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いま、最高の一本に出会える

乃木坂46、あいみょん、chelmico、チコハニ……“女子の本音”が感じられる新作

リアルサウンド

18/8/7(火) 8:00

 ポップスのキモはやはり“誰がどんなことを歌うか?”ということに尽きる、と思う。アーティストのキャラクター、音楽性、活動状況、パブリックイメージを総合的に捉え、もっともふさわしい時期にふさわしい歌を提示する。これこそが広く聴かれるポップスの前提だろう。そこで今回は歌詞にインパクトがある女性アーティストの新作を紹介。彼女たちは今、何を歌うのか? に注目しながらチェックしてほしい。

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 齋藤飛鳥がセンターをつとめる乃木坂46、21stシングルの表題曲「ジコチューで行こう!」は、〈みんなに合わせるだけじゃ/生きてる意味も価値もないだろう〉というフレーズに象徴される、曲名通りの“ジコチュー・ソング”。SNSの普及によって同調圧力が強まり……みたいなことが言われて久しいが、10代~20代の女性はその状態が内面化し、周囲と合わせるスキルを持つことは大前提。そんな状況を的確に捉え、ジコチューという使い古された言葉をあえて使ってみせる秋元康の策士ぶりはさすがのひと言。あえて熱さを抑え、どこか淡々と〈ジコチューだっていいじゃないか?〉と呟くようなメンバーのボーカリゼーションも印象的だ。

 昨年リリースの1stアルバム『青春のエキサイトメント』がロングヒットを記録、前作の4thシングル『満月の夜なら』もApple Music J-POPチャート、LINE MUSICで1位を獲得するなど完全にブレイクを果たしたあいみょんのニューシングル『マリーゴールド』は、どこかノスタルジックな夏の風景のなかで、昔の思い出を懐かしんでいる恋人を描いたストレートなラブソング。切なさ、愛しさ、美しさがじんわりと押し寄せるこの曲は“エッジの効いた歌”の印象が強かった彼女のイメージをいい意味で裏切り、さらに幅広いポピュラリティを獲得するきっかけになりそうだ。カップリングには、いわゆる”重い女“を主人公にした、軽妙でシニカルなナンバー「あなたのために」を収録。

 キュートなルックスと高いラップスキル、ファンキーかつグルーヴィなトラックによって急激に注目を集めているRachel、Mamikoの2人組・chelmicoのメジャーデビューアルバム『POWER』。意味よりもノリ、シリアスよりも楽しさ重視のリリックは、本人たちも各インタビューで公言しているように明らかにRIP SLYMEの影響だが、心地よく、軽やかなグルーヴをたっぷり含んだフロウ、キャッチーな声質によって独自のポップ感に結びつけることに成功している。個人的にもっともグッときたラインは〈飲み干す缶ジュースと 残る少しの憂鬱と 回るレコード〉(「午後」)。ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、U-zhaan、思い出野郎Aチームのホーンセクションなどが参加した音楽的充実度も本作の魅力。

 今年3月に初の日本武道館ワンマンライブを大成功させた“チコハニ”ことCHiCO with HoneyWorksの9thシングル表題曲「ヒカリ証明論」は、TVアニメ『『銀魂』銀ノ魂篇』(テレビ東京系)エンディングテーマに起用されたアッパーチューン。〈迷い込んだこの世界で/出会ってしまった僕らは/最後に〉というフレーズで始まり、一気にテンポアップ。ギターロックとスカ的なビート、さらに和風のアレンジメントを加えながらドラマティックに展開する、郷愁と興奮を同時に体感できる楽曲に仕上がっている。苛酷な現実にぶつかりながら、〈最後に/離れないように笑えるように〉という願いを込める歌詞の世界をストレートに描き出すCHiCOのボーカルもさらに充実している。

 2018年1月にスノーマンからスピラ・スピカに改名した3人組(幹葉/Vo、寺西裕二/Gt、ますだ/Ba)によるデビューシングル。TVアニメ『ガンダムビルドダイバーズ』(テレビ東京系)第2クールエンディングテーマに起用された表題曲「スタートダッシュ」は、純粋なポジティブ精神を真っ直ぐに反映させたパワーソングに仕上がっている。作詞は幹葉、高橋久美子(ex.チャットモンチー)の共作。“どんなに壁にぶつかっても、心が折れそうになっても、自分の夢に向かって進むんだ!”という気持ちを描いた歌詞には、オーディションでの苦い思い出、バンド名を変えた前後の葛藤など、メンバー自身のリアルな思いとも重なっている。力強さと可愛さを兼ね備えたボーカルもきわめて魅力的だ。

 ソウル、ロックンロール、ブルース、ジャズなどのルーツミュージックをナチュラルに吸収し、テン年代のポップソングとして描き出す二十歳のシンガーソングライター、竹内アンナ。デビューEP『at ONE』には、豊かな音楽性と自らの経験に基づいたリアルな思いを共存させる、確かなソングライティングセンスが息づいている。それを象徴しているのが1曲目の「Ordinary days」。彼女が中学3年生のときに書いたこの曲は、友だちと離れる時期が近づき、そのときに感じた寂しさ、何気ない日常の素晴らしさに思いを寄せたナンバー。切なさと解放感を同時に放つメロディ、表情豊かなボーカル、シャープなギターリフがひとつになったこの曲は、彼女のポテンシャルの高さを証明していると思う。

■森朋之
音楽ライター。J-POPを中心に幅広いジャンルでインタビュー、執筆を行っている。主な寄稿先に『Real Sound』『音楽ナタリー』『オリコン』『Mikiki』など。

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