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『ゴーストランドの惨劇』パスカル・ロジェ監督が語る、女性を描き続ける理由とハリウッドの現状

リアルサウンド

19/8/10(土) 13:00

 『マーターズ』『トールマン』のパスカル・ロジェ監督最新作『ゴーストランドの惨劇』が8月9日より公開中だ。本作は、性格が正反対の双子の姉妹ヴェラとベスが、絶望的な惨劇に巻き込まれていくさまを描いたホラー映画。

参考:謎の暴漢と格闘する母の運命は? パスカル・ロジェ監督『ゴーストランドの惨劇』本編映像

 今回リアルサウンド映画部では、6年ぶりの新作となった本作を手がけたロジェ監督にインタビュー行い、製作の背景や脚本作りのプロセス、女性を描き続ける理由から、ハリウッドの現状についてまで話を聞いた。

ーー今回の作品は『トールマン』以来6年ぶりの新作となりますね。

パスカル・ロジェ(以下、ロジェ):本当は6年もかからなければよかったんだけどね(笑)。ただ、この6年の間に何もしていなかった訳ではないんだ。スリラーとラブストーリーとメロドラマの要素がある『The Girl』という企画を手がけていた。ものすごく力を入れて脚本を書き上げたんだけど、今回の『ゴーストランドの惨劇』よりも予算が大きな作品で、成立させるためにはアメリカのある程度名前のあるスターキャストが必要だった。そのキャスティングがうまくいかずに、企画自体が頓挫してしまったんだ。僕にとってはすごく自信のある作品だったんだけどね。とはいえ、生活もしなければいけないし家賃も払わないといけないから、必死になって3カ月かけて脚本を書き上げた低予算ホラーがこの『ゴーストランドの惨劇』なんだ。運がいいことにすぐに製作費も集まって、無事に作ることができたよ。だからこの『ゴーストランドの惨劇』は、「家賃を払うために」というのが最初の一歩だったんだ(笑)。

ーーそうだったんですね(笑)。今回の作品は、双子の姉妹の妹ベスの主観で語られているのが大きなポイントになっています。

ロジェ:その理由は、ベスが僕自身だからなんだ。ベスというキャラクターが、僕がこの作品を作るパーソナルな動機でもあった。ベスというキャラクターを掘り下げることによって、僕自身の情熱とイマジネーション、アーティストである理由、その関係性を掘り下げられると思ったんだ。普通の生活だってできるのに、なぜ人は現実的ではないものに惹かれていくのか。そうやって、自分のことを掘り下げるためのキャラクターでもあったんだ。

ーー『マーターズ』も『トールマン』もそうでしたが、あなたの作品にはいつも巧妙なトリックが仕掛けられています。脚本作りにおいて、もっとも意識していることはなんでしょう?

ロジェ:脚本作りのプロセスを説明するのは難しい。どういう題材を選んでいるのか、どうやって書き進めるのか、自分のイマジネーションをどう定義づけるのか……正直言って説明するのは不可能だ。なぜかというと、無意識のうちにやっていることだから。あまり説明もしたくないんだけど、できるだけ説明してみるよ(笑)。とにかく始まりはストーリー、あるいはジャンルからスタートする。例えば、ソリッドなホラーを書くというところからスタートして、そこから僕が大好きな、典型的なキャラクターやクリシェというものを取り入れていく。ダークさを感じさせるような古い家やトラック、そういうクリシェからスタートして、より特別でパーソナルなものに転換していくんだ。ウエスタンだったら、インディアンやカーボーイから始まるようにね。だから、ジャンルからスタートすることはとても大事なんだ。書き進めていくうちに、何か意外性を持った、自分なりのオリジナルなものに展開できればと思いながらいつも脚本を書いているよ。今回の『ゴーストランドの惨劇』の場合は、“ひねり”から始まっているんだ。ネタバレになるから詳しくは言わないけれど、映画を観てくれたら分かると思うよ。

ーーあなたの作品では常に女性が恐ろしい目に遭う役割を果たしています。なぜ男性ではなく女性なのでしょうか?

ロジェ:現場でたくさんの時間を一緒に過ごすなら、僕みたいなルックスのおじさんよりも美しい女性の方が楽しいからだよ(笑)。真面目に言うと、僕にとって世界の中で一番の謎が女性だからだ。単純に男として女性に惹かれるし、脚本を執筆中に感受性が高まって自分の性格の中にある女性的な部分が発揮されているからかもしれない。映画は作るのが大変なものだけど、多くの場合、男性よりも女性の方が勇敢だということも理由の一つとしてあるかもしれない。どんなに大変な現場でも、女性の方が進んでいく力を持っているし、自分の感情を見せることも女性の方が怖がらない部分があるんだ。

ーー常に女性が悲劇に見舞われるということで、批判的な意見も寄せられていますよね。

ロジェ:ミソジニストやセクシストとして、15年前の『マーターズ』の頃から攻撃されているよ。しかも今回の場合、悪役のひとりがトランスジェンダーだと思われるキャラクターだったから、僕のことをトランスフォビアだと責める人もいた。僕自身、僕の作品をそういうふうに判断して批判する人たちのことを敵だと思っているし、大嫌いだ。そういう人たちは、ダリオ・アルジェントの作品についても30年の間くだらない批判をし続けていて、全くもっと馬鹿げていると思う。僕の作品については、観てもらえれば僕がキャラクターに寄り添っていることがすぐに分かる。僕の物語の中では、日々の苦労や苦悩、苦しみ、痛みなどを悪のメタファーとして描いていて、キャラクターたちはその悪を経験することによって、何かを学んでいく。どの作品の中でも、女性たちは“被害者である”というレッテルを否定しているんだ。今回の作品においても、姉妹の2人は人形扱いされるけれど、彼女たちは「私たちは被害者じゃない」と真っ向から否定する。だから、そういうことを読み解けずに作品を否定する人たちは、何も考えていないと言えるね。ただバイオレンスのレベルを見て、そのリアクションをしているだけだ。

ーーまさにその通りだと思います。最後にひとつ聞かせてください。『マーターズ』は2015年にハリウッドでリメイクされましたが、現在ハリウッドではホラー映画のリメイクやリブートがひとつの潮流になっていますよね。そのようなハリウッドの現状について、あなたはどのように見ているのでしょうか?

ロジェ:イマジネーションの欠落だと言えるね。リスクを取ることもしないし、冷たい工場のような映画作りになっていると思う。今のハリウッドは、お金しか見ないような人たちに支配されていて、作家性のある作り手の声が全く響かない作品ばかりが作られている。今までのハリウッドの中でもっとも良い時期ではない、暗黒期にある。特にホラー映画の平均的なレベルもかなり落ちているね。だから大人の観客たちは、映画館に映画を観に行かず、テレビを観るようになっている。それだけクリエイティビティや良いものを作ろうという志を持った作品が減ってしまっているし、全てがスーパーヒーローのような子供向けの作品になっていて、僕らが観るような作品が作られていないんだ。僕が子供の頃は、ウォルト・ディズニーの作品から始まって、そこから『タクシードライバー』や『ゴッドファーザー』、セルジオ・レオーネの作品など、大人向けの作品を観ることができた。今のハリウッドで作られているような子供向けの作品はなかったんだ。僕たちは、そういう当時作られていた複雑で豊かな素晴らしい作品に触れていたからこそ、こうやって映画オタクになった。今ハリウッドがそういった作品を作ることができなくなってしまったのは、僕らの世代からしたら不思議だし、とても奇妙なことだと感じるよ。ただ、全てはサイクルで変わっていくから、おそらく長くは続かないだろう。より興味深い作品たちが生まれるようなサイクルが次に来ることを心から願っているよ。(取材・文=宮川翔)

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