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立川直樹のエンタテインメント探偵

期待の若手監督による『宇治茶監督展』、無声映画とお笑い芸人のコラボがJAZZのセッションのようだった『活弁でGO!』など

隔週水曜

第26回

19/6/12(水)

映画『バイオレンス・ボイジャー』公開記念 宇治茶監督展

 改めて書く。エンタテインメントは観るのも好きだが、作るのも好きだ。10代のころからずっとそうだった。

 前回書いたYumingのライヴを観て、夜は一緒に出かけた京都の友人とビストロでワインを飲みながら、音楽や映画、美術の話……行きつけのビストロの夜更けの景色はフランス映画の一場面のようだし、翌日、熊本まで飛んで車で移動して着いた竹田の岡城跡を歩いていた時には、いろいろなアイデアが浮かび上がってきた。

 キリシタン資料館で興味深い展示物を観て館長の話を聞いている時もそうだったし(竹田にはキリシタン洞窟礼拝堂という魅惑的なスポットもある)、古い米蔵を改造したキリシタン・ホールに飾られた350枚のイコン画を観ている時にはエニグマやキング・クリムゾンが頭の中で鳴り始めた。

 その後、阿蘇の外輪山を見ながらのドライブではピンク・フロイド。いつも音楽や映像の記憶が現実とシンクロしている状態で暮らしている気がするが、プロペラ機で熊本から伊丹に向かう時の天上からの景色は作りものの映像が束になってもかなわない極上のショーだった。

 そして、その夜はベーシストの清水興とチキンジョージのオーナーの児島クンと“はらはち”なる韓国宮廷料理屋でしこたまワインを飲んで、7月から本格的に活動をスタートさせるビッグ・バンド、MUSIC UNLIMITED ORCHESTRAのプロジェクトの打ち合わせをして、翌日はなんばにあるLAUGH & PEACE ART GALLERYで『バイオレンス・ボイジャー/宇治茶監督展』を観て(クエイ・ブラザーズに近いセンスを持った期待の若手監督。偶然本人とも会えて写真も撮った)。

 夜はポストよしもとで『活弁でGO!』。無声映画とお笑い芸人のコラボは本当に何がどうなるかわからないJAZZのセッションのようで進化が楽しみだ。お客さんの笑いもいい感じだったが、ギャラリーに行く前にちょっと覗いたよしもと漫才劇場でのお客さんの笑い(ちょうどデルマパンゲなる2人組が出ていたが、これは買い)に接した時に、大阪と東京は新幹線で2時間半ほどの距離なのに、これだけ笑いに対するノリが違うのだということを実感させられた。

ShugoArtsの米田知子『アルベール・カミュとの対話』展、DIC川村記念美術館『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』展など

米田知子 「アルべール・カミュとの対話」
copyright the artist, courtesy of ShugoArts

 そして21日には立川のシネマシティで今年から始めた“選ぶシリーズ”の第4弾でサエキけんぞうが選んだ『ブロウアップ ヒデキ』の上映前にトークショーをこなし、翌日は六本木のShugoArtsで米田知子『アルベール・カミュとの対話』展と恵比寿のLIBRAIRIE6で『ジョイス・マンスール詩集出版記念』と銘打った山下陽子新作展をはしごした。どちらも小ぶりながら繊細な感覚と技術が素晴しい展覧会。こういうレベルのものをサラッとやっているのが東京のおもしろい所だ。そうしたものを栄養にして仕事にも身が入る。

 70歳にもなると、長年の趣味になっている死亡記事の切り抜きの年令でも自分に近い人たちが続々と旅立っていくし、知人の訃報も伝わってくるが、僕は妙に元気で23日はスケジュールをうまくやりくりして、新橋演舞場で第95回東をどりも見に行けたし、その翌日はデヴィッド・バーン/レイ・モモを聴きなが東関道を飛ばし、DIC川村記念美術館まで『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』展を観に出かけた。

 これが期待をはるかに上回る素晴しく充実した内容で、コラージュから箱作品、実験映画まで食い入るように見つめ、時の経つのを忘れてしまった。本当にいい芸術作品は時空も何もかも超えている。帰りに寄ったミュージアム・ショップも充実していて、マーク・ロスコやコーネルの本と一緒にMOMAが作ったコンピレーションCD『ジャクソン・ポロック/JAZZ』を購入できたのはうれしかった。

 28日に三軒茶屋のシアタートラムで観たイキウメの『獣の柱』については次回で書く。かなりおもしろく、よく出来た大演劇作品だった。

『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』
《ローズ・ホバート》(映像作品) 1936年頃
京都精華大学
Courtesy The Museum of Modern Art, New York
(C)1995 The Museum of Modern Art

作品紹介

映画『バイオレンス・ボイジャー』公開記念 宇治茶監督展

日時:2019年4月26日~5月19日
会場:LAUGH & PEACE ART GALLERY OSAKA

『バイオレンス・ボイジャー』(2018年・日本)

2019年5月24日公開
配給:KATSU-do/よしもとクリエイティブ・エージェンシー
監督・脚本・撮影・編集:宇治茶
声優:悠木碧/田中直樹/藤田咲/高橋茂雄/小野大輔/田口トモロヲ

米田知子「アルべール・カミュとの対話」

会期:2019年4⽉13⽇~5⽉25⽇
会場:ShugoArts

『ジョゼフ・コーネル コラージュ&モンタージュ』

会期:2019年3月23日~6月16日
会場:DIC川村記念美術館

プロフィール

立川直樹(たちかわ・なおき)

1949年、東京都生まれ。プロデューサー、ディレクター。フランスの作家ボリス・ヴィアンに憧れた青年時代を経て、60年代後半からメディアの交流をテーマに音楽、映画、アート、ステージなど幅広いジャンルを手がける。近著に石坂敬一との共著『すべてはスリーコードから始まった』(サンクチュアリ出版刊)、『ザ・ライナーノーツ』(HMV record shop刊)。

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