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朝ドラ『エール』窪田正孝×佐久本宝が表現した兄弟の愛憎 裕一と浩二が笑顔で再会する日を願って

リアルサウンド

20/6/13(土) 6:00

 裕一(窪田正孝)と浩二(佐久本宝)は兄弟でありながら、子供のころから多くの違いを抱えたキャラクターであった。『エール』(NHK総合)第11週「家族のうた」では、久しぶりに福島に帰省する裕一と音(二階堂ふみ)が、古山家で過ごす様子が描かれる。裕一と顔をあわせるなり「よくヘラヘラと帰ってこれたな」と吐き捨てた浩二。兄弟の確執は未だ尾を引いていた。

【写真】裕一(窪田正孝)と浩二(佐久本宝)

 だが、この2人にも三郎(唐沢寿明)の死をきっかけに改めてお互いの立場を整理する時が来る。三郎が生前、裕一を呼び出して伝えたことは、土地と家は浩二に譲りたいという意思だった。さらに、三郎が死の直前、浩二を呼び出して伝えたのは、自身が死んだら喪主を務めてほしいということ、そして裕一に承諾を得たので古山家の土地と家を相続し、正式に後継となってほしいということだった。最後に三郎と話したこの時間は、浩二にとっては初めて自分の存在が報われる瞬間となっただろう。今まで浩二が悩んできたことをすくい上げるように、三郎は優しく言葉をかけるのであった。

 音楽の才能がある一方で、自分の気持ちや考えを器用に言葉にすることができない裕一は、幼い頃は特に家族とさえスムーズなコミュニケーションを取れずにいた。父や母がしきりに裕一を気にかけるのは、裕一が思っていることを上手く表現する術が音楽しかないということをわかっていたからである。

 しかし、浩二は違った。なんでもそつなくこなし器用な浩二は、学校でも問題なく過ごし両親の手を煩わせることなく育つ。だが、その器用さが仇となり、父や母から注目されて手をかけてもらう機会は少なかった。こうした気質の違いから起こる親からの扱いの差は、兄弟の確執をより強調し、2人を徹底的に遠ざける要因になってしまう。

 特に浩二は、なんでも特別に許される裕一の存在に対して嫉妬の心を抑えられずにいた。第11週ではそんな浩二が改めて救われていく様子が描かれ、これまで両親がどうして裕一をかばうように過ごしてきたのかを知ることができる。このことは浩二にとって心が浄化される思いだったろう。

 しかし、忘れてはならないのは、裕一がこれまで許されてきた数々の“自由すぎる”行動がすべて清算されたわけではないこと。久しぶりに福島に帰ると、喜多一は店をたたみ従業員たちも散り散りに、後継のいなくなった権藤家は川俣銀行を手放し、かつての同僚は別の仕事に転職していた。茂兵衛(風間杜夫)はというと、趣味の陶芸に没頭していた。それぞれが新たな人生に不満を見せず裕一のことも温かく迎え入れたが、裕一の勝手が多くの人の人生を変えるきっかけになったことは言うまでもない。

 そんな裕一に反し、浩二がその尻拭いをするように喜多一を継ぎ、福島に残って黙々と働いている様子をみると、ここでも2人の間には、考え方や振る舞いに対して決定的な違いがあることがわかるだろう。浩二の中には、嫉妬心だけではなくそんな価値観の相違からくるすれ違いで裕一を疎んじていた部分もあったのだと感じさせられる。

 似ていない部分ばかりが描かれてきた古山兄弟だが、血の繋がった只一人の兄弟であることもまた確か。裕一が東京に帰る際には、今まできつい態度ばかりとってきた浩二が笑顔で裕一を送り出す様子も描かれた。これからの2人が、徐々に分かり合える日が来ることを予感させるシーンとなった。

(Nana Numoto)

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