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BTS、新曲「Dynamite」ポップス的構成と変わらないメッセージを分析 全歌詞英語であるシンプルな理由も

リアルサウンド

20/8/24(月) 6:00

 8月21日、BTSが新曲「Dynamite」を全世界同時リリースした。リリース前の記者会見によると、当初からリリース予定があったわけではないがCOVID-19禍で数々の計画の変更があり、世の中とファンを元気づけるためにリリースすることになったとのことだ。

BTS (방탄소년단) ‘Dynamite’ Official MV

 今回の「Dynamite」は、BTSとしては珍しくカッティングギターの音が印象的な軽快なディスコファンク調。K-POPのシグネチャーともいえるドラマチックで風変わりな転調やダンスブレイクはないが、メロディは同じコードの繰り返しで曲の大部分では中毒性のあるリズムが延々と繰り返され、終盤に向かって盛り上がっていくという構成は、近年の欧米のポップミュージックではよく見られる構成だ。この曲の前にリリースされた日本オリジナル曲「Stay Gold」は、メインであるサビを目立たせるためのコードワークが鉄板であると言われるJ-POPソングのお手本のような楽曲だった。若干「洋楽っぽい」構成に寄っていた「ON」の前の「Boy With Luv」、「Stay Gold」と「Dynamite」を並べて聴くだけでも、K-POP/J-POP/POPの違いが明確にわかると言ってもいいかもしれない。この様な曲ごとの大胆なパフォーマンスの変化は、まさに彼らが「アイドル」であるからこそ成り立つことであり、「アイドル」だからこそ表現できる領域なのではないだろうか。

BTS (방탄소년단) ‘작은 것들을 위한 시 (Boy With Luv) (feat. Halsey)’ Official MV
BTS (방탄소년단) ‘Stay Gold’ Official MV

 「アイドル」とはパフォーマンスする主体であるメンバー自体が好かれ、支持されることが本質の存在であり、「アイドルファン」は基本的に純粋な楽曲やパフォーマンス単体そのものというより、メンバーを通して表現される曲やパフォーマンスこそを好むのだと考えると、実際は「言語」や「文化」の違いが最も障壁となりにくいジャンルであるはずだ。また、主に自分の言いたい話を作品に込めるということが多くの部分を占めるであろう「アーティスト」との違いのひとつに、大衆やファンの求める・好むであろう姿を表現することも「アイドル」の本分のひとつであるという部分がある。いわばF1におけるレーシングドライバーのような「純パフォーマー」としての側面が大きいのがアイドルであり、K-POPアーティストの多くが即ちアイドルであるというのはそういうことだ。パフォーマーが主体なので、BTSがパフォーマンスすればそれがBTSの音楽になり、楽曲の一貫性やジャンル的正統性は関係なく、あらゆるジャンルの音楽や言語でパフォーマンスして良いという自由さはアイドルの特権でもあるだろう。

 今回の楽曲の作詞作曲を担当したのはデビッド・スチュワートとジェシカ・アゴンバーで、Big Hitの制作陣やメンバーは参加しておらず、全歌詞英語だ。BTSのアメリカでのレコード会社はソニーミュージック系列のコロムビア。2人のソングライターは同じくソニー系列のソニーATVミュージックパブリッシングに所属している。K-POPや「メンバーが作詞作曲に参加」という点をアピールポイントにしているグループの場合、特に日本での活動における「日本語バージョン」「日本語オリジナル曲」等、「なぜ日本語(韓国語以外)で歌うのか?」という疑問はしばしば提起されてきた。筆者もつい先日「外国語で歌うK-POP」についての記事を執筆したばかりだが、その中で「韓国語以外で歌うことは日本に限らず他国でも普通にある(希求のある国ではその国の言葉で歌っている)」「K-POPの目指すところは何語で何人が歌ってもK-POPというジャンルを確立することなのではないか」と書いている。BTSの「Dynamite」はまさにこの通りのやり方であり、人気のある日本では日本の制作陣の作ったJ-POPらしい曲を日本語で歌い、同じく人気のあるアメリカでアメリカの制作陣が作った英語の歌を歌うというシンプルなことのように思える。

 「Dynamite」の歌詞を見てみると、

I’m in the stars tonight/So watch me bring the fire and set the night alight/Shining through the city with a little funk and soul/So I’mma light it up like dynamite
「今夜僕は星々の中にいるから/僕が火花で夜を照らすのを見ていてよ/ささやかなファンクとソウルでこの街を照らすよ/だから照らすよ(盛り上げるよ)ダイナマイトみたいに」

 という部分がある。“光”や“癒し”というテーマは、韓国語楽曲の「Mikrokosmos」や日本語楽曲の「Lights」など、過去さまざまな曲で繰り返し出てきたフレーズだ(参考)。「星の光」「街の灯り」「暗闇の中の光」「ダイナマイト」など、表現の仕方や言語は違っても、コアにあるBTSが伝えたいメッセージそのものに変わりはないということではないだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

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