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【おとな向け映画ガイド】

ムーミン原作者の意外な半生!『TOVE/トーベ』

ぴあ編集部 坂口英明
21/9/19(日)

イラストレーション:高松啓二

今週末(9/23〜25)に公開される映画は18本。全国100スクリーン以上で拡大公開される作品が『総理の夫』『マイ・ダディ』『MINAMATAーミナマター』『空白』『オアシス:ネブワース1996』『クーリエ:最高機密の運び屋』の6本。中規模公開、ミニシアター系の作品が12本です。今回は、次週10/1に公開される『TOVE/トーベ』をご紹介します。

恋多き人生!
『TOVE/トーベ』

『ムーミン』の原作者、トーベ・ヤンソンの半生を描いた映画です。彼女の母国フィンランドは第二次世界大戦中、ナチス・ドイツと手を結び、ソ連と戦いました。つまり日本と同じ敗戦国です。空襲から逃れる防空壕の中で、息を潜めながら、近所の子どもたちに妖精たちの物語を話して聞かせたのが、ムーミンの最初だったといいます。戦後になって、“画家”として活動をする傍ら、生活費を稼ぐために書いたムーミンの絵物語が評価を得て、やがて国を代表するアーティストになっていきます。

戦中から戦後を女性がいかに生きたか描く一代記となると、まるでNHKの朝のテレビ小説です。『サザエさん』の長谷川町子さんのように、国民の多くがその作品のファン、というところもぴったり。ですが、トーベの人生をNHKで放送するのは、まず難しいだろうな、と思います。理由は、彼女の恋の遍歴。男性との不倫はもとより、女性関係もある奔放さ。実は、そこがこの映画の一番面白いところです。

自分の心を奪った人々を、彼女は、密かにムーミンのキャラクターとして描いています。男性では、まず、政治家でジャーナリストのアトス。妻ある身です。画家として芽が出ずくじけそうになるトーベを力づけ、ムーミンが世に出るアシストもします。彼は、「スナフキン」のモデルといわれています。女性では、舞台演出家のヴィヴィカ。市長の娘で、ムーミンを舞台化した功労者。大柄でセクシー。彼女は夫ある身です。出会ってすぐに惹かれあい、恋に落ちます。そして、生涯を通じてパートナーだったグラフィックアーティストのトゥーリッキ。ムーミンの友だち「トゥーティッキ(おしゃまさん)」は正に彼女。そんな風に、この映画の登場人物とムーミンのキャラクターを重ね合わせるのも楽しいところ。さて、トーベ自身はどのキャラに似ているか……。

ムーミンのパパはとても包容力があって、いつも彼の味方ですが、実際のトーベパパは著名な彫刻家。恐ろしく厳格で、権威主義、ムーミンを執筆するような仕事には断固、拒否反応を示します。このお父さんとの対立は、どこか、朝のテレビ小説的。どんな風に父娘が理解しあっていくのかも見どころです。

今でこそ、同性婚が合法化されているフィンランドですが、1971年までは、同性愛は犯罪とされていました。この映画は、国を代表するアーティスト トーベがそんな状況下で、自分に逆らわず生きた姿を、ありのままに包み隠さず描いています。本国フィンランドでは、昨年の冬に公開され、約2カ月にわたり週間観客動員数ランキングで連続1位を獲得するなどロングラン大ヒットとなりました。トーベの“生き様”は大絶賛で受け入れられたそうです。

【ぴあ水先案内から】

池上彰さん(ジャーナリスト)
「……なによりも自由を愛した女性。そこからムーミンの独特な世界観が生まれたのです……」

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藤原えりみさん(美術ジャーナリスト)
「……アトリエに響く蓄音機によるエディット・ピアフの他、ショパンやベニー・グッドマン、ジョゼフィン・ベーカー等々。音楽に託された心情の深さ……」

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植草信和さん(フリー編集者、元キネマ旬報編集長)
「……おぼろげながら北欧的美少女を想像していたので、トーベの半生を描いた本作『TOVE/トーベ』を観て、腰が抜けるほど驚かされた。……」

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高松啓二さん(イラストレーター)
「……ファンタジー作なのに半径3メートル以内で着想を得ているのは面白いね。」

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