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加藤拓也×松本穂香 劇団た組新作は、俳優たちによる「鬼ごっこ」ならぬ「ぽにごっこ」

ぴあ

加藤拓也×松本穂香 撮影:藤田亜弓

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『友達』(2021年)、「MISHIMA2020『真夏の死』」(2020年)など外部演出作品でも注目される加藤拓也の「劇団た組」が新作『ぽに』を上演する。 “仕事とお金の責任の範囲”がテーマとなる本作で、主演を務める松本穂香、作・演出を手がける加藤拓也に話を聞いた。

「私そんなにいろいろ言ったかな?」って思うくらい、重なるところがある(松本)



――今日が顔合わせだったそうですね。

加藤 そうです。本読みをしました。

松本 ちょっとドキドキしましたけど、ずっとひとりで読んでいた台本が、共演者の皆さんが読むことでどんどんカタチになっていっていくのが楽しかったです。

――松本さんは舞台出演は、5年ぶり2度目となりますね。

松本 はい。でもやりたいなとは思っていました。

加藤 ずっと映画とドラマに出てたから、やらないんだと思ってた。

松本 そんなことないです。映像が続いていた、という感じで。今回は皆さんにいろいろ教わりながら、楽しみも見つけつつ、成長できたらいいなと思っています。

――松本さんはもともと加藤さんの「劇団た組」のファンだったそうですね。どういうところがお好きなのですか?

松本 はい。毎公演観に行かせてもらっています。好きなのは……なんか好きなんです。なんかよくわからないけど、いつも最後に泣いちゃったりして。身体の中に響いてくる感じがあります。なので今回オファーをいただいてビックリもしましたし、私でいいのかなという気持ちにもなりました。本当に好きなぶん、プレッシャーも生まれますし。でもやっぱりすごく嬉しかったです。

――加藤さんはなぜ今回、松本さんにオファーされたのですか?

加藤 穂香ちゃんとはドラマ『平成物語』(’18年)で初めて一緒にやって以来なのですが、そこから公演を観に来てくれるようになって、僕も出演作を観て、というだけの関係ではあったんですけど、なんか今回書いていた女の子(円佳)が割と穂香ちゃんのイメージに近い子だなと思って。

松本 近いと思います。

加藤 台本を送った時、穂香ちゃんのマネージャーさんにも「役と近いですね」と言われました。

松本 (笑)。読んでいても、「あれ、私そんなに(加藤に)いろいろ言ったかな?」って思うくらい、重なるところがある気がしています。流されやすい感じとか。でもシンプルに女性だったらみんな経験したことがあるんじゃないかな、というシーンもたくさんあるので、いろんな人に共感してもらえる部分があるんじゃないかと思います。

――自分と似たところがある役って演じやすいものですか?

松本 ちょっとしんどいところもあるかもしれない。自分の経験と重なるところとか。でもそういう役をいただくことが不思議なことというか。なにかあるんだろうなと思ったりもします。

責任の「出口のなさ」は「鬼ごっこ」と同じ

――今作はテーマが「仕事とお金の責任の範囲」だそうですが、どうしてそれを書かれたのですか?

加藤 どうして書いたかと聞かれるとすごく難しいんですけど、責任って出口がないというか、無限じゃないですか。その「出口のなさ」みたいなところを書きたいなと思っていて。例えばデリバリーピザの人は、台風の中、命の危険を感じながらでも、配達のためのバイクを走らせますよね。それを不思議だなと思うんです。時給1000円のために大きな危険やリスクを個人が背負って会社がピザを届けさせてるって、めっちゃ不思議。そういうところから広げていきました。

た組『ぽに』メインビジュアル

――それがもうひとつの要素「鬼ごっこ」とどう繋がっていくのですか?

加藤 その「出口のなさ」が「鬼ごっこ」と同じだなと思って。鬼ごっこって“鬼”を押し付け合い続ける、永久に終わらないゲームなので。そういうことを考えていてふっと、俳優たちによる「鬼ごっこ」ならぬ「ぽにごっこ」をする、ということを考えました。今回は今までと違って「ごっこ遊び」の延長線上に、この戯曲自体を持ってきたり、演劇自体を持ってきたりしている、というようなイメージです。

――どうつくり方が変わるのでしょう。

加藤 これまで以上に「ごっこ遊び」にする、という感じです。この物語自体に童話みたいな要素があるのですが、そうした理由は、これまでやってきた“日常の延長線上からフィクションになる”という話のサイズ感よりもう一歩踏み出した、フィクションの強度の高い世界みたいなものを描きたかったからです。これまでは日常的なものにほんのちょっと打ち込むように不思議を入れていたのが、今回は半分くらい。全然割合が違うので、今はそこをどうやってやっていこうかなと考えていますね。ただ今回は穂香ちゃんも藤原(季節)もそうですけど、(平原)テツさんや、僕が好きでお願いした金子(岳憲)さんというような“遊び上手”な方がいるので。

――「ごっこ遊び」が楽しめる。

加藤 はい。どうやって各シチュエーションに合わせて、コラージュして、遊んでいくかなということは、僕も遊びつつ、みんなの遊びを見てみたいです。公園で遊んでいる俳優たちが、『ぽに』という戯曲を「ぽにごっこ」している、みたいなイメージです。

――例えば、た組の『誰にも知られず死ぬ朝』(’20年)でやられていた、「13歳やりまーす」と言ってお芝居を始めるようなやり方も、加藤さんのおっしゃる「ごっこ遊び」なのでしょうか?

加藤 それは、やっぱりフィクションを信じる能力はお客さんによってバラバラなので。どれくらいのフィクションだったら信じられるのかなというところ。若ければ若いほど、日常生活のほうしか信じられなくなっていると思うんですよ。だからサイズ感の小さいお話……つまり身近なものが主流になっていったと思うんですけど。でももとはもと大きなサイズのフィクションも信じられてきたわけで。

だから人間にはそもそも信じる力のようなものはあるのだと思う。それを観客からどうやったら引き出せるか、みたいな。大きい話を信じるために小さい話を利用する、というカタチで、そのフィクションを信じてもらう段取りというかステップみたいな試しが、そこ(「13歳やりまーす」と始めること)にありました。フィクションではあるけれど、自分の生活の延長にありそうなことなんだと落とし込むために、どうお客さんにステップを踏んでもらうか、という手法の一個ですね。

場当たり的な嘘はなくしたい(加藤)

――松本さんは、加藤さんがつくる舞台に参加することをどう感じていますか?

松本 ずっと好きだったので、台本を読んでいても楽しいですし、普段以上に楽しめそうだというワクワク感があります。稽古で同じシーンを何度も繰り返しやれるのも舞台ならではですし、先輩方のお芝居を見ているだけでも楽しそうだなと思いますし、お客様の前でやるというのも、正直初めてのような気持ちで。舞台は2回目ですが、初めての時はあまり記憶がないというか。なにがなんだかわからない中だったので。

――デビューしたばかりでしたもんね。

松本 はい。今思えば責任感も薄かったし、だから逆に怖いとかもなくて。今はその頃とは全然気持ちが違います。5年分の経験もさせてもらいましたし、舞台もいろいろ観劇させてもらいましたし、お金を払って観ていただくことの大きさだったりも考えますし。加藤さんともドラマでのご縁なので、そういうものも大事にしたいなと思いますし。なのでほぼ初舞台みたいな気持ちです。終わった時にどんな気持ちになるのかな。全然違うところに行けたらいいなと今思っています。

――加藤さんはお芝居をつくるときにいつも何を大事にされているのですか?

加藤 台詞と身体に対して嘘がない状態というのは大事です。場当たり的な嘘をなくしたいという感じです、一番は。

松本 それは演じる側としては、すごく嬉しいというか、ありがたい気がします。

――共演者の皆さんはどんな印象ですか?

松本 ほとんど初めましての方なのですが、唯一(藤原)季節くんだけは一度映画でご一緒しています。季節くんは、同世代の中でも飛びぬけているというか……いろんな意味で。なのでそこは嬉しいです。こんなにガッツリやらせてもらえるのは。

――加藤さんも藤原さんへの信頼は厚いですよね。舞台ではこれが4作目、来年は加藤さんが監督を務め藤原さんが出演する映画『わたし達はおとな』も公開されます。

加藤 はい。彼とはどういうコミュニケーションを取ればより良いものが生まれるか、初めましての人よりもわかっているつもりなので、今作でもそういうコミュニケーションが取れたらなと思っています。

――最後に、おふたりが今楽しみにされていることをうかがいたいです。

加藤 どんな風にみんながコラージュしていくのか、いいラインをどれくらい感覚的にできるか、というのは楽しみです。

松本 私は全部未知なものなので。言ってしまえば全部楽しみです。

取材・文:中川實穂 撮影:藤田亜弓
衣装スタイリング:山本貴愛 ヘアメイク:尾口佳奈(KOHL)


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劇団た組『ぽに』
2021年10月28日(木)~2021年11月7日(日)
会場:KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ

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