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毎田暖乃、『おちょやん』を2週間牽引した溢れんばかりの笑顔 千代が見つけた“帰る場所”

リアルサウンド

20/12/11(金) 12:00

 甲斐性なしの父と反りが合わない継母を大切な弟のために“捨て”、9歳でたった一人奉公に出た千代(毎田暖乃)。『おちょやん』(NHK総合)第2週では、奉公先である大阪・道頓堀の芝居茶屋「岡安」で千代の女中見習いが始まった。

 女将・シズ(篠原涼子)がとりあえず、千代を岡安で働かせると決めた期間は1カ月。千代は女中頭のかめ(楠見薫)の厳しい仕込みのおかげで立派な働きぶりを見せていたが、そんな矢先、幸せに暮らしていると思っていた家族が借金で夜逃げしたと知らされる。真実は
定かでないが、金遣いの荒い父・テルヲ(トータス松本)のことだ。千代がせっかく稼いだお金を酒や博打に注ぎ込んだのだろう。

 弟のために働いていた千代はそれから仕事に身が入らず、大きな失敗をやらかしシズからクビを言い渡されてしまった。けれど、千代が帰る場所はもうない。そうとは知らなかったシズやかめも、千代の置かれた状況を知り心配する。

 なぜ千代は本当のことを言わなかったのか。先代の女将・ハナ(宮田圭子)は「自分は不幸だと思われたくないんや」と強がりな千代の本音を理解している様子だ。いつも穏やかでニコニコしているハナだが、乞食のおじさんたちを使って千代を捜索する様子や、道頓堀のことは警察よりも先に耳に入るという台詞からも底知れない人物であることがわかる。だからこそ、肝の座っている千代をどこか放っておけないのかも知れない。

 そんなハナは雨の中途方に暮れる千代を見つけ、芝居に連れていく。そこでは天海(茂山宗彦)亡き後、千之助(星田英利)を中心に舞台を作り上げ、観客を笑いの渦に巻き込む天海天海一座の姿が。志半ばでこの世を去った父の思いと重なる台詞に、やる気がなかった息子の一平(中須翔真)も迫真の演技を見せた。

 千代は父である天海から気にかけてもらえる一平を羨ましいと言ったが、その父はもうこの世にはいない。一座と芝居茶屋。場所も状況も異なるが、家族を失った2人にとってそこがただ一つの“帰る場所”という点は一緒だ。

 千代はハナと一緒に岡安へ帰り、改めてシズに自分の過去を話す。「ここに置いたってください。もうここしかあらへんのです」と涙ながらに頼む千代。そこに千代を探していたという警察がやってくる。追い出したシズも千代を心配して、ちゃっかり捜索願を出していたのだ。

 この子に間違いがないかと尋ねる警察に、シズは「間違いなく、うちの“おちょやん”(お茶子)です」と答える。そうして千代は正式に岡安のお茶子として認められ、みんなに囲まれながら主人公の宗助(名倉潤)から漢字を教えてもらった。最初の漢字は「家」。千代がこれから帰る家は、賑やかで一癖も二癖もある人たちが暮らすこの岡安だ。

 今週で千代の少女時代は終わり。子供とは思えないほど、口が達者で歯に衣着せぬ物言いが印象的な千代を『スカーレット』以来朝ドラ2度目の出演となる毎田がコミカルに演じた。一方で千代は家庭環境に恵まれず、かなり波乱万丈な幼少期を過ごしている。けれどその設定が重たくなり過ぎないのは、子供らしい愛嬌を残す毎田の演技力の賜物だろう。いたずらっ子な笑顔はずっと見ていたくなるような可愛さだった。

 子供から大人に変わる場面も『おちょやん』ならでは。布団から目覚めると千代が大人に……と思いきや出てきたのは宗助、はたまた自転車に乗って千代が軽やか登場!と思いきや、岡安の一人娘・みつえ(東野絢香)と“朝ドラあるある”を悉く覆す。極めつけに川へ落ちたのは、大阪が誇る漫才コンビ「海原はるか・かなた」のはるか師匠だ。役名は“知らないおっさん”だが、今後も物語に登場してくれることを願おう。そしてついに、掃除のため店先に出た大人の千代(杉咲花)が普通に顔を出した。「今日もええ天気やなあ」。杉咲演じる千代の笑顔が天にも届いたのか、今日は広い範囲で日差しが降り注ぐようだ。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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