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クリス・ブラウン、ダニエル・シーザー、シェイ・リア……高橋芳朗が選ぶR&B注目アルバム4選

リアルサウンド

19/7/14(日) 16:00

 今月もR&Bの注目タイトルを4作品。

 まずは前作『Heartbreak on a Full Moon』から約1年半ぶりになるクリス・ブラウンの通算9作目『Indigo』を。計45曲/2時間39分にも達した『Heartbreak on a Full Moon』での大作志向は今回も継続。若干ボリュームダウンしたとはいえ、トータルで32曲/2時間4分という正面から向き合うにはそれなりの覚悟が要求される代物だ。そんなわけで聴く前から構えてしまう方も多いかもしれないが、これがこのトラック数にして退屈な曲が皆無という驚異的な充実ぶり。ドレイクから、リル・ジョン、H.E.R.、ジャスティン・ビーバーまで、前作を超える16名に及ぶゲスト陣の多彩さもあって曲を経るごとにぐいぐい惹きつけられていく。DMX「How’s It Goin’ Down」(「All I Want Is」)、Juvenile「Back That Azz Up」(「Need a Stack」)、Clipse「Grindin’」(「Sorry Enough」)、シャニース「I Love Your Smile」(「Undecided」)、Aaliyah「Back & Forth」(「Throw It Back」)など、90~00年代のヒップホップ/R&B名曲をサンプリングした飛び道具的楽曲が長尺のアルバムのアクセントとして絶妙に機能。さらには「Come Together」でのOne Way「Don’t Stop (Ever Loving Me)」、「Temporary Lover」でのアリシア・マイヤーズ「I Want to Thank You」、「Troubled Waters」でのウィルソン・ピケット「Get Me Back on Time, Engine Number 9 (Pt. 1 & Pt. 2)」といった大ネタ使いのほか、「Fine China」(2013年)に続くマイケル・ジャクソンオマージュ「Back To Love」も上乗せしてくるという出し惜しみのなさだが、これだけサービスしておきながらも乱雑にならない品の良さに「King of R&B」(「Emerald/Burgundy」のJuicy Jのヴァースより)の矜持を見る思い。まちがいなく、キャリア屈指の傑作。

Chris Brown – Undecided (Official Video)
Chris Brown – Back To Love (Official Video)

 客演したコモン「HER Love」の興奮が冷めやらぬなか、『FUJI ROCK FESTIVAL』での来日を目前に控えたダニエル・シーザーがニューアルバム『Case Study 01』をサプライズリリース。ゲストにファレル・ウィリアムス、ジョン・メイヤー、ブランディ、ジェイコブ・コーリアーを迎えるなど、昨今の人気ぶりを受けてぐっとメジャー感が出てきたが、基本的には前作『Freudian』の良さを継承する内容。とりわけ『Freudian』の人気曲、「Get You」「Best Part」「We Find Love」あたりの流れを汲んだ前半の5曲が素晴らしい。ハイライトはブランディとのいぶし銀のデュエット「LOVE AGAIN」、いやがうえにもD’Angelo「Untitled (How Does it Feel)」を想起させる「OPEN UP」、そしてTommy James and the Shondells「Candy Maker」を引用して極上のメロウネスを紡ぎ出す「CYANIDE」等。オルタナティブ色の強い後半5曲では、聴き手を深淵に引きずり込む中盤以降の展開がスリリングな「TOO DEEP TO TURN BACK」がいい。

CYANIDE
LOVE AGAIN

 ケイトラナダのクリエイティブパートナーとして彼のファンにはすっかりおなじみのシェイ・リアが7曲入りのEP『Dangerous』を発表。そのケイトラナダがプロデュースを務める「Blue」以下、「Dangerous」や「Voodoo」といった既発のシングル曲を収めた彼女にとって初めてのまとまった作品だが、ハウスフィールな曲、あるいはメロディアスな90年代R&B調の曲でひときわ輝く彼女の持ち味を的確に捉えた良作だ。アンダーソン・パーク「Am I Wrong」やマック・ミラー「Dang!」などを手掛けてきたDavid Pimentel (aka Pomo)の制作によるメランコリックな美麗ミディアム「Good Together」、オープンハイハットの連打が心地よいケイトラナダ製のクールファンク「Want You」など、全曲がハイクオリティー。UKソウル的な美意識に加え、かつてのジャネイを彷彿とさせる凛々しさがある。

Voodoo
Good Together

 最後はジンバブエをルーツに持つロンドン出身の19歳、コートニー・バーネットやジェイミー・アイザックを擁するMarathon Artistsと契約を交わしたレイチェル・チノリリのEP『Mama’s Boy』。昨年のデビュー以降順調にシングルを重ねてきたが、この2nd EPのタイトルトラック「Mama’s Boy」は現時点でのベストといえる仕上がり。ニーナ・シモンやエリカ・バドゥの影響を露わにした歌い手としての実力はもとより、好調Marathon Artistsの所属であること、プロデューサーとしてロイル・カーナー『Yesterday’s Gone』に携わったジェームス・ドリングが絡んでいることなども踏まえると、活況を呈するロンドンのソウルシーンの新しいスターとして近い将来頭角を現してくる可能性は大いにある。全編アコースティックギターの弾き語りで構成された2016年の宅録EP『Bedroom Tales』からのこの成長ぶり、年齢を考えても本領発揮はこれからだろう。

Rachel Chinouriri – Mama’s Boy (Official Audio)
Rachel Chinouriri – Riptide

■高橋芳朗
1969年生まれ。東京都港区出身。ヒップホップ誌『blast』の編集を経て、2002年からフリーの音楽ジャーナリストに。Eminem、JAY-Z、カニエ・ウェスト、Beastie Boysらのオフィシャル取材の傍ら、マイケル・ジャクソンや星野源などライナーノーツも多数執筆。共著に『ブラスト公論 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない』や 『R&B馬鹿リリック大行進~本当はウットリできない海外R&B歌詞の世界~』など。2011年からは活動の場をラジオに広げ、『高橋芳朗 HAPPY SAD』『高橋芳朗 星影JUKEBOX』『ザ・トップ5』(すべてTBSラジオ)などでパーソナリティーを担当。現在はTBSラジオの昼ワイド『ジェーン・スー 生活は踊る』の選曲も手掛けている。

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