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いま、最高の一本に出会える

出演作が途切れない! ますます脂が乗る、夏帆のポテンシャル

リアルサウンド

19/10/29(火) 8:00

 マグロは泳ぎを止めると死ぬーーこんな言葉を夏帆は、主演を務めた映画『ブルーアワーにぶっ飛ばす』内にて投げかけられる。彼女が演じるのは砂田夕佳という、30歳の自称売れっ子CMディレクターで、日々仕事に明け暮れている存在だ。これは翻ってみるに、2003年のデビュー以降、出演作がまったく途切れることのない夏帆自身とも重なって見えるのだから面白い。

【写真】『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』出演中の夏帆

 この砂田役について夏帆本人は、「今までで一番やりたい役に出会えた」(映画公式サイトより)と口にしている。本作は、『新聞記者』での好演も記憶に新しいシム・ウンギョンとの共演作。シム・ウンギョンといえば、韓国の若手世代の中でもトップ俳優との呼び声が高い。しかし現在28歳にして、おびただしい出演作数を誇る夏帆もまた、日本においてそのような存在であるといって差し支えないはずである。

 劇中での二人の関係性は、“秘密の友だち”。シム・ウンギョン演じる清浦あさ美は天真爛漫そのもので、田舎から東京へと出てきた砂田が失ってしまったものを、彼女は持っている。終始不満げな顔の砂田と、笑顔を絶やさない清浦。二人は絶妙なバランスを保ち、肩の力の抜けたゆるいやり取りを繰り広げるのだ。気怠げな夏帆は新鮮だが、「ぶっ飛ばす」というタイトルにふさわしいほど、物語を牽引する力を見せつける。それは例えば、劇中冒頭に見られる、多くの人間が入り乱れる撮影現場からその打ち上げまでを映し出した一連のシーン。砂田はディレクターとして、現場の指揮を執らなければならない。演じる夏帆の声や表情から読み取ることのできる焦燥、不満、不安、倦怠、苛立ち……彼女はそれらをガソリンとして、物語を推進していく。

 先述したように、夏帆が演じる砂田は終始不満げで毒っ気の強い、棘のあるキャラクターが印象的だ。これは新境地開拓のようにも思えるが、夏帆自身、出演作ごとにつねにイメージを一新し続けてきた。キャリア初期にはティーン向けファッション誌のモデルとして活躍する傍ら、『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系) など話題のドラマに出演。バラエティ番組『学校へ行こう!MAX』(2005-2008/TBS系)での快活な姿が記憶に残っている方も多いのではないだろうか。

 そして『天然コケッコー』(2007)という代表作を手にして以降、2008年には『東京少女』、『うた魂♪』、『砂時計』と、10代ながら立て続けに主演作を獲得。この世代でトップを走る存在に躍り出た。筆者も同世代とあって、当時心をわしづかみにされ、ともに青春時代を過ごした記憶がある(あくまで妄想の中でである)。

 20代に突入してからは、目が不自由なヒロインを演じた『箱入り息子の恋』(2013)、アッパーテンションの不良少女に扮した『みんな!エスパーだよ!』(2013/テレビ東京系)、綾瀬はるか、長澤まさみ、広瀬すずらと“四姉妹”を演じた『海街diary』(2015)などで主要な役どころを背負って立ってきた。また今年は、今作『ブルーアワーにぶっ飛ばす』より先に公開された『きばいやんせ! 私』でも主演を務めている。さらには、ドラマとして放送された主演作『東京ヴァンパイアホテル』(2017/Amazonプライム・ビデオ)、『予兆 散歩する侵略者』(2017/WOWOW)が劇場公開までされたことも大きい。

 現在は映画だけでなく、『ひとりキャンプで食って寝る』(テレビ東京系)、『ニッポンノワール-刑事Yの反乱-』(日本テレビ系)、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)にも同時出演中。10代の頃は清純なキャラクターに扮することがほとんどだったように思えるが、このところは一つのイメージには収まりきらない。そして何より、出演作が多いのである。

 年齢と同様にキャリアも重ね、ますます脂が乗ってきている夏帆。マグロはこの秋から冬にかけての時期が旬である。スクリーン内での彼女の姿に年中通して舌鼓を打っている私たちだが、ひょっとすると今が最旬であるのかもしれない。

(折田侑駿)

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