Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play

今期、もっとも観るべきドラマは? 評論家が選ぶ、2020年冬の注目作ベスト5

リアルサウンド

20/1/31(金) 6:00

 暖冬で、雪景色こそ都内では珍しくなってしまったが、寒いことには変わりない2020年1月も最終日。そんな寒さから家に帰り、こたつでみかんを食べながら、ぬくぬくと楽しめるドラマが朝から深夜までいくつも放送されている。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、冬ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。(編集部)

【写真】第1位の作品でヒロインとして活躍する芳根京子

 自分で書いていて驚いたのだが、ベスト5が全て深夜ドラマとなった。もちろん、プライムタイムのドラマにも楽しめる作品はあるのだが、過去にヒットした作品のパッチワークであったり、演出が説明過多で観てられないものが多く、全体的に保守的。それは医療ドラマの供給過剰という現状に強く現れている。

 対して深夜ドラマは、物語の規模こそ狭くてどれもこぢんまりとしているが、すでに監督、脚本家、出演俳優の座組は、プライムタイムのドラマと比べても遜色ないものとなっており、雑多でバラバラゆえの勢いも感じる。

 悩んだのはNHKの土曜ドラマ『心の傷を癒すということ』をどう評価するか? 阪神淡路大震災を精神科医の視点から描いたシリアスな社会派ドラマはNHKでしか作れない硬派な作品で、存在意義は高く評価するが、こういう題材だからこそ、エンタメに寄せて描いた方がよかったのではないかと感じた。また、NHKではよるドラ(これも深夜ドラマだが)の『伝説のお母さん』も放送前なので除外しているが、意欲作となるのではないかと期待している。

1.コタキ兄弟と四苦八苦(テレビ東京系)

 一位の『コタキ兄弟と四苦八苦』は野木亜紀子脚本、山下敦弘監督という座組もあって完成度の高いオリジナルドラマとなっている。忙しい方は、これだけでも観てほしい。

 古舘寛治と滝藤賢一が演じる無職のおじさん兄弟が「レンタルおやじ」として様々な仕事をする姿が描かれるのだが、野木が描いてきた女性の生きづらさと、山下が描いてきた無職のダメ男が醸し出すユートピア感が時に融合し時に衝突する姿は見応えあり。さながら令和版『傷だらけの天使』(日本テレビ系)とでも言うようなドラマで、東京オリンピックを控えた忙しない世の中にうんざりしている人にとってはアジール(避難所)のような作品。小規模ゆえに切実な優しい作品で、深夜ドラマで作る意義を、作り手が的確に理解しているドラマだと言える。

2.やめるときも、すこやかなるときも(日本テレビ系)

 2位の『やめるときも、すこやかなるときも』は、奈緒が演じるヒロイン・桜子の、ねっとりと絡みつくような辛気臭さにやられてしまった。『あなたの番です』(日本テレビ系)の時はやりすぎだと思ったが、人が内側に秘めているジメジメとした感情を演じさせると奈緒は最高である。原作は窪美澄の小説で、藤ヶ谷太輔が演じる喪失感を抱えた男性と結婚を焦る女性のラブストーリーなのだが、今のところ、奈緒がヤバいという感想に尽きる。

3.ホームルーム(MBS)

 3位の『ホームルーム』は女子生徒・桜井幸子(秋田汐梨)にいびつな欲望を抱いた男性教師・愛田凛太郎(山田裕貴)が主人公の学園ドラマ。メガネをかけたいじめられっ子の女子高生の名前が野島伸司脚本の名作ドラマ『高校教師』(TBS系)でヒロインを演じた桜井幸子から取られており、劇伴が森田童子の「ぼくたちの失敗」に寄せていることからもわかるように『高校教師』の引用が散りばめられている。

 桜井を演じる秋田汐梨は昨年『惡の華』の佐伯奈々子役で注目された若手女優。90年代に桜井幸子が担っていた影のある美少女は今後彼女が独占することになりそうなくらいハマっている。主人公の教師を演じる山田裕貴の変態演技が若干わかり過ぎるが、だからこそ安心して楽しめるという側面もある。今後シリアスな方向に向かうのか、パロディに向かうかで評価が大きく変わるのではないかと思う。

4.この男は人生最大の過ちです(朝日放送テレビ)

 4位の『この男は人生最大の過ちです』は、イケメンの社長だがドMの性癖を持つ天城恭一(速水もこみち)に奴隷にしてくれと懇願されるOL・佐藤唯(松井愛莉)を主人公にした大人のラブコメ。ドM社長をクールに演じる速水もこみちがこれ以上にないハマり役で、これは絶対にもこみちにしか演じられないキャラクター。映像もクールで音楽の使い方もカッコいい大人のドラマに仕上がっている。

5.ゆるキャン△(テレビ東京系)

 5位の『ゆるキャン△』は、女子高生がキャンプをする姿をたのしく描いた作品。原作は日常系の漫画だが、2018年にアニメ化され大きな話題となっていた。それだけに出来のよかったアニメ版と比べられ、始まる前は批判的な意見も多かったが、アニメの完コピという大胆な策に打って出たことで評価は反転し絶賛の声が多数あがっている。

 すでにビジュアルのある漫画やアニメの実写映像化における完コピ主義が正解かどうかは迷うところだが、少なくとも本作においてはうまくいっていると言えよう。何より福原遥や大原優乃といった女子高生を演じる若手女優がかわいく撮れているのはポイントが高い。これはアイドルドラマとして圧倒的に正しい。

 アニメのようにドラマの主戦場も深夜枠や配信へと移っていくのか? それを見極める上でも、この5作は重要な作品となるのではないかと思う。

(成馬零一)

新着エッセイ

新着クリエイター人生

水先案内

アプリで読む