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中井貴一×佐々木蔵之介が語る、“オリジナルの喜劇”である『嘘八百』シリーズの価値

リアルサウンド

20/2/1(土) 6:00

 『嘘八百 京町ロワイヤル』が、1月31日より公開中だ。本作は、古物商の則夫を演じる中井貴一と陶芸家の佐輔を演じる佐々木蔵之介のW主演で送るお宝コメディ『嘘八百』シリーズ第2弾。監督は前作に続き『百円の恋』の武正晴、脚本は今井雅子と足立紳のコンビが務める。前作でも舞台となった大阪・堺に加え、数知れぬお宝が眠る古都・京都もまたにかけた、抱腹絶倒の騙し合いが繰り広げられる。

 W主演を務めた中井と佐々木に、『嘘八百』シリーズならではの現場、広末涼子、山田裕貴ら新キャストについて、オリジナル脚本で挑む本作への意気込みまで語ってもらった。

参考:ほか撮り下ろし写真はこちらから

ーーお二人は前作撮影時、続編をやると思っていましたか?

中井貴一(以下、中井):全く思っていなかったです。続編の「ぞ」の字もなかった(笑)。前作は、16日という撮影期間で寒い中の撮影を必死にやっていたので、続編を考える余裕もありませんでした。日々生きていることが精一杯なくらい(笑)。「続編を作ります」と聞いた時は、驚きました。

佐々木蔵之介(以下、佐々木):僕も続編なんて考えてもいなかったです。前作の時は、なんとか撮り切れればとしか思っていなかった。撮影の時に点滴を打ちに行っていたくらいですからね(笑)。たくさんの人に観ていただいたことで、こうして続編を作れるなんてありがたいことです。こんなに嬉しいことはない。

ーー資料では、前作に比べると若干撮影にも余裕があったとのことですが……。

中井:4日だけ伸びました(笑)。ただ今回も全く変わらずきつかったです。朝3時、4時に起きて準備をし、日が暮れるまで撮影。その繰り返しの日々でした(笑)。

佐々木:ホテルの朝食の時間前に出発ですからね(笑)。でも、タイトにまとめて撮影するというのが、この映画の良さかなとも思います。もはや自然と体が“『嘘八百』の体”になりますね。

中井:より緊張感が増すよね。

ーーそんな過酷な現場の中に、広末涼子さん、山田裕貴さんらが新しく加わりました。新キャストとはどのようなやり取りを?

中井:確実に、前作よりパワーアップしているんです。それはやっぱり、広末さん、山田くんたちが加わり恋の要素や先輩・後輩といった人間関係を足してくれたからで。広末さんは、役柄としてもしかしたらやりにくかったかなと振り返ってみると思いますね。僕と蔵之介くんのバディが出来上がっている中に入っていくのは、役者としてはやりにくいはずなので。そのやりにくさを感じさせないようにしようと思ってはいたのですが、撮影が始まってしまうと僕らも気を配る余裕がないくらい、必死にならないといけない(笑)。でも、そんな心配をよそに堂々と現場に立っていらっしゃいました。

佐々木:広末さんも“『嘘八百』の体”になったのかな(笑)。『嘘八百』の現場では、否が応でも順応しないといけないんです。貴一さんも、クランクインしてから現場に慣れる前の2日目くらいに、膨大な長ゼリフがありましたね。広末さんも茶道の練習をしないといけなかったり、山田くんも初めて関西弁を言わないといけないし、作陶もできないといけない。みんな、手枷足枷がある中でなんとか終わらせる必要がありますから。

ーー『嘘八百』は、お二人にとって少し特別な作品なのではとお話を聞いていて思います。

中井:『嘘八百』は「コメディ」というより、「喜劇」だと思うんですよね。コメディというと少し洒落ているけれど、喜劇というとどこか日本人の琴線に触れる独特の響きを感じるんです。『男はつらいよ』が代表するような人情喜劇。リメイクだったり、漫画やアニメの映画化が常になっている中で、『嘘八百』がオリジナルの喜劇であるということは、すごく大きな価値があると思っています。気楽に観られる作品ほど作ることが難しいものはないですから。

佐々木:同感です。言ってしまえば、『嘘八百』に流行のものはないんです。でも、僕ら日本人にとっての懐かしさや安心感がある。それは千利休や古田織部が出てきたり、京都で撮影したりといったことが影響しているのかもしれません。なかなかない映画だと思いますよ。ただおちゃらけて笑わせようとするのではなくて、役者の方々がきっちり「喜劇」というものに向き合って作っている。

ーー二人のバディ感が、前作以上にパワーアップしているように感じます。

中井:前作は、お互いが騙し合うというプロットでしたが、今回は、二人で立ち向かっていくというストーリーだからそう感じるのかもしれません。でも、前作を経たことで、良い意味でお互い遠慮がなくなった気もします。僕は馴れ合いは大嫌いなんです。緊張感を持ってお互いの関係を作っていく、そんな感覚はありました。

ーー中井さんから見て、本作での佐々木さんの演技で好きな場面はありますか?

中井:この映画はまだ拝見していないですが、現場で見る限り蔵之介くんは、作陶の技術がすごいです。前作でも、「趣味、これやったんちゃう?」と思ったくらいでしたけど(笑)、さらに、そのレベルが一段落上がったんじゃないかな。プロの役者として、その作陶の訓練の仕方が、実に見事だと思います。

ーー逆に、佐々木さんは中井さんの演技をどのように見ていましたか?

佐々木:前作の時から、役者の先輩方の生き様のようなものにリスペクトを持って芝居をしているのを感じていました。今回では、作戦を練るシーンが印象的でしたね。僕は出ていないんですが、撮影の時からあのシーンは現場で話題になっていたんですよ、「あれ、いつ撮るねん」って(笑)。そのシーンの撮影が終わった翌日、1カットで撮影したというのを聞いて驚きましたね。作品を観ながら、あのシーンの貴一さんはそれぞれのキャストを引き立てつつ、この作品の全てを背負うという責任感を感じました。

中井:芝居をするというのは僕たちの全てなんですよね。作中にある社会を、現場にいるみんなが同じ方向を向いて育んでいかなければならないという義務感があるので、蔵之介くんがそう感じたのかもしれない。僕ら役者なんて、カットがかかったらなんの価値もないんじゃないか、演じている時が一番生きていると言えるんじゃないかとも思います。特に作戦を練るシーンのように長回しで、出ている人数が多いと、自然とその覚悟を持たざるを得ない。

佐々木:観ていた時、「俺なら折れそうになるけど、やり通してるな~」と思いましたよ(笑)。

中井:折れそうになったよ(笑)。役者同士にしかわからない感覚かもしれません。でも、そういう時の撮影が一番楽しいです。普段どこか食べに行っていても、みんなどこかを繕いますよね。でも、芝居をやっていると繕っている暇がない。実は芝居をしている時が、一番本当の己が表に出るんですよ。それが芝居の面白い瞬間かな。 (取材・文=島田怜於)

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