ある女優の不在
19/12/11(水)
イランを代表する映画監督ジャファル・パナヒ。『人生タクシー』や『これは映画ではない』など私も大好きなんだけど、この作品も期待に違わず素晴らしかった。スマホの動画で少女が首を吊っている(ように見える)といういきなりの衝撃シーンから始まり、その少女を探して主人公の女優(人気女優のベーナズ・ジャファリが本人を演じる)と映画監督(こちらもパナヒ本人が演じてる)が田舎の村をただ彷徨っているだけというシンプルなストーリーなのに、ぐいぐいと観せてしまうところはいつものパナヒ作品だ。
そしてそこから物語の空間は、3つの世代の女性たちがイランという難しい国でどう生きているのかというところへと広がっていき、最後はとてもシンボリックな山道のシーンで感動的に終わる。全篇がドキュメンタリータッチで撮影されているのに、すべてが緻密に構成されていて、無駄なシーンやショットはひとつもない。なんという完璧な映画なんだろう。
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