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ビルボードチャートでの躍進、『I-LAND』人気、aespaらバーチャルとの接近……DJ泡沫×NICE73が2020年のK-POPを総括

リアルサウンド

20/12/30(水) 12:00

 2020年は『BTS「Dynamite」がアメリカビルボードシングルチャート“HOT100”1位を獲得し、世界的な人気の定着を感じさせたK-POPシーン。国内でもソニーミュージックとJYPエンターテインメントによる『Nizi Project』、そしてそこから誕生したNiziUが人気を博するなど、これまでにない層にも届き始めている。

 今回リアルサウンドでは、昨年に続き、当サイトでK-POPに関する記事を執筆するライターのDJ泡沫氏(写真右)と、K-POPイベントのMCや作詞・作曲家として活躍するNICE73氏(写真左)を迎え、2020年のシーンを総括する対談を行った。前半では、ビルボードチャートでのK-POPアーティストたちの存在感、K-POPシーンで活躍する海外メンバー、そしてコロナ禍において求められる“バーチャル”的存在などの話題をお届けする。(編集部)

【オリジナル動画】DJ泡沫×NICE73による2020年K-POP総括

【2020年のK-POPシーンを総括!】DJ泡沫×NICE73対談

“プデュ”後もサバイバルオーディション番組はまだまだ人気?

NICE73:去年も対談でお話ししましたが、あの時は世の中がこんなことになるとは思っていなかったですよね。

DJ泡沫:そうですね、世の中もだいぶ変わりました。K-POPシーンで言うと、新型コロナの影響でライブコンサートができなくなってしまった一方、楽曲はアメリカのビルボードチャートにランクインするのが定着してきている印象です。先日もBTSの後輩、TOMORROW X TOGETHER『minisode1 : Blue Hour』がビルボード200で25位になったように、数万枚売れるようになれば、ビルボード200にランクインするようになってきています。SuperMやBLACKPINKも2位でしたし、アルバムチャートであれば10位以内、時にはトップ3やトップ5に入っていますね。今年は外にあまり出られないから、家で音楽を聴くようになってストリーミングサービスの再生数が上がったというデータもありました(参照)。そういう意味で、今年はチャートに変化があったと言えますね。

TXT (투모로우바이투게더) ‘5시 53분의 하늘에서 발견한 너와 나’ Official MV

NICE73:オンラインライブで言うと、海外から観ている方も多いですよね。私は日本のオンラインライブも観ますけど、韓国のものに慣れすぎてしまうと、質感も含めてどうしても観づらいところがあります。

DJ泡沫:日本はまだオンラインコンテンツに慣れていない感じがありますよね。

NICE73:韓国だと英語、日本語、韓国語、中国語など字幕も選べますし。基本的に、メンバーの中に一人は英語を話せる子がいますよね。

DJ泡沫:そうですね。そんな中、頑なにYGエンターテインメントはオンラインライブをやらないですね。SMはもちろん、JYPエンターテインメントもやっているのに。どうせやるなら派手に、ちょっと違ったことをやりたいというのもあるのか、もしくは“カムバ”が詰まりすぎていて、それどころじゃないのかも……。今までは間隔を空けてのリリースだったのが、TREASUREは今年3回もカムバしています。最近は中小事務所でもV LIVEを使ったオンラインライブをやっていますし、YGもそのうちやるのかもしれないですけど。

NICE73:来年のお楽しみということで(笑)。家にいて、オンラインライブをたくさん見るようになったのもあるんですけど、今年は日本も含めて、オーディション番組的なものも非常に熱かったと思うんですよ。

DJ泡沫:そうですね。韓国では人気投票の不正操作の問題があったので、アイドル系のサバイバルは下火になってしまい、代わりにトロット(韓国演歌)のサバイバルが流行っています。CDアルバムが40万枚以上売れる歌手が現れてきたり。日本ではそういう問題があまりなかったので、去年は『PRODUCE 101 JAPAN』も成功しましたし、やっぱり今年は『Nizi Project』ですよね。K-POPを全然知らない層にもリーチしています。

NiziU 『Make you happy』 M/V

NICE73:『Nizi Project』がきっかけで、逆にJYP周りが知られるようになっていますよね。私はStray Kidsが好きなんですけど、彼らを全く知らない人が「THE FIRST TAKE」を見て、私に「Stray Kidsっていう男の子たちがいるんだけど、NiziUの子たちと同じ事務所らしくて、上手いんだよ」って。それでNiziUってすごいなって感動したんですよ。

Stray Kids – SLUMP -Japanese ver.- / THE FIRST TAKE

DJ泡沫:NiziUのメンバーがStray Kidsの「God’s Menu」「Back Door」のMVに出てますよね。

Stray Kids “神메뉴” M/V
Stray Kids “Back Door” M/V

NICE73:最初はセット売りというか、Stray Kids+NiziUなのかなと思いきや、NiziUを見るためにStray KidsのMVを見るような感じで、もうだいぶ変わってきているのかなと感じました。

DJ泡沫:日本ではNiziUの認知度がすごく上がっているので、その辺りが逆転しているのが面白いですよね。そこを利用しようとするというのもしたかな戦略です。ABEMAでもStray KidsのメンバーとJ.Y. Parkの緊急対談をやっていましたね。日本オリジナル曲の「ALL IN」を共同プロデュースしている、というので。J.Y. Parkに興味があって見る人もStray Kidsを自動的に見ることになる。これは完全に“ファミリー売り”ですね。

NICE73:そうですね。だから、元々のファンは、複雑な感情があるかもしれないですけど、でもやっぱり大衆的なことを考えると正解だと思います。あとは11月末に『I-LAND』をきっかけにデビューしたENHYPEN。

ENHYPEN (엔하이픈) ‘Given-Taken’ Official MV

DJ泡沫:『I-LAND』はオンラインでやっていたのと、ENHYPENがBTSの事務所Big Hit Entertainmentと、Mnetの親会社のCJ ENMが共同で作ったBELIFTからデビューするのが大きいですね。ENHYPENはBig Hit直系とは少し形が違うんですけど、BTSのファン達は、デビューする後輩グループに注目しようという雰囲気があります。また、海外のファンからの注目が熱い感じもしますね。

NICE73:『I-LAND』では地域ごとの人気も分かるので、私は“中華圏の王子”“ギリシャの王子”みたいに心の中で呼んでました(笑)。このビジュアルはこの圏に人気があるのか、と考えて見ているのが面白かったです。

LOOΠΔの躍進、aespaらバーチャルとの接近

DJ泡沫:チャートの話に戻すと、海外のK-POPファンに注目されていた、LOOΠΔ(今月の少女)。ファン同士が呼びかけて、定期的にLOOΠΔの曲がiTunesチャートの10位以内に入ってくるという現象が起こっていて、固定のファンダムがある程度あるんだなと。それもあって、10月に発売した『Midnight(12:00)』がビルボード200にチャートインしました。

[MV] 이달의 소녀 (LOONA) “Why Not?”

NICE73:初期のLOOΠΔって、若手プロデュースチームのMonoTreeがずっと手がけていて、そこからSM、EKKOの作家さんが入るようになって、だいぶカラーが変わっていった印象があります。日本のファンの中には「昔の方がよかった」という方もいらっしゃるみたいですが。

DJ泡沫:ただやっぱりそれで、あまり大衆的な人気がでなかったことを考えると、路線を変えざるを得ないという厳しい現実もあるのかなと思います。人気が出てきてから、また元の路線に戻すことはできますけど。

NICE73:ガールズグループで言うと、個人的にはSMからデビューした4人組のaespaが……8人って言った方がいいんですかね。

DJ泡沫:アバターメンバーの扱いがいまだに難しいですよね。グループの中にプチNCTがあるような感じというか(※メンバーを固定せず、コンセプトごとに選抜する)。SMは以前から、VRやARを使って、ホログラムコンサートをやっていましたよね。私もUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に見に行ったんですけど、映像なのに本当にそこにいるようなリアル感があったんですよ。以前から力を入れていたものをしばらく中断していましたが、ここにきて“アバター”という形にして、本体メンバーと組み合わせるという少し大きな実験をしているのかな、と。メンバーが可変的になるNCT制度+過去にやってきたことの融合というイメージですかね。

NICE73:楽曲に関して言うと、aespaのデビュー曲「Black Mamba」は、もちろんSMが出しているものなので、クオリティは高い。だけど、Red Velvetが「Happiness」でデビューした時の「うわ、なんだこれ!」というような感覚が正直なくて。アメリカや世界市場に向けて出発していかなくちゃいけないから、あまり突飛なことをやっても……という考えもあるのかなと思ってしまいました。逆にRed Velvetの系譜はLOOΠΔがやろうとしている気がしていて。

aespa 에스파 ‘Black Mamba’ MV
Red Velvet 레드벨벳 ‘행복 (Happiness)’ MV

DJ泡沫:LOOΠΔを最初に手がけていたチョン・ビョンギは、SMのボーイズグループなどを研究して、それを女子でできないかと考えたようで、EXOまでのことなどが反映されていたんじゃないかと思いますね(参照)。プロモーションの仕方やコンセプト、見せ方もボーイズグループっぽいというのがあると思います。aespaでいうと、韓国のオンラインゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』のキャラクターたちに実際のアーティストが歌をかぶせて、グループを作るという企画から、K/DAが生まれて。かなり反響が大きかったので、グループとしてアカウントを持って、中国の雑誌の表紙になったり、アイドルとして活動し始めているんですよね。あれってほとんどアバターで、声は(G)I-DLEのミヨンやソヨンが担当しているので、その影響はあるんじゃないでしょうか。

K/DA – MORE feat. Madison Beer, (G)I-DLE, Lexie Liu, Jaira Burns, Seraphine (オフィシャルミュージックビデオ)

NICE73:だからK/DAと重なって見えてしまうところもありますよね。とはいえSMですし、ここまでテクノロジーに投資していますから、どうなっていくのか期待です。

DJ泡沫:SMのような事務所は、他の事務所の良いところをうまい具合に取り入れてどれだけ売れるかというよりは、どれだけ新しいことをやっていくかが大事になっているというか。大手事務所は、すぐには結果が出ないこともあるかもしれないですけど、毎年何かしら新しいことちょっとずつやっていかないといけないですよね。特にSMはここ最近、NCTもそうですけど、新たなチャレンジを果敢にやっているように思います。

NICE73:今年はブームに向けて火をつけている作業が結構見られました。

DJ泡沫:来年以降、他の事務所も似たようなことをやり始めるかもしれないですね。実際、NCSOFTという『リネージュ』などを手がけている会社が、「UNIVERSE」というファンダム向けのプラットフォームを配信していて。IZ*ONEやMONSTA X、THE BOYZなどが参加しているのですが、メンバーたちがアバターになっていて、着せ替えができるんですよ。それでミュージックビデオを編集できるようなコンテンツもあって。本当にゲーム感覚ですよね。あとはメンバーの声を録音していて、AIを使って喋らせる音声コンテンツもあるようで。K-POPアイドルという3次元のものが、2.5次元化している。日本だと2次元を2.5次元化、3次元化する流れがありますが、その逆という感じです。3次元のものを2.5次元化するのは、ファンの良心に委ねられているところも大きいのかなと思いますが。

NICE73:すごい世の中になっていきますね。生身の人間がやることにプラスされるものがあるわけじゃないですか。どうなるんだろう!

2021年はバーチャルコンテンツに尽力?

DJ泡沫:今年はライブという生身の人間同士が接触する機会が失われてしまったので。結局バーチャルなつながりやオンラインコンサートしか手段がない。そういう時に2次元コンテンツは強いですよね。元々接触がないものですから。そういうことを考えると、生身の接触がないけれど、いかに生身でつながっているように感じさせるかという、バーチャルなコンテンツに力を入れざるを得ないのかもしれません。

NICE73:その環境に慣れていれば、もうそういうものだとなっていくから、10年ぐらいで変わっていきそうですね。

DJ泡沫:日本もそうですが、アジア圏から韓国って1時間ぐらいで来れる距離ですけど、南米や欧米のファンは、10何時間飛行機に乗って来ないと生身のアイドルを見られない。それだったらほとんどネット上でしか見ていないから、バーチャルと同じでようなものなのかもしれません。

NICE73:そのバーチャルの質をどれだけ上げていくかがテーマになりそうですよね。そこで人気の差が出てきそうな気がする。

DJ泡沫:『リーグ・オブ・レジェンド』にしてもそうですし、元々韓国はオンラインゲームが盛んなので、アバターを作ったり、それを3次元で動かす技術はあると思うので、そういうのが得意な会社と共同でやることも増えるかもしれないですよね。Big HItも上場した時に芸能事務所ではなく、オールマイティなウェブコンテンツの会社を目指していると言っていましたし(参照)。包括的にバーチャルでコミュニケーションする手段、新しいものを作るというのもそこに入ってくるんだと思います。

NICE73:なるほど。もはやアイドル論じゃなくなってますね(笑)。

DJ泡沫:(笑)。でも、ビルボードチャートに入っているK-POPアイドルたちは、1年のほとんどは近くにはいない存在なんですよね。テレビで見られるわけでもないし、ローカルのテレビで、その国の言語で喋っているのを見られるわけでもないので、画面上で見ている存在で。それがここまで人気が出ることと、バーチャルに進もうとしているのは重なる部分があるのかもしれません。

K-POP界で増える日本人メンバーたち

NICE73:私が好きなStray Kidsだと、バンチャンが英語を喋れるんですが、韓国語で喋った後に英語で喋って、英語で喋りだすと、韓国語でちゃんと通訳するんですよ。一人でずっと喋っているし、ファンの話をすごく拾ってくれるんです。だから、そういうのってすごく大事だなと。もちろんコンテンツありきだと思うので、コンテンツの充実だったり、中の人がいかに言語でコミュニケーションが取れるかも人気のポイントなのかも。

DJ泡沫:そうですね。BTSを見て分かるように、最低でも一人英語を話せるメンバーがいればなんとかなる。そう考えると、BLACKPINKとかはほとんどのメンバーが話せますね。そういう面でも有利かもしれないですね。

NICE73:各グループ、海外メンバーが増えてますよね。あと最近心配しているのが、NCTのショウタロウはじめ、日本の良い人材がどんどん海外に行っちゃっているんじゃないかなって。

DJ泡沫:それがそうとも言えなくて。例えば、クラシックバレエの『ローザンヌ国際バレエコンクール』は有名で登竜門ではあるんですが、コンクールに出る子たちは、才能が埋もれている子たちなんですよ。有能さを見抜かれた子たちはすでに、もっと若いうちに大手の事務所が目をつけて所属していることが多いので、逆に言えば、そういうところに入れなかった子たちの選択肢として、海外行きがある。だから優秀な人材が海外に行くというよりは、国内で生かし切れていない人たちと言えるんです。

NICE73:なるほど。私はたまに学校で歌を教えたりもしているんですけど、ほとんどの子が「海外でやりたいです」って。日本も素晴らしい音楽がたくさんあると思うし、音楽を聴く人、好きだって言って買う人もたくさんいると思う。でも、この環境が生かし切れていないと思うと残念というか。

DJ泡沫:それぞれ得意ジャンルというか、韓国ではイマイチだけど、日本ではすごく人気のあるコンテンツもありますから。ダンスやポップスにしても、ウケる曲調、ダンスの種類も変わってくるので、その子の得意なところが活かせるキャパがどれぐらいあるのかということで、このキャパに入れるか入れないか、という話なんですよ。NCTのショウタロウもあれだけ踊れてどこの事務所にも入っていなかったということは、テクニックはあるんだけど、国内では活かせる場が今のところ埋まってしまっていたんです、きっと。だから海外のメンバーもどんどん求めているようなK-POPの世界に行くのは正解かもしれないですね。

<後半へ続く>

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