返しにして片手の半径より届かない場所に置いています(笑)。スマホを横に置きながら仕事をすると、かかる時間が1.2倍になる。スマホを触りながら仕事をすると効率が下がるというのはデータで出ています。

——コロナが収束した後でも継続したい習慣はありますか?

犬山:在宅ワークのノウハウはコロナ後も選択肢として残しておければいいですね。まさにこういった取材とかは最初から「オンラインにします? 対面にします?」と選べたり。一般の会社の方々も在宅ワークをやってみて、この時間全然いらなかったなとか、やっぱりここは現場の方がいいなど、仕事のやり方が見えてきたかもしれませんね。

■在宅ワークをきっかけに、お互いの仕事にリスペクトを示そう

犬山:家の中で夫婦がこれだけ顔を突き合わせて仕事を続けていると、普段は知ることができなかったお互いの仕事に対する姿勢が見えてきますよね。この機会にお互いの仕事に対する考え方をちゃんと話し合ってすり合わせていくことが、コロナの後の二人の関係に影響を与えると思います。ぜひお互いの仕事に対してリスペクトしていることを伝えてください。

——たしかに、仕事中の人格はなかなかパートナーに見せません。コロナの影響で普段見れない部分を見ることができました。

犬山:仕事のつらいことをパートナーに言わない人はすごく多いですよね。相手を不安な思いをさせたくないという思いやりからなのですが。これを機会に、弱音や愚痴を吐く練習をやっておくと、支え合える夫婦になると思います。特に男性は弱音なんか吐いちゃいけないというプレッシャーもあると思うんですが、我慢した先にはメンタルの不調があります。ぜひ弱音を吐いてほしいです。

——本書に「知識は問題の重症化を防ぐワクチンのようなもの」とありましたが、まさにそうですね。新型コロナウイルスの影響で社会構造が変われば、家庭にも大きな変化をもたらします。これを夫婦関係に新しい知識や習慣を取り入れるチャンスと捉えてみようと思います。(石井かすみ)

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