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巡礼の約束

20/2/6(木)

前作の『草原の河』が日本で初めて商業公開されたチベット人監督の最新作です。美しいけれども厳しさもひとしおのチベットを舞台に、聖地ラサへの巡礼の旅に出た病身の妻と、彼女を追う夫と子供。妻には亡くなった前夫との約束が、夫には嫉妬が、さらに前夫の子供には母親に捨てられたという悲しみがあります。そんな人間の複雑な心の内側をソンタルジャ監督は具体的な映像で見せていきます。 やがて妻は亡くなり旅を続けられなくなってしまうのですが、知り合いもいない旅先で何としても弔おうとする夫の健気な思いと、死んでも心はつながっていると考える夫と子供の姿には感銘するばかりです。亡くなった人のことを死後も思うことは考えてみれば当たり前のように見えますが、舞台がチベットだと、その気持が父子の2人からより深く伝わってきます。 前半は妻の巡礼、後半は彼女の思いが乗り移ったかのように夫と義理の息子が衝突しながらも巡礼を続けていくという見せ方も上手です。 チベットというと五体投地しながら巡礼を続け信仰心があついというイメージが強いですが、劇中でも紹介されるように同行の若い女性たちがボーイフレンドを見つけるといつの間にか姿を消したり、車社会が進展している様子も描かれるなど現代事情も織り込まれています。その対比がかえって巡礼の美しさ、思いの深さ、チベット文化の伝統の厚みを際立たせています。 夫役を演じたヨンジョンジャはチベット文化の継承活動を続ける歌手・芸術家で本作のプロデュースも担当。旅の途中で困っている妻や夫を助けた男を、ペマ・ツェテン監督の『轢き殺された羊』『気球』にも出演したジンバが好演しています。

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