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ぴあ

いま、最高の一本に出会える

最新SGチャートに見る”紅白”効果 演歌界の世代交代を後押しか

リアルサウンド

14/1/16(木) 14:30

2014年01月06日~2014年01月12日のCDシングル週間ランキング

1位:鞆の浦慕情(岩佐美咲)
2位:リライト(NIGHTMARE)
3位:TVアニメ「黒子のバスケ」キャラクターソング DUST SERIES VOL.7(ULTIMATE ZONE)(火神大我(小野友樹),青峰大輝(諏訪部順一))
4位:101回目の呪い(ゴールデンボンバー)
5位:TVアニメ「黒子のバスケ」キャラクターソング DUET SERIES VOL.6(コートの上でこれからも)(黒子テツヤ(小野賢章),緑間真太郎(小野大輔))
6位:カモネギックス(NMB48)
7位:棚からぼたもち(舞祭組)
8位:南部蝉しぐれ(福田こうへい)
9位:Ride With Me(Hey! Say! JUMP)
10位:バレッタ(乃木坂46)

 1月20日付けのオリコン週間総合シングルランキングで首位を記録したのは、AKB48の演歌歌手、岩佐美咲のシングル『鞆の浦慕情』。2位にはメジャーデビュー10周年を迎えた大物V系バンドNIGHTMAREがつけ、3位と5位にはアニメ『黒子のバスケ』のキャラクターソングという、なかなかバラエティに富んだ顔ぶれである。

 ということで、上記の顔ぶれからはなかなか見えてこないのだが、今回の「チャート一刀両断」のコーナーでは、まずは2014年1月のオリコンチャートの動きから「紅白歌合戦の真の勝者」をマジメに分析してみようと思う。

 第一候補はゴールデンボンバーだ。1月1日発売のシングル『101回目の呪い』は初週15.8万枚を売り上げ、インディーズ初の連続1位を記録。2週目となる今週も4位につけている。前作『Dance My Generation』の発売日も2013年の1月1日ということで、「紅白で『女々しくて』披露→元旦に新曲リリース」という流れが2年目にしてすっかり定着したことになる。

 第二候補が岩佐美咲だ。大島優子のサプライズ卒業発表で波紋を呼んだAKB48だが、その紅白歌合戦の出演時間は“本体”だけではない。近年の紅白歌合戦では女性アイドルグループが演歌歌手のバックで踊る演出が定着している。いわばアイドルと演歌のイメージ的な距離感が一年のうちで最も近くなるのが年末というわけで、その余韻が残っているうちに「AKB48所属の演歌歌手」による首位獲得は見事な戦略と言っていい。

 戦略だけではない。岩佐美咲は氷川きよしも在籍する長良プロダクションに所属し、レーベルは演歌にも強い徳間ジャパンコミュニケーションズ。歌唱力も本格派だ。(参照:AKB48岩佐美咲のヒットで演歌ブーム到来? 若手が台頭する最新シーン事情)。もちろん“本体”の48グループも、AKB48『恋するフォーチュンクッキー』、NMB48『カモネギックス』、SKE48『賛成カワイイ!』は1月に軒並み順位を上げているのだが、演歌マーケットの手堅さを考えると、10年後にはひょっとしたら彼女が「AKB48卒業後最大の勝ち組」になっている可能性すらある。

 ただ、ゴールデンボンバーやAKB48はそもそも紅白歌合戦に関係なくCDセールスの数字を持っているグループだ。そういう意味で考えると、最も「紅白歌合戦の真の勝者」と呼ぶに相応しいのは、やはり演歌歌手の福田こうへいだろう。2012年10月24日にリリースされた『南部蝉しぐれ』は、1月13日付けチャートで9位に、1月20日付けチャートで8位に上昇している。もともと2013年の演歌界最大のロングヒットを記録したこのデビュー曲だが、紅白歌合戦への出演をきっかけにセールスの規模はさらに拡大。この先もコンスタントに売れ続けていくことが予想できる。北島三郎の引退もあわせて考えると、福田こうへいと岩佐美咲のヒットは「演歌界の世代交代」を象徴していると言えるかもしれない。

 さて。基本的にはこのコーナーではオリコンチャートの結果を元に分析しているので普段は配信チャートには触れないのだが、ちょっと驚くべき事態が生じているので、ここからは別の話題。

 「紅白歌合戦」の効果がよりビビッドに現れるのは、わざわざCDショップに足を運んで買いにいかなければならないパッケージよりもテレビを観て気になったらすぐにダウンロード購入できる配信チャートの方だろう――という推測のもと、1月上旬の各種配信チャートをチェックしてみたところ、まったく予想していなかった結果になっていたのだ。

 もちろん、Linked Horizon「紅蓮の弓矢」やAKB48「恋するフォーチュンクッキー」、AAA「恋音と雨空」やゆず「雨のち晴レルヤ」など、上位には紅白歌合戦で披露された楽曲が並んでいた。が、各種配信チャートで首位の座を守り続けたのは、紅白歌合戦とは全く関係のない、どころかオリコンシングルチャートにも登場したことのない曲だったのである。

 1月上旬の各種配信チャートで軒並み1位となっていたのは、SPICY CHOCOLATE 「ずっと feat.HAN-KUN & TEE」。12月から1月にかけて、この曲は巨大なヒットを記録している。12月中旬にはiTUNESやAMAZON MP3なども含め「配信チャート18冠」という偉業も成し遂げた。年末から年明けにかけてもヒットは続き、つい先日、レコチョクではスマートフォン音楽配信サービス開始以来史上初という「シングル総合」「着うた®ランキング」の5週連続同時1位を達成している。

 オリジナル・ラブの名曲「接吻」の雰囲気を強烈に彷彿とさせるこの曲は、2013年9月18日にリリースされたアルバム『渋谷 RAGGA SWEET COLLECTION 3』の収録曲。ヒットのきっかけは12月上旬に「NTTドコモ ネットワークCMソング」に起用されたこと。サビの歌詞は「会いたい会えないのに 愛してやまない」。つまりこれ、完璧なる「着うた系ポップス」の記録的ヒットなわけである。

 SPICY CHOCOLATEは90年代から地道に活動してきたジャパニーズ・レゲエ・シーンの重鎮、DJ CONTROLERことKATSUYUKI率いるレゲエサウンドクルー。もともとはジャマイカと日本を行き来していたようなキャリアの持ち主の彼だが、2011年から青山テルマや湘南乃風などをゲストに「着うた世代に刺さる」ラブソングを集めた同シリーズのリリースを開始している。この「ずっと feat.HAN-KUN & TEE」も収録される2月12日リリースのベスト盤『BEST OF 渋谷 RAGGA SWEET COLLECTION』も、おそらくかなりのヒットを記録するだろう。

 先日、この「チャート一刀両断」のコーナーでも執筆を担当しているさやわか氏のトークイベント『さやわか式☆現代文化論 第2回』で、宇野維正氏と共に参加し「着うた系ポップスは完全に下火になった」と断言した筆者であるが(参照:今、ボカロやアイドルをどう語るべきか 音楽ジャーナリスト3人が2013年のシーンを振り返る)、どうやら実情は全く違っていたようだ。

 猛省したい。

■柴 那典
1976年神奈川県生まれ。ライター、編集者。音楽ジャーナリスト。出版社ロッキング・オンを経て独立。ブログ「日々の音色とことば:」Twitter

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