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テレビから離れて 〜 放送作家・鈴木おさむの作品レビュー 〜

目の前の景色が必ず変わる 一人でも多くの人が観るべきドラマ『チェルノブイリ』

毎月

第14回

20/9/29(火)

『チェルノブイリ』

今、日本で一番おもしろい作品を撮る、あの監督にお仕事でお会いした時に、ある海外ドラマの話になった。それは『チェルノブイリ』。HBOが制作したドラマで、僕はコロナ渦で映画を沢山観ていた時に、Google Playのおススメに出てきた時に初めて知った。

そのビジュアルを見て、あのチェルノブイリの事故を描いたドラマなのだなと分かった。

そこから2カ月ほどたって、その監督に会って、その監督の口から出た、ドラマ『チェルノブイリ』。力強く言った。「めちゃくちゃおもしろい」と。この作品を「おもしろい」と言って良いかどうか悩む人は多いと思う。だけど、今、観終わった僕ははっきり言おう。「めちゃくちゃおもしろい!」と。この言葉を使うことに、嫌悪感を感じる人もいるだろう。だけど、言葉を選ぶよりも「めちゃくちゃおもしろい!」と人に伝えて一人でも多くの人が観るべき作品であると思うから。

このドラマは、71回エミー賞で10部門も受賞、今年のゴールデングローブ賞でも作品賞を受賞している。

ドラマは全部で5話。大体1話1時間。全部観ると5時間。物語の1話は、チェルノブイリ原子力発電所の4号炉が事故を起こす直前から始まる。

おそらく資料を集めまくり、取材に取材を重ねて脚本を作ったのだろう。まるで自分が目の前で事故を目撃しているかのような気持ちになるのだ。

『チェルノブイリ』

1話、2話を観てまず思ったこと。誰かの小さな嘘は、衣をつけて、上層部に上がってく。これって自分の周りでもよくあること。自分を守るためだけについた嘘が、結果、社長に上がってしまい、信じてしまったりする。会社だったらまだいいが、原発が爆発したのに、そんなことが起きていたのだ。地球で初めての大事件が起きているのに、自分の身を守ろうとする人がいたのだ。まず、これが怖い。

爆発後、作業にあたる職員、消防隊の人。大きな被ばくを受ける。作品全体、かなりの予算をかけて制作されている。映像技術も凄い。放射能とは目に見えないものである。怖いのは分かっているが、どう怖いのかがわからない。その怖さを描くのに、かなりの技術を使って表現している。

被ばくした作業員や消防隊員が、一週間たち、二週間たち、どんな風に変化し、亡くなっていたのかを強烈な映像で見せつけている。こんなことになるのか! と。噂では聞いたことあったが、ここで描かれていることは真実なのだろう。原発で大きく被爆した人たちの内臓は腐り、皮膚は腐り、削げ落ちていく……。苦しんで死んでいく。

『チェルノブイリ』

正直言って、目をそむけたくなるし、辛い。だが、その事故で亡くなっていた人たちにも家族がいる。その物語を見せていくから、余計に胸が苦しい。観ている間に、ずっとずっと海の中でもがいている気持になる。物語は、なぜあの事故は起きたのか? が解明されていく。

劇中に出てくるセリフ「ウソをつくたびに、真実へのツケがたまる。ツケは必ず支払わされる」。コロナの感染が広がっていく中で、伝えられる情報はどんどん変わっている。海外の人と話すと、日本で入ってくる情報と違ったりする。

このドラマを観て、対岸の火事だとは思えない。自分が住む国でも、近いことは起きているのかもしれない。このドラマ『チェルノブイリ』を観て、痛さを感じて、知るべきである。目の前の景色の色がきっと変わる。

『チェルノブイリ』

放送情報

『チェルノブイリ』(全5話)
Amazon Prime Videoチャンネル
「スターチャンネルEX -DRAMA & CLASSICS-」
※字幕版・吹替版 配信中
監督:ヨハン・レンク
脚本:クレイグ・メイジン
製作総指揮:キャロリン・ストラウス ほか
出演:ジャレッド・ハリス、ステラン・スカルスガルド、エミリー・ワトソン、ポール・リッター、コン・オニール、デヴィッド・デンシック、アダム・ナガイティス、ジェシー・バックリー


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プロフィール

鈴木おさむ(すずき・おさむ)

放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。漫画『秘密のチャイハロ』(講談社コミックスなかよし)が発売中。10月31日スタートのテレビ朝日系土曜ナイトドラマ『先生を消す方程式。』の脚本を担当。バブル期入社の50代の部長の悲哀を描く16コマ漫画『ティラノ部長』の原作を担当し、毎週金曜に自身のインスタグラムで公開中。

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