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東京都心・北東エリアの街なかでアート散策を楽しもう! 「東京ビエンナーレ2020/2021」9月5日(日)まで開催中

ぴあ

宮永愛子《ひかりのことづけ》

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東京、特に北東エリアを中心に展開する国際芸術祭「東京ビエンナーレ 2020/2021」が7月10日(土)より開幕した。9月5日(日)までの会期中、上野や谷根千、銀座や丸の内などで幅広いジャンルの作品が展示されるほか、ワークショップやイベントなども開催される。

「東京ビエンナーレ」は、当初は2020年の開催を予定していた国際芸術祭。新型コロナウイルスの影響で開催延期となっていたが、今回「東京ビエンナーレ 2020/2021」として開催されることとなった。テーマは「見慣れる景色へ−純粋×切実×逸脱」。総合ディレクターはアーティストの中村正人と武蔵野美術大学名誉教授の小池一子が務める。今後、2年に1度の開催が予定されている。

参加アーティストはアートや建築分野のみならず、デザインやファッション、食にテクノロジーなど幅広い領域から全64組が参加。展示会場は千代田区、中央区、文京区、台東区の4区にまたがっており、鑑賞者はそれらの会場を自由にめぐって観賞していく。

そんな大規模な芸術祭の見どころをダイジェストでレポートしよう。

歴史と現代をつなぐ作品

冒頭の写真の作品は、湯島聖堂を会場にした宮永愛子《ひかりのことづけ》。回廊の中央に透明度の高いガラスを置き、日々変わっていく様々な光を集め、分散させている。

宮永愛子《ひかりのことづけ》
宮永愛子《ひかりのことづけ》

また、聖堂に置かれた水鉢には、讃岐地方を語源とする、1500万年前の石、サヌカイトを設置。水滴を受けると澄んだ音を奏でるサヌカイトに注意を向けていると、それまで気にも留めていなかった車や風、人々の声など街の音も聞こえてくる。

宮永愛子《ひかりのことづけ》

神田須田町の西側は戦災での焼失を逃れ、看板建築が残ったエリアだ。古着を扱う老舗として知られていた海老原商店は1928年の竣工。この看板建築の建物をまるごと作品にしたのが西尾美也の《着がえる家》だ。

西尾美也《着がえる家》
西尾美也《着がえる家》

建物内には、装うこととコミュニケーションをテーマに展示が行われている。また《着がえる家》では、会期中に洗濯物を持ち寄り、洗うワークショップが実施される予定だ。

蔵前の寺院「長応院」の敷地内にある瞑想空間「空蓮房」では、内藤礼《Praying for Tokyo 東京に祈る─「わたしは生きた」》が展示されている。東京大空襲の犠牲者のために、内藤は彫刻「ひと」を空蓮房のなかに配置。また、隣接する墓地内慰霊碑「親子地蔵尊」には、なみなみと注がれた水を捧げ、空襲の記憶を届けようとしている。

「親子地蔵尊」
内藤礼《Praying for Tokyo 東京に祈る─「わたしは生きた」》

AR技術を使用した新しいパブリック・アート

ファッションブランド「リトゥンアフターワーズ(WRITTENAFTERWARDS)」のデザイナー、山縣良和による《Small Mountain in Tokyo》は、AR(拡張現実)の技術を利用した作品だ。秋葉原の万世橋の中央から、スマートフォンをかざすと、かつてはそこにあった神田山の姿が映し出される。神田山は日比谷の入り江を埋め立てるために江戸時代に切り崩された山だ。

万世橋から神田川を見る
山縣良和《Small Mountain in Tokyo》
山縣良和による《Small Mountain in Tokyo》

街や人の記録を残す

閉店して数年経っていた神田小川町の額縁専門店「優美堂」の建築を改修、新たな事業計画や運営などを市民とともに行うプロジェクトが、中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》だ。

中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》

「ニクイホドヤサシイ」という言葉は、優美堂の電話番号の語呂合わせにちなんだもの。中村とスタッフは優美堂に残された膨大な数の額縁を使い、「富士山」と「優しさ」をテーマにした絵画を制作・販売し、その売上は活動費に充当される。

中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》
中村政人による《神田小川町・優美堂再生プロジェクト ニクイホドヤサシイ》 屋上に設置されたアーティストのo-junによる作品

優美堂からほど近いレインボービルの9階に設えられた《東京Z学研究所》は、中村政人が所長を務める「Z学」の研究所。Z学とは、路上観察学や考現学の先にある学問として中村が位置づけたもので、展示会場では無名の人々の行為に着目し、とどまり続けた行為の結果を収集、展示している。

中村政人《東京Z学研究所》
中村政人《東京Z学研究所》

会場には、かつてはポールを置くおもりであったものや、崩壊寸前の三角コーンなどを、かつての状況を示す写真とともに展示し、そのものの機能や意味、価値などに思いを巡らせるものだ。

大都市と芸術

都内でも屈指のビジネス街、繁華街である有楽町や銀座も東京ビエンナーレの会場の一つだ。太湯雅晴の《The Monument for The Bright Future TOKYO / 2021》は、岡本太郎が1966年に制作した《若い時計台》の前に「明るい未来」の文字を設置したもの。「明るい未来」は、福島県双葉郡にかつて掲げられていた原子力発電のための標語「明るい未来のエネルギー」に由来している。

岡本太郎の《若い時計台》と太湯雅晴《The Monument for The Bright Future TOKYO / 2021》

林昌二が設計した三愛ドリームセンタービル内には、株式会社スマイルズ代表としても知られる遠山正道の作品を展示。《Sprint Hours》は、効率化を推進し、時刻を10進法で表すこととなった世界の時計。消えた2時間について思いを馳せる作品だ。窓の向こうには12進法で時を刻む和光ビルの時計も見える。

遠山正道《Sprint Hours》

このほかにも、日比谷OKUROJIやアーツ千代田3331をはじめ、東京都内の様々な場所が会場となっている。1日では回りきれない規模なので、これから9月までの間にパスポートを片手に、少しずつ訪れてみてはいかがだろうか。

取材・文:浦島茂世

「東京ビエンナーレ 2020/2021」
7月10日(土)~9月5日(日)、東京都心北東エリアの各所にて開催
https://tb2020.jp/

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