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『プリンセスコネクト!Re:Dive』楽曲はなぜ充実? サウンドプロデューサー本田晃弘に聞く

リアルサウンド

18/9/26(水) 18:00

 『プリンセスコネクト!Re:Dive PRICONNE CHARACTER SONG 05』が、9月26日にリリースされた。同作は、スマートフォン向けアニメRPG『プリンセスコネクト!Re:Dive』のボーカルCD第5弾。ゲーム内に登場するキャラクターのミミ(CV:日高里菜)、ミソギ(CV:諸星すみれ)、キョウカ(CV:小倉唯)が歌うゲーム挿入歌「リトルアドベンチャー」や、ツムギ(CV:木戸衣吹)が歌う「アマノジャクHEART」のほか、オリジナルドラマが収録されている。

(関連:“ゲーム音楽”は次世代音楽文化の礎に? 『NieR』『艦これ』がランクインした最新チャートから考察

 リアルサウンドでは、『METAL GEAR SOLID』シリーズなど多くの作品のゲームミュージックに携わり、Cygamesではサウンドプロデューサーを務める本田晃弘氏にインタビュー。Cygames内での役割から、『プリンセスコネクト!Re:Dive』の音楽面での特徴やコンセプト、制作面までじっくりと語ってもらった。(編集部)

■「ブラスから木管までほとんど生で録ってます」
ーーまずは本田さんのCygames内における役割と、担当している作品について聞かせてください。

本田晃弘(以下、本田):音楽に関するプロデュースやディレクションが主な仕事で、自分で音楽を作ることもあります。いま担当している作品は『プリンセスコネクト!Re:Dive』(以下、『プリコネR』)や『ウマ娘 プリティーダービー』(以下、『ウマ娘』)、そして、PS4の『Project Awakening』に携わっています。社外では『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』のアレンジャーとしても参加しています。

ーー『プリコネR』には、どのような経緯で音楽監督として関わることになったのですか?

本田:もともと弊社の体制としては、各ゲームのBGMに関してはアウトソーシングしていて、社内のサウンドチームは効果音や組み込みなどを担当していたんですが、『プリコネR』ではイマジンさんとやり取りさせていただく際に、ゲームの制作チームから「より良いものを作りたい」ということで、音楽制作のことを理解している僕が間に入ることになったんです。いまはサウンドチームも様々な形で音楽に関わるようになったのですが、そういう体制になったのはこれが初めてかもしれないです。

ーーゲーム業界では、音楽は外注で制作することが多いのでしょうか?

本田:会社によると思うのですが、弊社は以前までそういう体制でした。前職では直接音楽制作に関わっていたので、最初の頃はサウンドチームを通さないで曲がどんどん出来ていく文化に「えーっ!」と戸惑ってしまって(笑)。もちろん音楽のことで困ったときにはサウンドチームに相談がくるのですが、基本はそういう立ち位置でしたね。

ーー本田さんは音楽監督として具体的にどのような業務を行っているのですか?

本田:たとえば、制作チームから「こういう楽曲がほしい」と挙がってきたオーダーを外注先にわかりやすく説明し直したり、デモの段階でのディレクションなどを行っています。それと『プリコネR』の音楽は必ず生楽器でレコーディングしているので、その現場には必ず立ち会いますし、最終ミックスやトラックダウンといった工程にもすべて立ち会って監修しています。

ーー『プリコネR』の音楽は、主にBGMとキャラクターソングの2種類に分かれると思うのですが、それぞれどういった体制で制作しているのですか。

本田:キャラクターソングについては、社内に自分とは別の担当者がおりまして、その者と日本コロムビアの柏谷(智浩)さんが協力して制作しています。BGMに関しては、最初は自分と西木(康智)さん、イマジンの作家さんとで制作していたのですが、今は社内に新人が入りましたので、ほとんどの作業は彼らに任せています。僕は後ろに座ってコーヒーを飲んでるだけですから(笑)。

ーーそんなことはないと思いますが(笑)。では、社内と外部を合わせるとかなりの人数が『プリコネR』の音楽制作に関わっていそうですね。

本田:いま社内で関わっているのは4人ですね。外部ではイマジンの作家さんが4~5人ほど、そのほかの作家さんにも何人か関わっていただいてますので、全部で10人以上の大所帯になります。普通はひとつのゲームに多くてもせいぜい3人か4人ぐらいなので、かなり珍しいケースだと思います。

ーーなぜ、大人数で制作されているのでしょうか?

本田:理由の一つとして、曲の雰囲気が被るのを避けたかったということがあります。少人数で制作すると、雰囲気やカラーが似ることが多く、作る側もディレクションする側も苦労することがあります。「日常曲って前に書きませんでしたっけ?」という感じで(笑)。であればいろんな人に頼んだほうが良いですし、新しい作家の方と繋がりを作る意味もあります。なので、まだあまり名前の知られていない若い作家の方にも積極的に参加していただいてます。

ーーサウンドチームから見た『プリコネR』の魅力はどんなところにあると考えていますか?

本田:とにかくコンテンツの物量が多いところですね。お話パートだけでも40時間以上あるので、じっくりとプレイしたい方にはたまらない作品になってると思います。ゲーム部分もたくさんのやりこみ要素があり、音楽も多種多様な曲を揃えましたので、ユーザーの方も楽しんでいただけると思います。

ーーそれだけのコンテンツ量だからこそ、大勢の作家さんに参加してもらう必要があったんですね。

本田:初期の段階では自分と西木さんで制作していたのですが、2人でこれだけの量の音楽を作るのは時間的に難しいと思ったので、途中でイマジンさんに相談して、いろんな作家さんに参加していただいたんです。このゲームでは、アニメの音響監督をやっていらっしゃる方々にお話パートの選曲をお願いしたのですが、制作末期にゲームの仕様やお話の演出が変わってしまい、その段階で終わっていた40時間分の選曲をすべてやり直しまして……。

ーーそれはすごいこだわりようですね。

本田:まだゲームをリリースして1年も経ってないんですけど、BGMの楽器レコーディングもすでに8回ぐらい行ってますから。

ーーえぇっ! では、まだ曲を追加で制作してるところなんですか?

本田:やる気みたいですね……他人事みたいに言ってますけど(笑)。劇伴の場合は20曲ぐらいをまとめて録ったほうが経済的に効率がいいんですけど、『プリコネR』では5曲や7曲ほどで録音を組むので、ものすごく贅沢な作り方をしてるんですよ。ただ、1曲1曲の録音をじっくりとおこなうことができるので、新人が勉強するにはとても良い環境だと思います。

ーーそういった体制はCygamesならではのものなのですか?

本田:そうですね。むしろ自分のほうが「もったいないので一度にまとめて録りませんか?」と提案したぐらいなんですけど、「少しずつの録音でもOKなので、ユーザーにとって良いものを制作していきましょう」という返答があったんです。普通は生演奏で録るにしてもトップノートや弦だけということが少なくないんですが、『プリコネR』ではブラスから木管までほとんど生で録ってますし。これは極端な例ですが、川口(千里)さんにドラムをお願いしたときは、1曲だけ叩いていただいて終わりということもありました(笑)。本当はもっと叩いてほしかったんですけど、そのときの録音はしっとりした曲ばかりだったので、ドラムの出番がなかったんです。

ーーちなみに、Cygamesでは『神撃のバハムート』や『グランブルーファンタジー』など、『プリコネR』と同様にファンタジー世界を舞台にした作品を多数展開していますが、それらの音楽とはどのように差別化を図っていますか?

本田:『プリコネR』の登場キャラは、ティーンズとか年齢層が低めの子がメインの作品なので、楽曲も重くなりすぎないように、ポジティブさであったりほのぼのでありつつ活発的な感じを意識しています。怖い雰囲気だったり難解な曲はなるべく少なくして、主題歌のモチーフもふんだんに活用してユーザーに親しみやすくしています。弊社のほかのファンタジー作品とは違う方向性の音楽にすることがコンセプトのひとつではあるのですが、もう曲数が150曲近いので、さすがにそろそろちょっと被る曲も出てきそうなのですが(笑)。

ーー『プリコネR』はジャンル名を“アニメRPG”と銘打っているとおり、ゲーム中に本格的なアニメーションが挿入されることが特色のひとつになります。そういったスタイルならではの音楽的な取り組みはありますか?

本田:いくつかのアニメーションでは、フィルムスコアリングという手法を使って、アニメの絵に合わせて音楽を制作しています。ただ、さすがにすべてその手法で制作するわけにもいかず、本当にごく一部になるのですが。

ーーフィルムスコアリングでの制作となると、かなりの経験やノウハウを持っていないと難しそうですね。

本田:僕が以前に関わっていた『メタルギア』シリーズはほとんどフィルムスコアリングで音楽を制作していたので、そのときに専門の方にいろいろと教わったんです。オープニングのアニメでペコリーヌが滝で身体を洗ってるセクシーなシーンがあるのですが、それに対して特に指示がなかったので、そこにどういう音楽をつければいいのかすごく苦労しました(笑)。

ーーほかに『プリコネR』の音楽全体に通底するコンセプトはありますか?

本田:これはゲームの世界観とも関係するのですが、田中(公平)先生に作っていただいたメインテーマ(「Lost Princess」)を主軸とし、これでもかと主題歌に寄せて制作しているんです。おこがましいですが、どの曲を聞いても「あ、田中先生が作ったんだ」と思ってもらえるように、世界観を統一しています。

■「徹底してユーザーが求めているものを作る」
ーーあれ? では、田中先生の書いたテーマ曲ありきでBGMの方向性が定まったんですか?

本田:そうです。「Lost Princess」がメインテーマとしてあるなかで、急にEDMやハリウッドサントラのような音楽が流れても違和感があると思いますので。

ーーたしかにTVCMでもお馴染みの「Lost Princess」は、一度聴いただけで耳に残るメロディが田中先生らしい、『プリコネR』を象徴するような楽曲になっています。こちらの楽曲はどういった経緯で生まれたのですか?

本田:この曲は、弊社プロデューサーの木村(唯人)が「ぜひ田中先生にテーマ曲をお願いしたい」と指名でオーダーがありまして、壮大感があって王道ファンタジーに相応しい楽曲とお願いして作っていただきました。実は『プリコネR』のプロジェクトは3年ほど前から動いていまして、田中先生に楽曲を書いていただいたのもずいぶん前になるので「あの曲のゲームはいつ出るの?」という感じだったと思います(笑)。

ーー田中先生とのやり取りで印象的だったことはありますか?

本田:一旦デモが完成した後だったのですが、田中先生から自主的に「もっと良いのが出来たから変更したい」というお話をいただいたんです。最初に納品いただいたバージョンは転調が少なく、普通にA、B、Cと展開していく楽曲だったので、今のものとは全然違っていたんですよ。それと作詞については、田中先生から「しほりさんにお願いしたい」とご提案いただきました。歌詞を先に書いてもらった後にメロディを作ると譜割りも変化して、普段の自分とは違う新しいメロディが出来るらしいんです。

ーー情熱的でチャレンジ精神の旺盛な田中先生らしいエピソードですね。

本田:「Lost Princess」の歌入れのレコーディングでも、田中先生はブースの中まで入って熱血指導されてました。ご自身で歌いながら、ブレスとか細かいところまで指導されるんです。田中先生はデモ音源の段階では自分で歌われるんですけど、女性声優が歌うキーは高いので、終始裏声で歌われていてビックリしました(笑)。

ーー『プリコネR』には「Lost Princess」以外にも、声優さんによるキャラクターソングが多数制作されていて、ゲーム内イベントのエンディングテーマなどで使われてるほか、CDでシリーズ展開もされています。

本田:キャラソン制作の流れについては、ゲーム内で毎月行われるイベントのスケジュールをもとに、まず社内で歌唱キャラクターを選定したうえで曲のイメージを固めまして、それを日本コロムビアさん側に発注して、1曲ずつコンペにかけて制作しています。それに対して弊社からもフィードバックしながら作り込んでいく流れですね。僕はキャラソンについては全然タッチしていなくて、たまにマスタリングの様子を見に行くぐらいなんですが。

ーーどの曲も各キャラクターやイベントの内容に寄り添ったものになっていますが、キャラソンを制作される際に特に注力していることはありますか?

本田:キャラクターやギルド内の関係性を意識して制作しているそうです。たとえばマホ(CV:内田真礼)とカオリ(CV:高森奈津美)の曲(「Peaceful*ちゃんぷるー」)は沖縄の方言を意識して制作したので、曲にも沖縄音階が入っていたり、レコーディング中にも内田さんと高森さんから方言の言い回しや歌い方を話し合いながら一緒に作っていったみたいですね。

ーーイベントのエンディングテーマには必ずアニメーションも付いていますし、“アニメRPG”らしい充実ぶりですね。

本田:イベントについては、音楽面でもイベントごとに必ず専用の歌を用意していまして、その歌をモチーフに、インストバージョンも制作しています。メニュー画面用のアレンジと日常用のアレンジ、しっとり泣かせるアレンジの3曲を毎回作り直して録ってるんですよ。普通なら予算の面で難しいことだと思うんですけど、制作チームが「毎月変えたい」ということで、むしろ作る方が被らないようにネタに悩むぐらいで(笑)。

ーー効率よりも「いかにコンテンツを充実させて、ユーザーに楽しんでもらうか」という目線で制作しているというか。

本田:「作家さんが作りたい曲」が「ユーザーが求めている曲」であれば大成功なのですが、昔のプロジェクトではそうでないことがよくあって、実はチーム側としてはイメージにそぐわないけどそのまま仕方なく進めてしまうということがよくあったんです。でも、弊社では全員がユーザーの方向を向いているので、徹底してユーザーが求めているものを作るところは特徴的だと思います。それは僕の部下にも常日頃から伝えていて、「君たちの奇抜なオリジナル曲は有名になってからどんどん作ればいいから、まずはお客さんが聴きたいと思うものを作って」と言ってます(笑)。

ーー最後に、音楽監督として今後『プリコネR』でチャレンジしてみたいことはありますか?

本田:やっぱり歌ものを作ってみたいですね。担当からも「いつかは必ず作って欲しい。あきらめないぞ(謎)」と言われてるんですよ。『ウマ娘』ではすでにいくつか曲を書いてるので、『プリコネR』でもいつかは書けたらと思って。

ーー本田さんが作詞作曲した『ウマ娘』のテーマソング「うまぴょい伝説」は、作品の魅力を象徴するような1曲でした。

本田:ありがとうございます。あの曲はワインを2本開けながら作った曲なんですよ(笑)。もともとは「電波ソング」というオーダーだったんですけど、僕は電波ソングがどんなものなのかよくわかっていなかったので、1000曲ぐらいc聴いて勉強しまして。それでも「電波具合が足りない」と言われたので、「ならワインを開けるしかない」ということで、自宅で飲みながら作らせていただきました。

ーーあの曲の高揚感はハンパないですからね。

本田:相当酔っ払ってたのでアガる曲になったんだと思います。僕もワインを瓶で飲み、パンツ一枚で振り付けを踊りながら作ってましたから(笑)。誰かがその様子を見てたら絶対ドン引きしてたと思います(笑)。

ーーすごい制作エピソードですね(笑)。『プリコネR』ではどんな曲を書いてみたいですか?

本田:せっかく60人ぐらいキャラクターがいて、いろんな役者さんが参加していらっしゃるので、全員で歌う曲を作ってみたいですね。

(取材・文=北野 創)

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