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ロック様の筋肉が原動力!? 『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』でも健在の“ピープルズ演技”

リアルサウンド

19/8/8(木) 10:00

 『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)は凄い映画だ。語彙が消滅する類の映画である。本作のストーリーはあってないようなもので、スゲェ強い悪の組織の超人ブリクストン(イドリス・エルバ)に、アメリカ最強の超凄腕捜査官ルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と、イギリス最強の男デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)がタッグで戦いを挑む……これ以上の説明は必要ないだろう。そして本作を支えているのが主役3人の肉弾俳優、とりわけロック様ことドウェイン・ジョンソンの存在であることも間違いない。

参考:アクション映画の可能性を限界まで追求!? 『ワイスピ』最新作4DX版で主演2人の躍動感を体験

 ドウェイン・ジョンソンは凄い男だ。これまた語彙がないが、本当に凄いとしか言いようがない。若い頃は鬱病に苦しむほどの大きな挫折を経験し、プロレスラーとしても最初は伸び悩んだ。しかし、オレ様炸裂な“ザ・ロック”というキャラを確立するや人気が急上昇。遂にはピープルズ・チャンピオン(みんなの大将)と呼ばれ、これ以上ないほどアメリカン・プロレス的な必殺技“ピープルズ・エルボー”と共に大スターにのし上がる。

 やがて『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』(2001年)の悪役スコーピオン・キングで銀幕デビューを飾るのだが、悪役なのに人気が出すぎたせいでスピンオフ作『スコーピオン・キング』(2002年)が作られ堂々の主演デビュー。女風呂に突っ込んでWOW!的なテンションの快作に仕上がり、本格的にアクション・スターとして活動を始める。その後は『ウィッチマウンテン/地図から消された山』(2009年)などのSFアドベンチャーや、『妖精ファイター』(2010年)といったコメディ、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』(2013年)でのクレイジーっぷりなど、順調に役の幅を広めていく。

 そんな彼の最大の長所は、自身のマッチョさの自覚だ。「どう見ても強そうなマッチョ野郎がこれをやっていたら面白い」という視点から出演する作品を選び、キャラクターを作っている。それでいて観客が望む「カッコいいドウェイン・ジョンソン」像も演じる姿勢も見事だ。常に観客を楽しませるために演じる。まさに“ピープルズ演技”である。

 本作でもそんな“ピープルズ演技”は健在だ(むしろ若干やり過ぎ感があるほど)。ドウェイン・ジョンソンでなければ「納得」できない肉弾アクションが連発する。たとえば当然のようにビルから落ちても無傷だ。このシーンに何の疑問も生じないのは奇跡である。この奇跡が成立したのは、往年の名作『コマンドー』(1985年)で結構な高度の飛行機から落下して特に説明なく無事だったシュワちゃん以来だろう。他にもヘリコプターを腕力で押さえ込むなど、彼以外では成立しないシーンが目白押しだ。また、『ワイルド・スピード SKY MISSION』(2015年)でもプロレスラー時代の必殺技“ロック・ボトム”をステイサムに食らわせていたが、今回は同じくレスラー時代の名物だった片眉を吊り上げる顔芸を披露してくれる。

 ただし、本作に短所がないワケではない。基本的にお話がアクション→楽屋オチ系の漫才→アクションの繰り返しなので、私はやや冗長に感じた。そして最大の問題は『ワイルド・スピード』とあまり関係がないことだ。『ワイスピ』はカーアクション映画であるが、同時に“ダチ”“家族”=“ファミリー”の絆を描く熱血ドラマでもある。本作はこうした部分がシリーズでも特に弱い。正直、『ワイスピ』ファンである私は不満にも思った。しかし、これはスピンオフである。そしてドウェイン・ジョンソンは次回の『ワイスピ』本伝には出演しないそうだ。今後はヴィン・ディーゼルの『ワイスピ』と、ドウェイン・ジョンソンの『ワイスピ』がシリーズ化していくのだろう(どんなフランチャイズだ)。流行りのユニバース化にも見えるが、私はこれをユニバース化ではなくパラレル化と呼びたい。

 話は変わるが、私は本作に一番近い作品は『魔法少女リリカルなのは』だと思っている。『なのは』は元々『とらいあんぐるハート3 リリカルおもちゃ箱』(2001年、奇しくも『ワイスピ』1作目と同じ年だ)についていたオマケ企画だった。それが色々あってアニメとなり、あれよあれよという間に戦闘シーンに気合がドンドン入っていき、今や魔法少女バトルアニメの金字塔となった。『とらいあんぐるハート3』から『なのは』という熱血バトルアニメを作り出したのは「魔法」だったが、『ワイスピ』から『スーパーコンボ』を作り出したのは筋肉、特に主演を務めるドウェイン・ジョンソンの筋肉だ。いわば『スーパーコンボ』は『肉弾野郎マッスルほぶす』である。

 『ワイスピ』とは別物と考え、『肉弾野郎マッスルほぶす』の第1弾と捉えれば荒削りな部分も納得できる。とりあえず今は続編を待ちたい。そして次は撮影期間をちゃんと確保してください。これ、何が恐ろしいかっていうと、100億円くらい突っ込んでいる映画なのに1年ちょいで撮ってるんですよ。ハリウッドってスゲェや。(加藤よしき)

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