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MUCCのパフォーマンスから感じた、配信ライブの新たな可能性 メンバー4人の絆も垣間見えた公演に

リアルサウンド

20/6/27(土) 10:00

 6月21日、『~Fight against COVID-19 #2~「惡-THE BROKEN RESUSCITATION」』と題したMUCCの無観客有料配信ライブが行なわれた。私はこのライブが決して“生ライブの代替品”ではなく、配信という形でしか実現できない、完成されたライブだったと感じている。

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 この日MUCCは、当初ぴあアリーナMMでのワンマンライヴを開催する予定だったが、コロナウイルスの影響により、急遽生配信ライヴへの変更を決断した。今年で結成23年目を迎えたMUCCだが、配信ライブはこれが初めて。その上、準備に使える時間も恐らく十分ではなかったはずだ。にもかかわらず、クオリティの高さ・熱量、共に圧倒的なものを見せてくれた。配信直後のTwitterでは「#MUCC無観客ライブ」のタグを使った絶賛の声が次々に寄せられ、一時はトレンド入りを果たした。有料配信のため、具体的な演出内容には言及しないが、本ライブを観ての所感を記しておきたい。

 ライブ序盤から見せつけられたのは、生配信とは思えないクオリティの高さだ。カメラワーク、照明、映像、音質など、全てが妥協なしのプロの技で完璧に作りこまれている。メンバーのみならず、彼らを支えるスタッフたちの並々ならぬ熱意が伝わってくる出来栄えであった。さらに、無観客ならではの自由な会場の使い方や小道具による演出、配信ライブならではの映像技術など、普段のライブでは観られない、新たなMUCCのステージを見せてくれた。配信後には、リーダー兼ギタリストのミヤが自身のInstagramへ投稿した「チケット代金から考えると、カメラの台数、演出、正直全てがオーバースペックでした。でも今後につなげるため、強気で行きました」というメッセージからも、相当気合いの入ったステージであったことがわかる。

 配信ライブにおける難点の一つに、現場の熱量を画面越しに伝える難しさがあると思う。たとえばバンド側が「行けんのか!」と煽ったとしても、パソコンやスマホの向こうにいる観客たちへ生のライヴと同じように熱量を伝えるのは難しく、そこで温度差が生まれてしまう。しかしこのライヴでは、圧倒的なクオリティや新鮮な演出が観ている者を画面に没入させ、メンバーと同じ速度で温度を高めてくれた。そのため、生のライブに近い熱量を感じられたのだ。ゆえに彼らは、生のライブともライブDVDともMVとも違う、配信ライブの“新たな正解の形”を生み出したと言えるだろう。

 本公演のセットリストの主体となったのは、最新アルバム『惡』。MUCC通算15枚目となるこのアルバムは、オリコンデイリーチャートで1位、Billboard JAPAN総合アルバムチャート“HOT ALBUMS”初登場で9位という輝かしい順位を記録し、メンバー自身も「最高傑作」と自負している作品である。私はこの作品を、彼らのリアルな感情や生きざまが強く伝わってくるアルバムだと感じており、だからこそライヴではどんな表情をして演奏するのかが見たかった。その点で言えば、この日は配信用なのか通常よりもライティングが明るく、メンバーの表情もはっきりと見えたため、より楽曲に入り込むことができた。

 ライブのラストは、円陣を組む、手を繋いでカーテンコールを行なうなど、メンバー4人の絆が垣間見える場面もあったが、ミヤ曰く「その場の流れで自然にそうなりました」(引用:Twitter)とのこと。誤解を恐れずに言えば、MUCCは決して「仲の良いバンド」ではない。長きにわたる活動の中では、より良い音楽を求めるがゆえに生じた軋轢に関して、過去インタビューで語ったこともあった。そんな彼らが衝動的にメンバーと手を取り合ったという事実こそが、このライブの成功を物語る何よりの証拠だと思うのだ。

 MUCCは常に進化してきたバンドだ。それは、新曲をリリースする度にテイストが変わる多彩な音楽性や、アウェイな対バンやイベントにも果敢に飛び込んできた歴史をからわかる。常に挑戦的な彼らだからこそ、この危機的状況を逆手に取り、さまざまなアイデアや技術を駆使することで、新たな配信ライブの可能性を広げることができたのだろう。年末に決まった日本武道館でのワンマンライブでは、さらに進化した彼らのパフォーマンスが見られるに違いない。(南明歩)

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