Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

赤楚衛二、『チェリまほ』安達役でスター街道へ 俳優としての3つのストロングポイント

リアルサウンド

20/12/17(木) 6:00

 俳優は、自分にぴったりの役を振られたとき、ひときわ輝く。今期、そんな当たり役を掴んだのが、ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称:チェリまほ)(テレビ東京系)で主演を務める赤楚衛二だ。

 赤楚が演じるのは、童貞のまま30歳を迎えたことにより、ふれたら人の心が読める魔法が使えるようになった主人公・安達清。その魔法を通じて知ったのは、同期のエリート・黒沢(町田啓太)が自分に想いを寄せていること。思ってもみない事態に戸惑いながらも、安達は黒沢との関わりを通じて“人から愛されること”“人を愛すること”を知っていく。

 そんなピュアで優しいラブコメディの核を担っているのが、安達を演じる赤楚の演技だ。自分に自信がないために人と深く向き合うことを恐れ、それでも少しずつ変わっていこうとする安達という役に、赤楚の演技が絶妙にマッチしている。『チェリまほ』から見える俳優・赤楚衛二のストロングポイントについて考えてみたい。

安達の成長を、赤楚衛二は目で語った

 まず目を引くのが、役のグラデーションを表現する力だ。『チェリまほ』は恋愛ドラマであると同時に、自尊心の低い安達の成長物語でもある。黒沢との恋を通じて、安達がどう変わっていくか。その変化が鮮やかであればあるほど、視聴者の感動は増幅する。

 そこで改めて第1話と、先日放送された第10話を見比べてみると、安達の表情がまるで別人のように違っていることがわかる。最も顕著なのは、目の輝きだ。第1話の安達は黒目に光が少なく、視線もぼんやり。人と話をするときも目線はすぐ下を向き、弱ったようにハの字になる眉がいかにも頼りない。

 それが、黒沢と交際中の第10話になると、丸い黒目がキラキラと輝き、第1話では見せなかった目が半月状になる笑顔を何度も浮かべている。黒沢から愛されることで少しずつ前向きになる安達の成長を、赤楚は目の輝きで語ってみせた。

 ターニングポイントとなったのは、黒沢のピンチを救った第5話だろう。「俺でも黒沢の役に立てたんだ」とコピー機に顔を突っ込んで喜びを噛みしめるところから、蕾だった安達の可愛らしさがどんどん花開いていった。すっかりおなじみとなった「うんまっ!」のフレーズから、トコトコとバイキングに乗り込む仕草まで、一挙手一投足がまるで小動物のようなあいくるしさ。恋をすると人は明るくなるという風説を言動からナチュラルに証明してくれているので、観ている方もつい応援したくなる。

 次に光っているのが、イキイキとしたリアクションだ。エレベーターホールで黒沢を見つけて思わず身を隠すところや、柘植(浅香航大)との関係を黒沢に誤解されそうになって慌てて訂正するところなど、ことあるごとにテンパる安達は、そのたびに大きく腕を振ったり、声を裏返らせたり、目を丸めたりする。こうしたオーバーリアクションは失敗するとサムく見えるのだけど、絶妙にフィットしているのが赤楚の巧みなところだ。

 赤楚のリアクションが自然なのは、動き先行ではなく、感情先行で芝居ができているから。こういう動きをしようという自意識が前に出ると、どんなリアクションも白々しく見える。そこを赤楚は、まず安達の驚きや混乱という感情をしっかり捉え、その発芽としてリアクションへと展開している。そして、赤楚の演じる安達ならこんなふうに動きそうという共通認識をしっかり視聴者と共有できているから、ちょっとオーバーサイズのリアクションも違和感なく楽しめるのだ。

 こうしたリアクションの良さを踏まえた上で、3つめのストロイングポイントを挙げるなら、高いコメディセンスだろう。「まぶしっ」「近いな」など、赤楚は短い切り返しの台詞が抜群にうまい。ここで緩急が生まれることで、つい視聴者はクスッとさせられてしまう。他にも「こんな能力、まじでいらねえ!」「これじゃ心臓がもたない!」など勢いがないと成立しないモノローグも多数あるが、どれもデフォルメが効いていて面白い。

 『チェリまほ』が愛されるのは、視聴者の目尻が思わず垂れるような純度の高いラブストーリーであることもさることながら、コメディとしてのノリの良さも大きい。各話30分という短いお話の中で、毎回笑ってツッコめる要素が散りばめられているから、親しみが持てるのだ。黒沢や柘植が豪快なストレートで笑いを決めてくるタイプなら、安達はチェンジアップ。その即妙さで、掛け合いにリズムを生んでいる。

入念な役づくりが支える、キャラクターのリアル感

 赤楚衛二は作品に入ると、その役に集中し、プライベートの友人との連絡も途絶えがちになるタイプだと言う。また、今回のような原作ものをやるときは、髪型など漫画のビジュアルになるべく寄せることを心がけているそうだ。俳優デビューは2015年。初期の頃に舞台『黒子のバスケ』で2.5次元舞台の出演経験があることを考えると、そうした原作リスペクトの精神も納得だ。

 本人も役づくりを重視していると公言しており、感覚派というよりも、外見から内面までしっかり準備をし、できるだけ自分の中で嘘を取り除いて役に溶け込むタイプの俳優に見える。『チェリまほ』でも、サラリーマンを演じるためにスーツを着て街を歩いたり、働くサラリーマンの動きを見て研究したと語っていた。そうした地道な取り組みが、安達の猫背や通勤中の大あくびに活きている。この芝居に対する真面目な姿勢も、大きなストロングポイントのひとつだろう。

 そして、最後にもうひとつ重要なストロングポイントがある。それが、にじみ出る愛らしさだ。これまで主要な役を務めた作品といえば、出世作である『仮面ライダービルド』(テレビ朝日系)の万丈龍我/仮面ライダークローズ役と、馬場ふみかとW主演を務めた『ねぇ先生、知らないの?』(MBS)の城戸理一役が印象深い。前者は筋肉バカの熱血漢、後者は一途に尽くすスパダリ彼氏と、性格こそかけ離れているが、どちらもつい視聴者を味方にしてしまう愛らしさがあった。

 万丈はぐっと体に力が入った熱っぽい口調、理一はソフトでスローリーな台詞まわしと、キャラクターによってわかりやすく差異をつけているが、根っこを支えるのは赤楚からにじみ出る愛らしさ。「バカって言うなよ。せめて筋肉つけろよ」「うそーん」など万丈に名言が多いのは、脚本はもちろんだが、演じる赤楚の愛嬌を多くの人が支持したから。理一についても、わかりやすいイケメン美容師感より、どれだけ恋人に振り回されても健気に待つ子犬感に心を射止められた人が多いと思う。

 安達という役は、そんな赤楚の愛らしさを最大放出できる役。だからこんなにもバッチリとハマッて見えるのだ。

 一方、年明け放送の『連続ドラマW コールドケース3~真実の扉~』(WOWOW)ではレイプ犯役を演じることが発表されている。愛らしさとは正反対の卑劣なキャラクター。こうしたヒールをどう演じるかで、役の振り幅も変わってくる。今後のキャリアを占う上でも見逃せない作品となりそうだ。

 安達という当たり役を得て、2020年の最後に一躍ブレイクのチャンスを掴んだ赤楚衛二。ここから2020年代を代表するスター俳優へと羽ばたいていけるか。期待を込めて、まずは『チェリまほ』を最終回までドキドキしながら見守りたい。

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。初の男性俳優インタビュー集『役者たちの現在地』が発売中。Twitter:@fudge_2002

■放送情報
木ドラ25『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』
テレビ東京ほかにて、毎週木曜深夜1:00〜1:30放送
BSテレ東/BSテレ東4Kにて、毎週火曜深夜0:00〜0:30放送
※放送日時は変更になる可能性あり
出演:赤楚衛二、浅⾹航⼤、ゆうたろう、草川拓弥(超特急)、佐藤玲、鈴之助、町田啓太
原作:豊田悠(掲載『ガンガンpixiv』スクウェア・エニックス刊)
オープニングテーマ:Omoinotake「産声」(NEON RECORDS)
エンディングテーマ:DEEP SQUAD「Good Love Your Love」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
監督:風間太樹、湯浅弘章、林雅貴
脚本:吉田恵里香、おかざきさとこ
プロデューサー:本間かなみ(テレビ東京)、井原梓(テレビ東京)、熊谷理恵(大映テレビ)
制作:テレビ東京 大映テレビ
製作著作:「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会
(c)豊田悠/SQUARE ENIX・「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/cherimaho/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_cherimaho

 

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む