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高橋一生の『岸辺露伴は動かない』をまだまだ観たい! 驚くべきアレンジを成立させた「D.N.A」

リアルサウンド

20/12/31(木) 12:30

 高橋一生が主演を務める『岸辺露伴は動かない』(NHK総合)が、12月30日に3夜連続放送の幕を下ろした。

 最終夜となる第3話「D.N.A」は、原作のストーリーを活かしながら、大幅に構成とオリジナル要素を加えた作品に仕上がっている。山岸由花子は出てこないし、相手の心にズケズケと入り込む露伴(高橋一生)のセンシティブな発言はカット。真央(北平妃璃愛)のシッポや濡れた足の歩き方、山形を舞台にした後半の物語も存在していない。

 けれど、そこをカバーするのが、第1話より物語を繋ぐ縦軸として引き続き登場している泉京香(飯豊まりえ)と、ほぼオリジナルキャラクターと言っていい平井太郎(中村倫也)だ。ここは、初めて『岸辺露伴は動かない』を観る人にもより分かりやすく、連続短編としての長所も活かした構成になっている部分だ(「スタンド」という言葉を使わず、「能力」「ギフト」に言い換えているのも原作を知らない視聴者への配慮)。

 ホラーサスペンス的要素が強く出た第1話「富豪村」、第2話「くしゃがら」に対して、第3話「D.N.A」は年末の締め括りにぴったりなハートウォーミングな作品となった。6年前の交通事故で彼(奥野瑛太)を亡くした片平真依(瀧内公美)とその忘れ形見でもある娘の真央。太郎もまた交通事故に遭い、その亡くなった彼から臓器提供を受けていた。3人はやがて導かれるように惹かれ合う。彼らを繋ぐのは遺伝子に記憶された魂。亡くなった彼の口癖だった「きっといいヤツ」を真央と太郎が合言葉のように言い合うラストは、原作の物語を見事に昇華させた感動的なシーンだ。

 中村倫也が演じる太郎もハマり役であったように思う。都会的な写真を撮るバキバキのビジネスマンだった以前から、事故に遭い記憶を失ってからは京香の言う“ふんわり彼氏”に。まるで『この恋あたためますか』(TBS系)の浅羽拓実と朝ドラ『半分、青い。』(NHK総合)の朝井正人を行ったり来たりするような、中村倫也への当て書きとも言える役柄。「はちにんこ」と逆さ言葉で近寄ってくる真央の頭を優しく撫でられるのは、中村倫也が最適だっただろう。

 また、多くのジョジョファンを驚かせたのは、露伴のヘブンズ・ドアーの能力に変化が見られたことだ。第2話までは相手の顔面に本のページを置く描写であったが、第3話からは対象ごと本にしてしまう能力に変わった。これはまだ幼い子役の顔に本を置くことができなかったり……という考えもチラつくが、ヘブンズ・ドアーが成長したが正しい、のだろう。

 第1話の冒頭、露伴は「『ピンクダークの少年』は、先月第8部の連載が始まったばかり」と発言している。これは荒木飛呂彦が現在連載中の『ジョジョリオン』に掛けたセリフでもあるが、それほどまでに年月が経っていることを示す言葉でもある。露伴が敬愛する広瀬康一のスタンド・エコーズがACT3までに変化したように、『ジョジョの奇妙な冒険』のキャラクターは成長する。『岸辺露伴は動かない』のエピソード「密漁海岸」で露伴が、たこにヘブンズ・ドアーを使った例があるように、今回の成長も何らおかしくはないだろう。何よりも、真依と真央、そして太郎が飛び出す絵本になって手を繋ぐ演出へと導く結果になったのだから。

 第2話での「噴上探偵事務所」のチラシや「Joogle」の検索結果に出てきた「マニッシュ君」、志士十五(森山未來)が食べた「Tonio pizza(トニオ・ピッツア)」など、ジョジョ愛に溢れた小ネタは第3話にも。3つのサイコロを振りゾロ目を2回連続出す露伴に、泉が「『イカサマ』してません?」というシーンは、東方仗助とのチンチロリンを思わせるシーン。サイコロを握り耳元で強く揺らす動作は、宇宙人の支倉未起隆がサイコロに変身していないかゲロを吐かせようとする大人気ない行為である。また、真央が轢かれそうになる車が「杜」と舞台の杜王町のナンバープレートにもなっていた。

 言うまでもなく、今回の『岸辺露伴は動かない』の実写化は大成功であった。動きや描写、ビジュアル、言い回し、全てを露伴として自身に落とし込み、ジョジョ愛を持って演技にぶつけた高橋一生を筆頭に、デコボコだけどどこか気のあった露伴とのコンビ役を演じた飯豊まりえ、怪演で視聴者を驚かせた森山未來、“ふんわり彼氏”として優しいムードを放った中村倫也。生粋のジョジョファンもシビれる脚本を手がけた小林靖子に、細かな演出を施した渡辺一貴を中心とした製作陣。全てに敬意を表したい。この3日間で、「今まで『ジョジョ』は読んだことがなかったけど興味を持った」というようなツイートを数え切れないほど見てきた。「くしゃがら」の袋とじが頭にできるように……ではないけれど、伝播していった好奇心の種から多くの人が荒木飛呂彦作品に触れるのかと思うとワクワクしてならない(連載中の『ジョジョリオン』は今がクライマックスです)。

 そして、飯豊まりえがツイートしている「続編、、希望!!!」は多くの視聴者の願いでもあろう。車に轢かれそうになる真央を間一髪で助けた露伴が口にする「まったく……僕が鍛えてる漫画家でよかったよ」というセリフは、『岸辺露伴は動かない』のエピソード「ザ・ラン」を彷彿とさせる言葉でもある。小林靖子はインタビューで「六壁坂」を実写化したいと教えてくれた(参考:『岸辺露伴は動かない』脚本・小林靖子が大事にした荒木飛呂彦イズム 「台詞に“ッ”を入れちゃう」)。またこのキャスト、製作陣が集まった『岸辺露伴は動かない』は「きっといいヤツ」なのだから。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
『岸辺露伴は動かない』
NHK総合にて、2021年1月4日(月)〜6日(水)再放送
出演:高橋一生、飯豊まりえ
第1話ゲスト:柴崎楓雅
第2話ゲスト:森山未來
第3話ゲスト:瀧内公美、中村倫也
原作:荒木飛呂彦『岸辺露伴は動かない』
小説:北國ばらっど『岸辺露伴は叫ばない 短編小説集』所収「くしゃがら」
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
演出:渡辺一貴
撮影:山本周平
照明:鳥内宏二
録音:高木創
美術:磯貝さやか
編集:鈴木翔
人物デザイン監修:柘植伊佐夫
制作統括:鈴木貴靖、土橋圭介、平賀大介
制 作:NHK エンタープライズ
制作・著作:NHK、ピクス
(c)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
(c)NHK・PICS

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