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The Birthday、爆音のメロディで紡ぎ出す“今を生きているという希望” 新曲が美しく鳴り響いたNHKホール公演レポート

リアルサウンド

20/11/25(水) 12:00

 11月18日、The Birthdayの『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』東京公演がNHKホールで行われた。同公演は、愛知・東京・大阪にて開催されたツアーの2日目にあたり、当日の模様はWOWOWオンデマンドでも生配信されている。The BirthdayがNHKホールでワンマンライブを行うのは初めてだが、ホールならではの演出と迫力の音響によって、高揚感みなぎる素晴らしいライブになったことはまず特筆しておきたい。

 The Birthdayにとって、2020年はバンド結成から15年、フジイケンジ加入から10年を迎えるメモリアルイヤー。本来なら『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』も半年かけて全国24カ所を回る予定だった。しかし、昨今のコロナ禍を受けて大半のスケジュールが延期・中止に。Suchmos、SUPER BEAVER、THE GROOVERSなどアツい対バンも多数控えていただけに、今年ライブがなくなってしまったことは本当に痛手だった。

 だが、もちろんバンドが立ち止まっていたわけではない。7月以降、SNSで新たなレコーディング風景が発信されるようになると、まず10月にはチバユウスケのソロプロジェクト・YUSUKE CHIBA -SNAKE ON THE BEACH-が3rdアルバム『real light real darkness』を発表。前作から1年も経たないうちにソロ作がリリースされるスピードに驚いたが、続けて11月11日にはThe Birthdayのニューシングル『ヒマワリ/オルゴール』が発売された。こうしてリリースが立て続くのも、近年のチバの曲作りの多彩さを物語っているし、「新鮮なうちにレコードにして聴いてもらえるなら最高じゃん」(引用:『MUSICA』2019年4月号)と語っていた通り、良いものはできたてのうちに届けたいという想いも年々強まっているのかもしれない。『ヒマワリ/オルゴール』が初の両A面シングルになったのも、バンドの今を象徴するのに欠かせない2曲が同時にでき上がり、どちらも同じくらい新鮮なうちに聴いてほしいと思えたからだろう。

 バンド全体の音圧でアグレッシブに聴かせ、グランジやオルタナを彷彿とさせる「ヒマワリ」。どっしり響く歌とメロディに、ニューウェイブ調のギターが絡んでいく「オルゴール」。一聴すると両者は対照的だが、群衆の中で“己”と向き合うような前者と、静寂の中から新しい音が生まれていく後者はどこか似ている、というよりまさに“2つで1つ”。空虚の奥にある真理を、曇った世界に確かに存在する光を、永遠ではなく今この瞬間を。時に不確かなものに惑わされながらも、一点をしっかり見つめているからこそチバの歌詞には揺るぎないロマンが宿るし、今を生きているという強いリアリティも内包される。だからこそ、この2曲が独特の憂いを帯びているのは時代の必然なのかもしれない。『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』では、「ヒマワリ」「オルゴール」をどう聴かせるかが大きな見どころになる。

 そんなことを会場で考えていたら、ライブはいきなり「ヒマワリ」からスタート。イントロのリフから4人の音が一気に爆発する開始10秒ーーホールいっぱいに響きわたる爆音に、身体中の細胞一つひとつが覚醒する。そこから2曲目「青空」への流れが最高だった。ヒマワリは折れ、夏は終わり……それでも〈未来を見たくて〉空を見上げる「ヒマワリ」から、〈お前の未来は/きっと青空だって/言ってやるよ〉と歌う「青空」へ。そう、手放しなことは言わないけど、未来を信じて一歩一歩前進し続けてきたからこそ歌える歌があるのだ。〈絶望に 絶望している/ヒマなんて 俺にはねえよ〉という歌詞は、コロナ禍でも歩みを止めない彼らの……いや、ロックミュージシャンとしてのキャリアを「肯定のエネルギー」へと転換していった、The Birthdayの歴史そのものを象徴している。世界がどんどん沈んでいくように感じられるからこそ、彼らの音楽を聴く意味を改めて思い出させてくれた。

 チバからの「久しぶり!」の挨拶にオーディエンスが盛大な拍手で応えると、クハラカズユキのドラムから始まる「SOMBREROSE」へ。さらに「DOOR」「ROCK YOUR ANIMAL」と畳み掛けた。ニューウェイブ、ユニゾンといった新しい要素でグルービーに魅せていったアルバム『BLOOD AND LOVE CIRCUS』からの3曲は、ニューシングルに漂う今のモードとも相性がよく、久しぶりながら納得の選曲だ。特に〈そのまま空飛んだ 代々木上空〉(「DOOR」)の叫びは、NHKホールで盛り上がらないわけがない。続く「木枯らし6号」も、「もうすっかり秋だな〜」とボソッと呟いたチバの言葉通り、今の季節にぴったりの哀愁を漂わせながら場内に響いた。

 前半のハイライトとなったのが、1stアルバム『Rollers Romantics』から披露された「春雷」。10分にわたってバンドの演奏を堪能できる名曲で、ブルージーなフジイのギターソロに酔いしれた。次の「プレスファクトリー」もそうだが、語るような言葉選びで淡々と風景を歌い上げるこうした曲は、最近のライブではむしろ新鮮な輝きを放つものになってきているかもしれない。演奏から滲み出る“渋み”も文句なしにカッコいい。さらにステージ後方に「The Birthday」のスカルロゴが入ったバックドロップが降りてくると、「24時」で後半に向けて一気にブーストをかける。歯切れのよいフジイのギターと、うねるヒライハルキのベースの絡み合いが抜群で、続く「Red Eye」でもセッションアレンジや各々のソロパートが火を吹く。これがNHKホールの音響で聴けるのはなんとも幸せだ。

 そして、まさか「BITCH LOVELY」が聴けるとは思わなかった。ゆったり聴かせるレゲエ調の前半と、転調して一気に駆け抜けていく後半のコントラストがとにかく気持ちいい。近年だと例えば、アグレッシブなハードコアパンクからメロディアスな転調を見せた「DISKO」にも顕著だが、前半から後半へ大胆に転調し、しかもそれを自然な流れとして聴かせるソングライティングがバンドの十八番になっている。すなわち、単にジャンルとして取り入れるだけでなく、敬愛と経験によってオリジナルなミクスチャーを作ることができるということであり、「BITCH LOVELY」にもロンドンパンク好きなチバらしいレゲエ愛がたっぷり込められている。この曲が体現する、“今この瞬間を生きているという実感”こそ、我々がロックを聴く理由、ライブに行く理由じゃなかろうか。根拠はないけど希望はある、だって今生きてるんだからーー続く「1977」「OH BABY!」「COME TOGETHER」もそんな想いを体現するような楽曲たちだ。

 あっという間に時間はすぎ、いよいよ本編の締めくくり「オルゴール」である。暗転してキラキラとミラーボールが輝き出す演出は幻想的で、本当に止まった時間のなかで聴いているかのようだった。ハルキによる全力のサビのコーラスもグッときた。永遠だと思っていたものも実は脆く、オルゴールの音も止まってしまったーーどうしても今の時代の空気とリンクせざるを得ないが、最後の〈魔法のオルゴール鳴らした〉にはスッと胸をなでおろしたような安心感を覚える。新しいメロディが紡ぎ出される限り、希望の光は絶えないのだ。演出含め、そのことを身をもって体感できたのがよかった。そしてアンコールでは定番の「くそったれの世界」から「声」へ続く。客席から声を届けることはできないけど、〈声 聞こえるか 声〉〈声 届け 声〉のサビをその場にいた全員が心のなかで大合唱していたはず。最後は「なぜか今日は」で一気にフィナーレへ。今だからこそのメッセージと音楽愛に満ちた、素晴らしいライブだった。

 ライブを生業にするロックバンドにとっては依然として厳しい情勢が続くが、だからこそThe Birthdayのようなバンドが歌ってきたことの意味がますます浮き彫りになる。世界がどん底に堕ちたのは今に始まったことじゃなく、昔からそうだった。そんななかでもわずかな光を頼りに希望を紡いできたのがThe Birthdayの歴史であり、30年以上バンドを続けているロックミュージシャンたちに通ずることなのかもしれない。『ヒマワリ/オルゴール』から始まったThe Birthdayの新たなタームは、来年以降どんなアルバムに着地するのだろうか。そんな未来に想いを馳せたくなった『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』。クリスマスの夜にはこの日のライブの模様がWOWOWで放送される。素晴らしい一夜を、ぜひもう一度体感してほしい。

■セットリスト
The Birthday『GLITTER SMOKING FLOWERS TOUR 2020』
2020年11月18日(水)@NHKホール

1. ヒマワリ
2. 青空
3. KISS ME MAGGIE
4. SOMBREROSE
5. DOOR
6. ROCK YOUR ANIMAL
7. 木枯らし6号
8. 春雷
9. プレスファクトリー
10. 24時
11. Red Eye
12. BITCH LOVELY
13. 1977
14. OH BABY!
15. COME TOGETHER
16. オルゴール
-encore-
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