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嵐、「A-RA-SHI:Reborn」の革新的アプローチ 根底に感じるアイドルとしての確かな誇り

リアルサウンド

19/12/21(土) 6:00

 12月20日に、嵐が配信シングル「A-RA-SHI:Reborn」をリリースした。デビュー21年目への突入を期に開始した新プロジェクト“Reborn”の第一弾としてリリースされたこの楽曲は、20年前にリリースされたデビュー曲である「A・RA・SHI」を“Reborn”=リプロダクションしたもの。

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 今年、YouTubeチャンネル開設や全シングル楽曲ストリーミング配信開始、配信シングルのリリースなど新たな話題を数々と生み出し続けてきた嵐。さらに大晦日の『第70回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)では米津玄師作詞作曲によるNHK2020公式ソング「カイト」を初披露することも発表されている。ファンにとっては嬉しい悲鳴が止まらなかった1年の締めくくりにリリースされた同楽曲は、原曲「A・RA・SHI」と歌メロはほぼ同じでありながら全く違った趣を感じさせる楽曲へと生まれ変わっていた。

 ファンクに寄せた原曲のイントロとは異なり、「A-RA-SHI:Reborn」ではビルドアップやオートチューンなどを駆使。全体的にストイックな仕上がりで、洗練された印象を受ける。また、アウトロのピアノ、櫻井翔のラップパート(リリックは、櫻井翔が新しく書き下ろしている)のバックで流れるギターサウンド、楽曲全体に行き渡ったメリハリのある展開は、原曲の魅力をそのままにアップデートしているようにも感じる。

 原曲ではまだ少なかった各メンバーのソロ回しも増え、歌詞もほぼ英語詞に変更。これには世界を視野に入れ、より幅広いリスナー層へリーチしようと試みている近年の嵐らしさが表れているようだ。

 歌詞に関してもただ英訳しただけではない点がまたニクい。先述のように櫻井が新たにリリックを書き下ろしていることに加え、サビの印象的な〈for dream〉が〈My dream〉に変わっているのが象徴的だ。20年の時を経ることで自分たちよりも少し先の場所にあった「夢」を手に入れ、「僕達の夢」と胸を張れるようになったことを表しているようだ。ファンならだれもがグッときてしまうフレーズだろう。

 原曲の思いを引き継ぎながら、“現在の嵐”の顔を見事に引き出している「A-RA-SHI:Reborn」。ジャニーズグループとしては前代未聞のリプロダクション企画だが、これはただ単純に過去の楽曲をブラッシュアップ・再構築してリリースするという結成記念の“お祝い企画”ではないように思える。

 今年、嵐は様々な新しい試みに精力的に挑んできた。これまでにはなかったインターネットを中心とした発信が多かったが、そのすべてのベースには“音楽”がある。また、その活動のすべては、過去作・新作含めすべての楽曲をより幅広い層にリーチさせることを第一に据えていた。

 一見、ジャニーズアイドルとしては革新的なアプローチに思えるが、その根底にあるのはアイドルとしての確かな誇りだろう。

 アイドルがメインステージとする活動は決して音楽だけではない。演技の世界で高い評価を受けている二宮和也や松本潤、バラエティ番組や報道番組で注目を集めることが多い櫻井や相葉雅紀、そのタレント離れした芸術的センスを遺憾なく発揮している大野智と、嵐のメンバーだけを見ても音楽以外の点から高く評価されている。グループにとって記念碑的な活動や作品なら、音楽以外のアプローチでも充分可能だったはずだ。しかし、彼らは音楽を選んだ。

 ジャニーズは長年、オーディエンスと直接向き合うショー形式での表現を重視することを伝統としてきた。その基盤には常に音楽があり、歌やダンスでメッセージを伝え続けることにこだわりを持ち続けている。嵐が今年の活動の中で見せてきた姿勢は、同じジャニーズの後輩や仲間たちへ新たな表現の道を作りながらも、ジャニーズの伝統やアイドルの誇りを守り続ける、覚悟に満ちたものなのではないだろうか。

 嵐は、ジャニーズがこれまで貫いてきた伝統を大切に思うからこそ、既成概念を破壊しながらも新たな音楽の可能性を広げていく方法を選んだのだろう。デビュー当時からラップ・ヒップホップ文化をアイドル楽曲に取り入れるといったパイオニア的アプローチを貫き続けてきた、彼ららしいスタイルだ。

 今回のリリースは“Reborn”企画の第一弾。今後も過去楽曲を“Reborn”させたものが順次リリースされることが予想できる。次はどの楽曲が選ばれるのか、そしてどのような姿に生まれ変わるのか、さらなる期待が尽きない。嵐の“dream”はこれからも、私たちの耳を楽しませ続けてくれるに違いない。(五十嵐文章)

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