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『Mステ』から『エール』までーー“声のプロフェッショナル”たる声優らによるナレーションの魅力

リアルサウンド

20/6/12(金) 6:00

 現在放送中のNHK連続テレビ小説『エール』で、津田健次郎が語り(ナレーション)を務めている。声優がTVドラマのナレーションを担当するというのは比較的珍しいケースだ。しかも朝ドラは国民的なコンテンツということもあり、そこに彼の声が乗ることで、改めて“声のプロフェッショナル”たる声優の魅力に気づかされた向きもあるのではないだろうか。

 そこで本稿では、数ある声優活動の中でも「ナレーションでの活躍」に焦点を絞り、その魅力に迫ってみたい。

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■声優の仕事はアニメだけではない

 そもそも声優というと、「アニメに声を吹き込む人」という認識のされ方が一般的であると思われる。それも決して間違いではないが、それだけではあまりにも説明不足だ。お笑い芸人を「漫才やコントをする人」と定義してしまうと正確性を欠くのと同じように、声優の活動も非常に多岐にわたっている。

 声優はアニメ以外にも、外国映画や海外ドラマの吹き替え、ドラマCDやオーディオブック、ゲームなどのキャラクターボイス、シンガー、ラジオパーソナリティ、そして前述のナレーションなど、多彩な仕事をこなす。注意したいのは、これらが本業に付随する副次的な位置づけではなく、すべて基本的な活動に含まれると言ってもいい点だ。

 もちろん、その活動の割合は個人個人でまちまち。アニメ寄りの声優もいればナレーター寄りの声優もおり、シンガー寄りの人、ラジオ寄りの人、各種まんべんなくこなすオールラウンダーなど、さまざまに存在する。したがって、当然「アニメにはほとんど出ていない」という声優も存在しており、この事実はしばしば一般の視聴者を驚かせている。

 前述の津田は比較的オールラウンダーに近いと言えるが、ナレーションのイメージはさほど強くないかもしれない。そういう意味では、朝ドラへの抜擢を予想外のことと感じた人もいるのではないか。しかし彼の出演したアニメ作品などを観てきたファンにとって、その適任ぶりはまったく予想外ではなかったはずだ。甘い低音ボイスと重厚な芝居を特徴とする彼らしく、さわやかな朝の一幕への効果的なスパイスとして見事に機能している。今後、津田に対して「ナレーションの人」というイメージを定着させる人が多数出てきたとしても、少しも不思議ではない。

 ちなみに朝ドラで言えば、2015年の『まれ』で戸田恵子がナレーションを担当した例もある。もちろん戸田は女優としても著名であるため、純粋な声優としての起用とは言えないが、熟練の声技を大いに発揮してみせた。また、同じNHKの看板シリーズである大河ドラマにおいて、2015年の『花燃ゆ』で池田秀一がナレーションを務めたことも記憶に新しい。

■アニメ声優のナレーションが聞ける番組に注目

 現在放送中のTV番組において、レギュラーでナレーションを担当している声優は数多い。バラエティ番組や情報番組などを中心に、全国ネットのレギュラー番組だけを見てもざっと50例は下らない。これに衛星放送やローカル番組、特番、単発仕事などを加えれば、その数字が膨れ上がることは容易に想定できよう。きちんと統計を取ったわけではないが、ナレーションの含まれるTV番組のけっこうな割合を声優ナレーターが占めていると言っても間違ってはいないはずだ。

 注目すべきは、ナレーション活動を主戦場とするベテラン勢だけでなく、アニメ現場がメインと言っていい若手~中堅の名前も徐々に見かけるようになったことだ。以下では、そんな彼らが活躍する番組を中心に、アニメファン/声優ファンにもチェックしてもらいたいものをいくつか紹介したい。

■テレビ朝日の音楽番組は要チェック

 まず外せないのが音楽番組だ。自らも音楽活動を行う声優を中心に、多数の若手や中堅が起用されている。代表的なものが『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で、メインナレーターの服部潤を据える一方、上坂すみれや佐倉綾音といった“アニメ声優”のイメージが強い若手も起用。さらに昨年からは神谷浩史も加わり、その美声で番組を華やかに彩っている。同番組では、過去に村井かずさや皆口裕子らも起用されていた。

 テレビ朝日系列ではほかにも、ヒャダインがMCを務める個性派番組『musicる TV』を内田真礼が、ラップバトル番組『フリースタイルダンジョン』を木村昴が、若手男性アーティスト紹介番組『Break Out』を駒形友梨が担当。ちなみに『Break Out』では過去、諏訪部順一や中島沙樹、種田梨沙、石原夏織、豊田萌絵といった面々がナレーションを歴任してきている。

 音楽番組という接点では、TBS系列で今年3月にスタートしたライブ特化型番組『CDTV ライブ!ライブ!』に下野紘が起用されている。さらに、同番組では天崎滉平のような注目の若手も併せて起用している点にも注目だ。

■ドキュメンタリー系番組での落ち着きあるナレーション

 音楽番組以外では、ドキュメンタリー系の番組に注目したい。バラエティ番組ほどのテンションやキャラ作りが求められないため、普段あまり聞けないシリアスで落ち着いたテイストのリーディングを楽しめるケースが多いからだ。中でも、『セブンルール』(カンテレ・フジテレビ系/小野賢章)、『BACKSTAGE』(TBS系/花澤香菜)、『ハロドリ。』(テレビ東京系/櫻井孝宏)の3本はマストで要チェックだろう。ぜひ番組と一緒に、彼らのナレーションにも耳を傾けて欲しい。

 また、『有田Pおもてなす』(NHK総合/杉田智和)や『あちこちオードリー~春日の店あいてますよ?~』(テレビ東京系/内田真礼)のような、濃度の高いお笑い番組に声優が起用されるようになったのも興味深い。内田に関しては前述した音楽番組『musicる TV』も担当しており、コアな視聴者向けのハードボイルドな番組を複数務めていることになる。彼女の底抜けに明るいポップなナレーションによって、内容のマニアックさを中和させようという意図が制作側にはあるのかもしれない。

 ナレーターの声と番組には強い結びつきがあるため、たとえば滝口順平の声を聞くだけで『ぶらり途中下車の旅』(日本テレビ系)を即座に思い浮かべる人は多いはずだ。本稿では若手~中堅声優がレギュラーでナレーションを務める放送中の番組を中心にピックアップしてみたが、今後これらの番組が長寿化していくことで、『ぶらり~』と同じような効果をもたらすことになる可能性は十分にある。

 TV番組を楽しむ際には、出演者のみならず、姿なきその声にもぜひ注目してもらいたい。(ナカニシキュウ)

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