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『BNA』獣人を通して人間社会の闇を活写 みちるの決意はキャッチコピーに通じる

リアルサウンド

20/4/16(木) 11:30

 テレビ地上波にて放送が開始されたTRIGGER制作のアニメ『BNA ビー・エヌ・エー』の第2話が4月15日に放送された。

参考:『BNA ビー・エヌ・エー』は世界を見据えた意欲作に 注目を集め続けるTRIGGERの戦略

 第1話にて、学生証の入った財布を盗まれた主人公・影森みちるは、失くしものが見つかるといわれているラビットタウンへ向かうことに。そこでは女の獣人たちが街を根城にしてギャングを形成していた。単身で乗り込んでしまったみちるは、そこで匿われている子どもたちに読み書きを教えれば財布を返してやってもいいとボスであるグラングランマに言われ、行き場のない子どもに字を教え始める。

  メスの獣人が暮らす街、ラビットタウン――その実は、男たちに裏切られ流れ着いた女たちが生きていくために危険な仕事を請け負い、暮らしている場所だったのだ。

 グラングランマたちは金のために、子どもたちとみちるを人身売買に出そうとする。窮地に陥ったところを、狼獣人である大神士郎が助ける。彼は市長から頼まれ、人身売買の捜査を行っていた。士郎がぎりぎりの状態になるまで自分たちを助けなかったことに憤るみちる。「女や子どもは俺が守る」と言う士郎に、「そんなにオスが偉いの? 男が偉いの?」と激昂し、獣人の楽園だと思っていたアニマシティに失望し、自分自身が獣人になってしまった理由を探し出したら街を出ることを告げるのだった。

 第2話でラビットタウンという新たな街が登場し、そこでは身寄りのない女子どもたちが危険と隣合わせで生きていることが描かれた。獣人の世界では個々の強さがそのまま自分自身を誇示するものとして通用するため、力を持たない弱者である女性や子どもはアニマシティという共同体のパワーバランスにおいて下位に位置することとなる。彼女たちが犯罪に手を染めながら日々を食いつなぎ生きる場所としてラビットタウンが登場したのは、今回の話における重要なテーマを示唆している。

 『BNA』は獣人を通して私たちの生きる人間社会の闇を比喩的に描こうとしている。力のある者が街を支配し、無い者は生きづらさを強いられる。アニマシティには男尊女卑の側面があり、現状ではどうにもできないことも同じように描かれ、本作は第2話時点で非常にメッセージ性のある物語としての頭角を見せ始めてきている。

 主人公・みちるは第2話のラストで、自分が獣人になってしまった理由を突き止めたらすぐにでも街を出ていく意志を見せた。彼女が今の姿になってしまったワケを探る道筋の上に、アニマシティの現状を打破する出来事は起こりえることは本作のキャッチコピー「私は変わる、世界を変える。」からして確かだといえる。

 ともなれば、第2話以降の彼女の動向にますます注目しなけらばならない。対立してしまった士郎とみちるの今後はどうなるのか、みちるの成長と街の変化はどのように並行して描かれるのか。希望を携えて向かった先に思い描いていたものとの違いを見てしまった主人公が、持ち前の前進力とどんな困難にも立ち向かう不屈の精神でひた走るのを今後もしっかりと追いかけていきたい。

■安藤エヌ
日本大学芸術学部文芸学科卒。文芸、音楽、映画など幅広いジャンルで執筆するライター。WEB編集を経て、現在は音楽情報メディアrockin’onなどへの寄稿を行っている。ライターのかたわら、自身での小説創作も手掛ける。

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