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池松壮亮がラブシーンに起用されまくる理由 そのドライで甘美な魅力を読む

リアルサウンド

16/2/21(日) 14:00

 今、日本でもっとも濡れ場を演じているイメージが強い俳優というと、真っ先に思いつくのが池松壮亮ではないだろうか。ネットで”濡れ場が多い俳優”で検索すると池松壮亮の名前が多数ヒットするほど、その分野での認知度は非情に高い。かつて濡れ場が代名詞的な俳優と言えば、津川雅彦や奥田瑛二など、見るからに色気を纏った俳優たちが挙げられるが、池松にはそういった見るからにアダルトな雰囲気の俳優とは少し違う。ではなぜ現在の監督たちは池松をラブシーンに起用するのか、検証してみたいと思う。

 若手の中でも演技派と呼ばれる池松壮亮は1990年生まれの25歳。10歳の時にミュージカル『ライオンキング』に出演後、2003年の映画『ラストサムライ』で映画デビュー。まるで子犬のような純朴な容姿で誠実な少年を多く演じてきたが、2014年に転機を迎える。この年には8本もの出演映画が公開され、三浦大輔監督『愛の渦』、安藤尋監督『海を感じる時』、そして吉田大八監督『紙の月』では、有名女優たちとラブシーンを演じた。

 『愛の渦』は、マンションの一室での乱交パーティーという人間の欲望をひたすら描く内容で、主役である池松は、親の仕送りまで使ってパーティーに参加し、門脇麦演じる女子大生に真の愛を見いだしていくニート役。『海を感じる時』は、ヒロインの市川由衣演じる後輩からの愛を拒絶しつつも、肉体関係だけは保ち続けるという非情な男を演じている。そして『紙の月』は、宮沢りえ演じる銀行で働く主婦が池松演じる大学生と不倫関係に陥り、巨額横領に手を染め人生を狂わせるという話だ。前の2作は、感情と行動が一致せず、気づいた頃には手遅れになってしまう恋愛の不可避性を描いているが、『紙の月』に関しては、ただいたずらに相手を利用するだけの存在を演じている。すべての作品に共通することは、池松が演じるのは社会に適応していないダメ男で、だからこそ女性が惹かれて行くという構図だ。つまり池松は、女性にとってなんだか ”ほっとけない” 存在として描かれているのである。そして、どこか愛情を欠いた池松のラブシーンは、物語にドライな質感をもたらし、女性が抱く葛藤や虚しさ、満たされない感情をより鮮烈に描くのだ。

 同世代で双璧をなす高良健吾もまた、吉高由里子の『蛇にピアス』や鈴木杏の『軽蔑』などでダメ男としてラブシーンを演じているが、高良の場合は狂気にも似た激しい感情を表に出し、それが女性を虜にしている。このエロスは、豊川悦司や成宮寛貴などにも通じるものだろう。対して、池松のやさぐれたエロスは一時的には女性を惹きつけるものの、最終的には見切りを付けられる場合が多い。たとえ濃密に肌を重ねようとも、結局はすれ違うだけの関係であり、だからこそ池松の濡れ場は刹那的で甘美なのだ。

 2月からdTVでは、寺島しのぶ演じる専業主婦との15歳差の不倫を描く『裏切りの街』が配信されているが、これまで数多くの濡れ場を演じてきた寺島しのぶは、池松のラブシーンについて、「職人のような人でした。2人で目を合わせながらその場で感じるお芝居をするのは快感でした」と絶賛している。また、吉田大八監督は『紙の月』で池松を起用した理由について「りえさんに差し出すなら、池松しかいない」と答えるなど、強い信頼を得ていることが伺える。

 昨年は『MOZU』の狂気に満ちた殺し屋役として、女装からアクションまでこなし、一般的な知名度も高まった池松。彼のラブシーンは今後、日本の映画やドラマに新たな潮流を生み出すに違いない。

(文=本 手)

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