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戸田恵梨香、ここまでの『スカーレット』を振り返る 「愛情が本物だからこそしんどい」

リアルサウンド

20/2/1(土) 11:00

 毎週月曜日から土曜日まで放送されているNHKの連続テレビ小説『スカーレット』。主人公・喜美子を演じる戸田恵梨香より、コメントが寄せられた。

 本作は、焼き物の里・信楽を舞台に、女性陶芸家・川原喜美子が、モノを作り出す情熱と喜びを糧に、失敗や挫折にめげずに生きていく波乱万丈の物語。

 本日放送までの第17週「涙のち晴れ」では、喜美子と夫・八郎(松下洸平)の考えの違いが浮き彫りになり、多額の資金を費やした3度目の穴窯も失敗に終わった。三津(黒島結菜)が登場した第14週から第17週までの激動の展開を、来週からの後半戦を前に戸田が振り返った。

■戸田恵梨香(川原喜美子役)コメント
●2019年の放送で印象的だったシーン

たくさんあるので選ぶのが難しいですね……。でも、フカ先生(深野心仙役・イッセー尾形)とのシーンは忘れられないぐらい、自分にとって宝物です。一人芝居をしていらっしゃるイッセー尾形さんのお芝居を目の前で観ることができるなんて、たったひとりの観客みたいなものなので、それを味わえたのは本当にこの上ない、ぜいたくなことだなと思いました。喜美子もそうですけれど、私自身もフカ先生についてくという確固たるものができて、フカ先生がいなくなるのはとてもさみしかったです。ずっとフカ先生との時間が続けばいいのになぁと、願わずにはいられませんでした。

●第14週「新しい風が吹いて」を振り返って

(信作(林遣都)に「いまの喜美子は喜美子じゃない」と言われて)喜美子自身、「ほんとうにやりたいことをやれていない」という気持ちはあったと思います。でもその中に、ハチさんのことをただひたすら支えたい、フォローしたいという思いがから回ってしまうのが14週でした。ハチさんもそんな喜美子の思いを受け止めているんだけれど、それもハチさんにとっては苦しい……。ふたりの思いがどんどんと絡まっていく様が、演じていてけっこう苦しかったです。喜美子と八郎は、いつも“ふたりとも間違ってない”というのが、しんどいんです。サニーの開店に際してコーヒー茶わんをつくりましたが(第12 週)、そのときに代金をもらうかもらわないかで考えが食い違ったときも、ふたりとも正しいんですよね。どちらかが間違っていたら楽だと思うんですけれど……。

信作が「もうちょっと、おまえがやりたいことをやってもいいんちゃうか」と背中を押してくれるのは、信作だからこそできることですし、信作だからこそ、喜美子の心にぐさっと刺さるんですよね。だけど喜美子は、「まずハチさんが」って考えてしまう。喜美子と八郎の愛情が本物だからこそ、しんどいことってあるんだなと、この作品を通して知りました。

●第15週「優しさが交差して」を振り返って

15週は喜美子が絵付け小皿の大量注文を受け、久しぶりにものづくりに対して燃える気持ちを思い出して没頭していくので、「ああ、喜美子のこの姿がみたかった」と個人的に思った週でした。ハチさんのことも支えたい、でも同時に、絵付け小皿もがんばりたいっていう2つの欲が同時に生まれて、どうバランスをとればいいのか喜美子はわからなかったけど、ハチさんが背中を押してくれました。だから、ハチさんのことは三津(黒島結菜)にまかせる、と喜美子が決断できたのだと思います。ただそれをきっかけに三津の八郎に対する気持ちがふくれあがっていくので、よかったのかどうかはちょっとわからないですけれど、喜美子と八郎がそれぞれ陶芸家として大きく一歩進んだところなので、そこはよかったと思いました。

●三津(黒島結菜)に対しての喜美子の感情はどのように感じたか

喜美子は、「ハチさんを信じている」という気持ちです。いままで積み上げてきたハチさんとの関係、愛情や絆というものに自信があるから、「ここは口出ししなくてもいい」と判断する。それは「妻の強さ」かなあと思いました。三津の言動って 「ハチさんのこと好きなん!?」と喜美子からつっこんでもいいくらいだったのですが、三津自身もわざとじゃないし、喜美子も自信があるから、つっこめないんですよね。陶芸の師匠と弟子としても、女の意地っていうのがあるのかなと思いました。三津がもっと恋愛の駆け引きを仕掛けてくる子だったら、ハチさんがもうクビにしているはず。それでも、喜美子がハチさんに新しい風を吹かせたいと考えて、三津を弟子入りさせました。最初は、ハチさんも「いや弟子はいらない」と言っていたけれど、ちょこちょこっと三津から出るヒントになるような言葉をもらって、実際に作品をつくっていけるようになるから、やっぱり三津はふたりにとっていなくちゃいけない存在だったんだと思うんです。

●第16週「熱くなる瞬間」を振り返って

この三人(喜美子、照子(大島優子)、信作)がそろうと、やっぱりこれこれ!という感覚なるんです。これが欲しかった!という感じ。一番落ち着くし、楽しいし、喜美子の人生の真ん中にあるのがこのふたりなんだなあと思いました。この3人で集まったとたんに、完全にタイムスリップできるんです。こういう経験って私自身はなかなかできないので、子どものころから過ごしている人たちって強いんだなと思いました。

●第17週「涙のち晴れ」を振り返って

喜美子は、ハチさんや家族みんなが、やりたいことをやってみたいという喜美子の気持ちを後押ししてくれることにありがたさを感じたと思います。それと同時に、失敗してなるものかという責任感もむくむくっとわきあがってきたんです。それなのに、何度も失敗が続きました。穴窯をつくる前は、ちゃんと売れるものをつくらなきゃいけないと話していた喜美子が、「売れなくてもいい、自分のつくりたいものをつくる」と言いだして……考え方も発言もまったく変わってしまいます。今まではお金を大事に、家族のために一生懸命やってきた人が、家族がだめになってもやり続けるっていう狂気に似た熱意を持ちはじめるんです。ほんとうに自分がやりたいことと出会ったときって、いままで自分が積み上げてきたものもなかったことになるくらい、そっちに突き進んでしまうんだなと。天才になる人の片りんをみた気がしました。17週あたりになると、喜美子はなんとしても自然釉というものを完成させたいという気持ちが強くなるんです。窯だきに使うお金について、ハチさんが「武志のためのお金やろ」というのも正論なのですが、喜美子には武志のお金を使って申し訳ないという気持ちはひとつもないんです。ハチさんと離れてからは、ハチさんと離れたことに対して、武志に申し訳ないという気持ちを持つけれど、お金に対してはないんです。恐怖と責任を負っているし、絶対に成功させてやる、成功するまではやめたらいけない、それこそすべてが水の泡になる、と考えているのだと思いました。

喜美子が穴窯を作ると決め、成功を目指し没入していくころから、急に喜美子の人が変わったようになるんです。第17週100 回(1月30日)の放送で、照子が喜美子のもとにきて、「目え、覚ませ」と言ったとき、喜美子は「ひとりもええなあ」と返しました。このセリフが、17週まで演じてきた中で一番印象に残ったセリフです。一番衝撃的で、台本を読んだときに涙がとまりませんでした。「ひとりもええなあ」というのは、今までの自分の人生を全部否定するような言葉じゃないですか。今まで、ずっと誰かのために生きてきて、それが喜美子の幸せでもあって、心の支えでもあったのに……。こんな重い言葉があるのだと、鳥肌がたちました。

(リアルサウンド編集部)

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