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オーバー・ザ・リミット 新体操の女王マムーンの軌跡

20/6/26(金)

「この負け犬!」「へたくそ! ポンコツ!」「くたばっちまいな!」「クソッタレ!」……本ドキュメンタリーの中でロシア新体操の総監督である醜い老婆が美少女選手に浴びせる罵詈雑言。 明らかに“パワハラ・セクハラ”なので面白いといっては不謹慎の誹りをうけそうだが、ドキュメンタリーでありながらドラマ以上にドラマ的な本作、「超面白かった」というのが正直な感想だ。 新体操王国ロシアの代表選手である20歳のマルガリータ・マムーンは、リオデジャネイロ・オリンピックに向けて総監督やコーチから強烈な指導を受け、日々練習に励んでいる。特に総監督イリーナ・ヴィネルの上述の罵声は、マルガリータを精神的に追い詰めていく。 新体操の美しく華やかな表舞台の裏側に隠された、アスリートの想像を絶する世界に迫るドキュメンタリー映画の傑作だ。 ヒロインのマルガリータ・マムーンは可憐、対する総監督のイリーナ・ヴィネルは猛毒をまき散らす毒舌老女。 ふたりの関係は、まさに『フルメタル・ジャケット』の鬼軍曹と新兵だ。若い人には『セッション』のマイルズ・テラーとJ・K・シモンズといったほうが分かりやすいかもしれない。 不思議なことに、観終わってから敵役のイリーナ・ビヴィネルの人生を知りたくなった。ロシア新体操界の花形スターだった彼女が、どのようにしてアリーナ・カバエワら多くの金メダリストを育て上げた総監督(正確には全ロシア連邦新体操総裁)に上り詰めたのか。そしてなぜ“鬼婆”になったのだろうか。 監督のマルタ・プルスは1987年、ポーランド・ワルシャワ生まれ。ワルシャワ大学で美術史を学んだのち、アンジェイ・ワイダが主宰する映画学校「ワイダ・スクール」のドキュメンタリー・コースを卒業した新進監督。本作を観て、これから大物監督に上り詰めていくと確信した。

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